安倍晋三首相が成長戦略の柱と位置づける「攻めの農業」。2012年に4500億円程度だった農産物や食品の輸出額を、2020年までに1兆円へと倍増させるのが目標だ。世界で戦うためには、ITを活用して生産性などを高める必要がある。多くのIT企業がここに商機があるとみて、相次いで農業関連クラウドサービスを開始している()。

表●国内の主な農業関連クラウドサービス
表●国内の主な農業関連クラウドサービス
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 日本マイクロソフトなどIT企業3社は2013年5月に、明治大学と共同で「ZeRo.agri」システムの提供を開始した。

 2012年から明治大学の農場で実証実験を行い、データを蓄積してきた。トマト栽培用ビニールハウスに、土中の水分量や日射量を測るセンサーに加え、カメラなどを設置。それらから得た情報を基に、最適な水や肥料の量を算出する。自動で水やりを行うなど農作業を省力化できるうえに、収穫量を2~3割増やせるという。

 システムはWindows Azure上で稼働する。農家はタブレットを操作して、生育状況を確認したり、肥料の供給量を変更したりできる。ZeRo.agriのアプリケーション開発などを担当するルートレック・ネットワークスの佐々木伸一社長は「勘と経験に頼った農業から脱却できる。中規模の農家に売り込みたい」と意気込む。初期導入費用は120万円で、運用費用は月額1万円。中規模のハウス農家なら1~2年で回収できるとしている。

 日立製作所は5月、植物工場の開発を手がけるグランパに出資した。施設管理や収穫物の販売管理など、植物工場の運営を支援するクラウドサービスを開発し、10月以降にグランパを通じて生産者に提供する。日立の狙いは、植物工場を一種の「社会インフラシステム」に仕立てること。ITも含めてパッケージ化した運営ノウハウを海外へ輸出することも目指す。

 このほか、日立ソリューションズは3月に、農薬使用状況を管理できるクラウドサービスを開始した。富士通はクラウドサービスの改善に必要な栽培データを蓄積するため、6月中旬に自社運営する農場を開設した。今後も参入が相次ぎそうだ。