効果が高そうな新薬を使いたいが、薬代を安くしたいと患者に請われれば、処方を変更せざるを得ない。45%の医師はそうした経験をしているようだ(上図)。

 さらに現在は、桁違いの価格の新薬が続々登場する状況。ほとんどの医師が医療保険制度の存続に危機感を覚え、対策が必要と考えている(下図)。高額薬剤による亡国を避けるすべはあるのか。

様々な領域で生じている薬剤費と処方のジレンマ

●患者の施設入所に際して、新規経口抗凝固薬(NOAC)をワルファリンに泣く泣く切り替え。行く先がなくなって途方に暮れるよりはマシかと思い、諦めました。(30代一般内科、20~199床)

●当地では乳幼児の医療費は無料ですが、小学生になると3割負担になります。気管支喘息患児にフルチカゾンとモンテルカストのチュアブル錠で長期管理している場合、小学校に入学した4月からモンテルカストを中止することがあります。(40代小児科、300~499床)

●地方自治体病院に勤務時、同じ疾患でも、国保患者と社保患者では薬価の違う処方を行った。(60代整形外科)

●病院勤務医(特に若い先生方)は案外と薬価を知らず、高い薬剤や最新の薬剤を出してから紹介してくることも多い。そういう薬剤はまだ院内で採用していないこともあり、安価な薬剤によく変更する。(60代一般内科、開業医)

●神経膠腫に対するテモゾロミド治療の経済的負担が大きく、継続できなくなった患者を数人経験しています。(50代脳神経外科、300~499床)

●分子標的薬のお金が払えずに、諦める方がしばしばいます。一方で、生活保護の方は標準治療を受けています。(40代一般外科、500床以上)

●前立腺癌のホルモン療法の薬代が高く、「高齢だし、悪くなって死んでもいいからやめさせてくれ」と懇願されました。(40代一般内科、診療所勤務医)

●てんかん発作のコントロールに新薬の増量で対応していたが、「この先、薬代で毎月数万円は痛い」と言われ、昔からの安い薬に変更した。(50代脳神経外科、300~499床)

●再発乳癌への分子標的薬投与で自己破産した患者がいた。その後から、レジメンの選択には患者の経済状態を確認するようになり、安価なレジメンを選択することも是とするようになった。(50代一般外科、300~499床)

調査概要 日経メディカル Online医師会員を対象にウェブアンケートを実施。期間は2016年6月13~19日で、回答数は3542人。回答者の内訳は、病院(20~199床)勤務医19.3%、病院(200~499床)勤務医28.9%、病院(500床以上)勤務医22.3%、開業医14.3%、診療所勤務医10.6%など。

この記事は日経メディカルに2016年7月11日に掲載された記事の転載です(一部改編)。内容は掲載時点での情報です。
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