横浜市、東京電力エナジーパートナー(EP)、東芝の3者は、蓄電池を活用した「仮想の発電所(バーチャルパワープラント)」事業に取り組むことを明らかにした。市内に配置した複数の蓄電池を一元管理して、電力利用量の調整や非常時の防災用電力を確保する。自治体と民間企業が共同で仮想の発電所事業に取り組むのは日本で初めて。3者は7月6日に基本協定を結んだ。

「仮想の発電所」のイメージ(資料:横浜市)
「仮想の発電所」のイメージ(資料:横浜市)
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 2016年度は、横浜市内にある18の小中学校(各区から1校)に10kWh(キロワット時)の蓄電池設備を設置する。10kWhは一般的な家庭が1日に使用する電力量に相当し、約1000台のスマートフォンが満充電できる。仮想の発電所事業では、東芝が開発したIoTシステムによって、平常時には、東京電力EPが需給バランスや天候などを見ながら電力の利用量を調整する「デマンドレスポンス」を実施。非常時には、防災用電力として横浜市が使用する。

 横浜市は公共施設の防災性向上のほか、小中学校における環境教育の推進にもつなげる考えだ。学内で発電や使用した電気量をグラフ化するなどして、図書館や広場など生徒が集まる場所で公開する。「自分たちが暮らすうえでどのくらい電気を使い、どれほど発電しているのか、このシステムを使って体験してもらいたい」(横浜市温暖化対策統括本部)。また、いずれは学校だけでなく、庁舎や病院、民間ビルなどの施設にも拠点を拡大し、太陽光発電など再生可能エネルギーの活用も含めた「あかりの途切れない拠点づくり」を目指す。

 東芝は事業を通じて、IoT技術による新しいビジネスを実証しながら、最適な充放電制御システムの開発を目指す。東京電力EPは蓄電池による「デマンドレスポンス」手法を確立し、「電力自由化」に向けて電気と蓄電池のセットによる新たな料金プラン創設を計画している。

3者の役割と目的(資料:横浜市)
3者の役割と目的(資料:横浜市)
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 事業は「スマートレジリエンス・バーチャルパワープラント構築事業」と名付けられており、国庫補助事業も受けながら展開する。国が2017年にも開設する予定の「節電取引市場」(節電した電力量を売買する制度)にも貢献する狙いもある。