7月3日に「ヤマト3度目のイノベーション戦略(関連記事:ヤマトHDが2000億円を投じ事業構造改革)」を発表したヤマトホールディングス。7月4日、日経BP社が都内で開催中のイベント「IT Japan 2013」(会期は7月5日まで)に登壇した瀬戸薫会長は、第2のイノベーションである宅急便で圧倒的な競争力を培ってきた過程を解説した(写真)。

写真●ヤマトホールディングスの瀬戸薫会長(撮影:井上裕康)
写真●ヤマトホールディングスの瀬戸薫会長(撮影:井上裕康)
[画像のクリックで拡大表示]

 ヤマト運輸が宅急便事業に参入したのは1976年。それまではB2B(企業間)物流を主に手掛けてきたが、競争の激化により、C2C(個人間)の小口物流に参入する。瀬戸会長は「B2Bの取引先に『もう仕事は受けられない』と宣言し、背水の陣を敷いた」と当時の模様を生々しく語った。

 B2BとC2Cでは社員の働き方も営業所の役割も、配送車などの設備も全て変わる。ウォークスルー仕様でセールスドライバーが車内を移動しやすく、乗降時の安全性を高めるため引き戸を採用した独自の配送車を、トヨタ自動車と共同で開発したという。

 スキー宅急便やクール宅急便などの新商品を次々と打ち出し、急速に市場を拡大したが、「これらは主として、荷物を出すお客様の利便性を重視したもの。ある時点から荷物を受け取るお客様の視点でのサービスを拡充したことでお客様の支持を得た」と瀬戸会長。時間帯指定配送やドライバーの携帯電話に直接顧客が連絡できるドライバーダイレクト、さらにウェブで荷物の到着時間や場所を変更できるクロネコメンバーズなどのサービスを開発することで、不在による荷物の持ち戻りを減らし、顧客の利便性向上とドライバーの生産性アップを追求している。

 ドライバーの情報武装にも投資を続けた。現在の第7次NEKOシステムでは、セールスドライバーが携帯するPPOS(ポータブルPOS)の決済機能を強化し、あらゆる電子マネーやクレジットカードに対応する。

“ぴちぴちギャル作戦”で、敵地でシェア逆転

 瀬戸会長は「ヤマトは少数精鋭主義。少数しかいなければ必ず精鋭になるとして、小さなチーム単位で仕事をすることを貫いてきた」と話す。

 瀬戸会長がその具現者だ。大阪主管支店長を務めていた際、巨大団地で荷物の持ち戻りが多いことに悩んだ。駅前に立って人の流れを観察し、朝9時にはまだ在宅している顧客が多いと判断。その時刻までに配送を終えるという作戦を打ち出す。