開発したフィルム型Liイオン単電池(左)と、この電池を使った蓄電池システム(右)
開発したフィルム型Liイオン単電池(左)と、この電池を使った蓄電池システム(右)
蓄電池システムの容量は12kWh。寸法は750mm×550mm×500mm以下(出所:積水化学工業)
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 積水化学工業は3月9日、フィルム型の大容量Liイオン蓄電池の開発を完了し、事業化を進めていくと発表した。定置・住宅用を第一のターゲットに定めている。

 太陽光発電などの再生可能エネルギーをより多く導入し、より有効に活用するには、蓄電池システムや電気自動車(EV)なとど併用することが鍵となる。同社によると、今後の電力自由化の進展や、再エネの固定価格買取期間が終了する住宅が出てくる2019年以降に向けて、大容量タイプの需要が伸びると予測している。

 同社は、塗工プロセスによるフィルム型蓄電池の開発に取り組み、今回、安全性が高く、かつ、長寿命・大容量を同時に実現した蓄電池を開発した。

 2014年夏以降、サンプルの提供や評価を進めた結果、大判で、薄型、大容量という特徴を生かせる分野に特化することを決め、定置・住宅向け、車載向けから事業化を目指していく。

 従来発表していた「高性能ゲルタイプ電解質」、「大容量ケイ素系負極材料」、「ゲルタイプ電解質を使った塗工プロセス」に加え、新たに「電極塗工型絶縁材料と、そのプロセス技術」を確立して実現した。

 新たに確立した技術は、電池の大容量化に必須となる薄膜化と優れた耐熱性、耐衝撃性を同時に実現するものである。「高性能ゲルタイプ電解質」と組み合わせることで、安全性が高く、かつ、長寿命・大容量という利点を併せ持つ蓄電池を提供できるとしている。

 この蓄電池を使った定置・住宅用蓄電池システムの省スペース化と大容量化も可能となった。

 量産用の製造設備も導入済みで、積水化学と、同社が主要株主であるエナックス(東京都文京区)が連携して生産体制を構築している。積水化学は2015年7月に、エナックスの株式の一部を取得している。

 量産用設備で製造した単電池と電池システムは、それぞれJET(電気安全環境研究所)の部品登録認証を取得している。

 定置・住宅向けでは、住宅メーカーによる採用を目指してシステムメーカーと連携し、2016年度に出荷を目指す。車載向けは、2020年以降の参入を目指す。