ユーザー数が限定され、リソースが大きく変動しないのが基幹系だ。一見、柔軟性や従量課金などのクラウドのメリットと縁遠く感じる。基幹系システムをクラウド化するメリットはあるのか。本当に移行しても大丈夫なのか。クラウド化の素朴な疑問を検証する。本記事ではIaaSを中心に解説する。

基幹系をクラウド化するメリットは?

 ケンコーコムのように基幹系システムをパブリッククラウドに移行する事例が増えている。ミサワホームや東急ハンズなどがそうだ。ここでいう基幹系システムとは、会計や人事給与など、企業のバックエンド業務を支えるシステムのことである。

 一般にクラウドのメリットといわれるのは、「従量課金でコストが下がる」「基盤の構築・変更が短期間で可能」といったことである。その点、基幹系システムはユーザー数の上限がほぼ決まっており、ECサイトのように一時的にアクセス数が急増することはまずない。また、システムはずっと使い続けることが前提である。

 ここで疑問に思う読者がいるだろう。基幹系システムをクラウド化するメリットは本当にあるのだろうか?

 実際に基幹系システムのクラウド化プロジェクトを手掛けた現場への取材を進めると、多くのクラウドのメリットが基幹系システムでも享受できることが分かった(図1)。

図1●基幹系にクラウド(IaaS)を適用した場合のメリット
図1●基幹系にクラウド(IaaS)を適用した場合のメリット
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