「企業によるIoT(Internet of Things)のデザイン、導入、運用に対する2014年度の支出は400億ドルを超え、あらゆる設備・機器、価値あるすべてのモノには、センサーが内蔵されていく。多くの資産を有する大手企業では、IPアドレスを有するモノの数が、2020年までに50万以上に上る」――。米ガートナーはこのようにIoT分野の進展を展望している(同社発表資料)。

 とはいえ課題も多い。同社リサーチ部門バイスプレジデント 兼 ガートナー フェロー、ハン・ルホン氏は、2015年に向けて、ITリーダーと各種設備の担当リーダーとの連携に向けた話し合い、ユースケース発掘のための実験的な取り組みの着手、戦略的ITパートナーの見極めなどに着手すべきだと提言している。

(聞き手は井上 健太郎=イノベーションICT研究所


IoTに対する期待が高まってきた理由をどう捉えているか。

米ガートナー リサーチ部門バイスプレジデント兼ガートナーフェローのハン・ルホン氏
米ガートナー リサーチ部門バイスプレジデント兼ガートナーフェローのハン・ルホン氏
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 まず、データ取得コストの低下が挙げられる。従来も、各種装置をネットワークでつなげる取り組みはもちろんあった。私は25年前は米ゼネラル・エレクトリックの技術者だったのでユーザーとして覚えているが、インターネットを使わずに燃料節約のために、ガスタービンエンジン1台当たり回転数など250個の計測ポイントのデータを、30秒間隔で合計4000台から収集するのは大変なコストがかかった。しかし、インターネットを活用してデータを収集すればデータ収集に要するコストは10分の1から100分の1になる。

 別な側面として、モバイル端末用のアプリケーションを作りやすくなったことも要因の一つだ。

 また、センサーを変圧器に取り付けるなどデータソースを増やすことで電力供給網を1~2%効率化できることも、およそ10年にわたる調査研究を経てメドが立った。これらの動きがIoTが注目されてきた背景にある。

 企業にとっては、既に稼働しているガスタービンエンジンなど各種装置にセンサーなどを取り付けるだけでエネルギー効率を5%改善できたなど、生産性やコスト節約をもたらせるだろう。消費者向けのサービスでは、どこが空いているかすぐに分かるスマートパーキングを実現するなどで、利便性を提供できる。

どんなITベンダーに注目するべきか。