ソーラー道路の開発進む、仏は5年で1000kmに

「道路で発電」の理想と現実

2016.03.15
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ソーラー道路:欧米の複数の企業が、道路沿いや道路上にソーラーパネルを敷設する実験を行っている。フランスのある会社は、コスト削減のため埋め込み式ではなく道路に直接敷けるソーラーパネルの開発に取り組んでいる。(音声は英語です)

 ソーラーパネルは今や、あらゆる場所で見られるようになった。いっそのこと道路にも敷いてしまったらどうだろう?

 実は今、世界各国でソーラー道路への関心が高まっている。走っている間に電気自動車を充電できるようにするというプロジェクトまであるのだ。(参考記事:「世界最大の水上メガソーラー、日本で建設」

 2014年、オランダで世界初のソーラー道路「ソラロード(SolaRoad)」が自転車専用道路として建設された。今年1月には、フランスがさらに大胆な計画を発表した。今後5年間で1000kmの道路にソーラーパネル舗装材を敷設し、500万人に電力を供給するというのだ。

 米国では、アイダホ州のSolar Roadways社が、自社のソーラー道路技術を検証するため政府から3期にわたって資金提供を受けているほか、ベンチャーキャピタルからも200万ドルを調達している。

 Solar Roadways社の共同設立者であるジュリー・ブルソー氏と技術者のスコット・ブルソー氏夫妻によると、米国だけでなく世界各国が、彼らのソーラーパネルに興味を示しているという。今は公道でなく、駐車場や歩道などでテストをしている段階だ。同社の強化ガラスパネルの静止摩擦力はアスファルト並みで、トレーラーの重量に耐え、標識用のLEDや氷雪を解かすためのヒーターを組み込むことができると、ジュリー氏は言う。

既存の道路上に設置できるパネルも

 ソーラーパネルは本当に未来の道路の舗装材になれるのだろうか? ソーラー道路の可能性を支持する人々がいる一方で、コストや効率、耐久性を疑問視する人々もいる。(参考記事:「太陽光発電は本当に環境に優しいか?」

 フランスの道路建設会社Colas社の技術担当取締役で、ソーラーパネル舗装材「ワットウェイ(Wattway)」の技術を開発したジャン=リュック・ゴーティエ氏は、「当社のソーラーパネルは、既存の舗装道路の上に設置するだけです」と説明する。同社は、実際の道路にパネルを設置する前に、今年の春にフランス国内でテストを行う。

 ブルソー夫妻は自社のウェブサイトで、「どの国でも、広大な面積の土地を道路として利用しています。この面積を利用して太陽光発電ができれば、気候変動の阻止に大きく貢献できるでしょう」と述べている。彼らの見積もりによると、もし米国の車道と歩道にソーラーパネルを敷き詰めるとすると、米国内で使用する電力の3倍以上を発電できるという。

 彼らは、自社のパネルで電気自動車を充電することもできると考えている。まずはソーラー駐車場から始めるが、十分な距離のソーラー高速道路と必要な装置(電磁誘導を利用して道路から受電する装置)を備えた車があれば、走行中の車も充電できるようになるかもしれない。(参考記事:「世界一周ソーラー機不時着、36時間後の決断」

ソーラーパネルを埋め込んだ舗装道路の試作品の前に立つブルソー夫妻。(PHOTOGRAPH BY SOLAR ROADWAYS)
ソーラーパネルを埋め込んだ舗装道路の試作品の前に立つブルソー夫妻。(PHOTOGRAPH BY SOLAR ROADWAYS)
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コストや粉塵など課題はあり

 再生可能エネルギーのみで米国内の電力需要をまかなう計画をまとめたスタンフォード大学工学部のマーク・ジェイコブソン教授は、「道路を太陽光発電所にするという発想は、理論的にはすばらしいと思います。ただ、問題はコストです」と言う。(参考記事:「再生可能エネルギーだけの未来は来るか」

 ジェイコブソン教授は「パネルの一部は、タイヤの摩耗やディーゼル排気から発生する道路粉塵でたちまち覆われてしまうでしょう。それに、パネルの上をひっきりなしに車が通れば、光がさえぎられて発電量は小さくなります」と指摘する。さらに、ソーラー道路は他のソーラーパネルに比べて摩耗が激しく、頻繁に補修しなければならないだろうとも予想している。

 通常の太陽光発電所とは違い、ソーラー道路には土地を取得する費用がかからないという利点がある。しかし、パネルを回転させて太陽の動きを追跡し、発電効率を最大にすることはできない。ジェイコブソン教授は、現時点ではソーラー道路の普及はコスト的に難しいと考えているが、将来的にはこの問題をクリアできるだろうと期待を寄せる。

 米国の調査会社IDTechEx社が2016年2月に発表した報告書には、「道路に太陽光電池を敷設するというアイデアは、突拍子もないものに聞こえるかもしれない。しかし、じっくり検討してみると、ほとんどの問題は容易に克服でき、発電効率が低いとしても、限られた地域への給電には有効である」と書かれている。

 同社のピーター・ハロップ会長は、ソーラー道路はコストは大きいが、新たに道路を敷設するような場所でならうまくいくのではないかと言う。「ソーラー道路を普及させるには、中国など、新しい技術の採用に前向きで、一足飛びに開発を進めたい国々で採用されることが重要です」

70mの道路で3世帯分の電力

 現在、オランダのソーラー道路は、まずまずの人気を博している。アムステルダム郊外の2つの地区を結ぶ長さ70mのソーラー道路を、最初の年には30万台の自転車とモペッド(原動機付き自転車)が走った。当局によると、去年は3世帯の電力をまかなえる量の発電ができたといい、これは予想を上回る発電量だったという。この道路は、シリコン結晶太陽電池をコンクリートに埋め込み、透明な強化ガラスで覆ったものからできている。

 米国では、Solar Roadways社が米国運輸省から6年間に150万ドル以上の資金を得て、6角形のソーラーパネルの開発とテストを進めている。2015年12月に米国運輸省の公式ブログに投稿された記事によると、Solar Roadways社のソーラーパネルには、製造プロセスに課題がある。同社は現在、太陽電池セルを手作業で製作しているため、製造コストが非常に高いのだ。この点についてジュリー・ブルソー氏は、最新の試作品の製造コストは低くなり、発電効率は25%アップしていて、設置も容易になっていると説明する。

 ブログを執筆した米国運輸省のマイケル・トレンタコステ氏とロバート・C・ジョンズ氏は、このプロジェクトについて「多くの肯定的なフィードバック」を得ていると言う。Solar Roadways社のプロモーション・ビデオはYouTubeで2100万回も視聴されている。米国運輸省はブログで、同社のソーラーパネルは雪を解かし、道路の凍結を防げるため、たとえコストが大きくても、駐車場や歩道、自転車専用道路などの狭い範囲であれば有効活用できると予想している。

文=Wendy Koch/訳=三枝小夜子

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