顔認証の精度を決定づける要素は2つある。カメラと人の顔を認識・照合するアルゴリズムだ。最近は後者のソフト部分にAI(人工知能)も組み込まれ始めている。顔認証システムを構成するハードとソフトのそれぞれに強みを持つ企業が協力し合うことで、精度は飛躍的に向上する。

 パナソニックのように、カメラと顔認証ソフトの両方を自社で抱える企業もある。2017年10月に羽田空港の上陸審査場に初めて導入された、日本人の帰国手続きを対象にした「顔認証ゲート」では、パナソニックの顔認証システムが採用された。

 これを機に、パナソニックは顔認証で攻勢をかけている。2018年8月に発売を予定している新しい顔認証システム「FacePRO」のサーバーソフトを使えば、サングラスをかけて顔の一部を隠している人でも、事前登録した顔画像と照合して本人確認できるという。

パナソニックの新しい顔認証システム「FacePRO」。サングラスをかけて顔の一部を隠している人でも、登録した顔画像と照合して本人確認できる
パナソニックの新しい顔認証システム「FacePRO」。サングラスをかけて顔の一部を隠している人でも、登録した顔画像と照合して本人確認できる
(出所:パナソニック)
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 FacePROの最大の特徴は、昨今のAIブームを牽引している技術であるディープラーニング(深層学習)を採用したことだ。深層学習は画像認識との相性がいいことで知られる。そのため、顔認証では必須となる画像処理の「守り」の要に深層学習を用いる機会が増えてきた。カメラで撮影した映像から、人の顔を正確に検出したり、登録画像と照合したりするための顔画像の学習にディープラーニングを使う。

 ただし、現状ではクリアすべき大きな課題がある。膨大な映像や画像をネットワークを介してクラウド上の顔認証システムに飛ばそうとするとき、映像や画像はデータサイズが大きいので通信に時間がかかる。1分1秒を争う警備の世界では深刻な問題である。