日本IBMと日本オラクルが、基幹系システムでの利用を想定したIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)やPaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)の提供に注力し始めた。両社とも2018年は、基幹系などの大規模システムで自社製品を利用する既存顧客が、クラウド移行をする選択肢となるようにサービスを強化する。

 日本IBMは2018年2月に開催した事業戦略説明会で、2018年度に同社のクラウドサービス「IBM Cloud」が注力する戦略の1つめに「既存システムのクラウド化」を掲げた。「クラウド上にオンプレミスと完全に同じ環境を提供することで、既存顧客のクラウド化を促進したい」と日本IBMの三澤智光取締役専務執行役員IBMクラウド事業本部長は強調する。

 日本IBMが既存システムのクラウド化の核として位置づけるのが、米ヴイエムウェア(VMware)の仮想化ソフト「VMware vSphere」を利用したオンプレミス環境のシステムをそのままクラウドで利用できる「VMware on IBM Cloud」だ。「オンプレミスのシステムを変更なく移行できることをアピールして顧客企業のクラウド化を促進したい」と三澤専務執行役員は話す。

 2018年2月19日には、VMware vSphereを利用したハイブリッドクラウドの構築を支援するサービス「VMware Hybrid Cloud Extension(HCX) on IBM Cloud」の提供を開始した。既存のシステムのIPアドレスを変更せずにオンプレミス環境からIBM Cloudのデータセンターにアクセスし、VMware vSphereを利用して構築したシステムを移行できるようにする。

 VMware vSphereのバージョン「5.1」以上で構築したシステムを対象にしており、IBM Cloudからオンプレミス側への移行も可能だ。「マイグレーションによるダウンタイムなしでハイブリッドクラウドを構築できることがメリット」と三澤専務執行役員は説明する。

 日本IBMはこのほか、既存顧客の基幹系システムで多く使われている欧州SAPのERP(統合基幹業務システム)をクラウド上で稼働するためのサービス「SAP on IBM Cloud with VMware」を用意。SAPのERPの動作環境の1つであるSAPのインメモリーデータベース「HANA」をVMware上で提供する。「SAP向けのクラウドサービスは数多くあるが、IBMのクラウドだけがVMware上でHANAを利用できる」(三澤専務執行役員)という。

日本に次世代データセンターを設置

 VMware環境での利用のしやすさをアピールして既存顧客のクラウド化を目指す日本IBMに対して、日本オラクルは自社のクラウドサービスを強化することで既存顧客のクラウドへの移行を促す狙いだ。その目玉の1つとなるのが、米オラクル(Oracle)が運営するデータセンター(DC)の日本での設置である。2月に開催した同社の米国のイベントで明らかになった。