新人営業のD太君と先輩SEのM子さんの今日の訪問先は、食品卸のR社です。話題の中心は、高度なスキルを持つIT技術者を認定する「認定情報技術者(CITP)」という、新しくスタートする資格制度。認定されたIT技術者の氏名は公開されます。優秀なIT技術者に、情報システムの開発を頼みたいと考えている情報システム部のG課長とKさんも興味津々。

G課長 IT技術者を対象に新しい資格制度ができるって聞いたんだけど。

D太 情報処理学会が創設した認定情報技術者(CITP:Certified IT Professional)のことですね。さすがお耳が早い! 弊社の役員に情報処理学会の会員がいます。それもあって、M子先輩はCITP制度に詳しいんですよ。

G課長 IT技術者の資格制度というと、情報処理推進機構(IPA)が運営している国家試験の情報処理技術者試験があるけれど、CITP制度の目的は何なの?

M子 弁護士や医師はプロフェッショナルとして尊敬されていますね。

G課長 うん、確かに。

M子 同様に、IT技術者の社会的地位を向上させたいという思いが、CITP創設の出発点になっているのです。

Kさん CITP制度の創設が、なぜIT技術者の地位向上に結びつくんですか?

M子 現在、ITプロフェッショナルと呼ぶべき優秀なIT技術者を可視化する仕組みがありません。CITPでは、情報処理学会というITの専門家で構成される準公的な組織が、優秀なIT技術者をITプロフェッショナルとして認定します。CITPの氏名と所属先の企業は公開されます。それによって、弁護士や医師と同じく、高度な能力を持つITプロフェッショナルの存在を社会に周知できます。

Kさん 優秀なIT技術者の存在を知らしめることが、IT技術者の社会的地位を向上させるための第一歩というわけですね。私たちも優秀なIT技術者と一緒に仕事をしたいですね、G課長。

G課長 そうだね。思い通りの情報システムが短納期で開発でできるようになればいいな。ところで、経済産業省がIT技術者の技術レベルを見る基準として、ITスキル標準(ITSS)を策定しているよね。それとCITPは関係するのかな?

D太 鋭いご指摘です。情報処理技術者試験はITSSに基づいて試験を実施しています。CITPも同じくITSSを参照モデルとして作成した資格制度です。

G課長 ITSSはIT人材を7つのレベルに区分していたね。

M子 ITSSは、最も低いレベル1から最も高いレベル7までのスキルを定義しています。レベル1に求められるのは、「最低限求められる基礎知識」を持っていること。レベル2は「基本的知識・技能」を、レベル3は「応用的知識・技能」を持っていることです。

D太 CITP制度がターゲットとしているのがレベル4以上のIT技術者なんですよね、M子先輩。