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私が検察官の医学教育を始めた理由

2016/09/26
池田 正行

 血友病HIV問題では「殺人鬼 安部英」、北陵クリニック事件では「毒殺魔 守大助」、ディオバン事件では「誇大広告」、そして今度は「わいせつ外科医」。こういった「愚か者には見えない立派な服」の数々に、検察官達は幾度となく騙されてきました。

検察官に対する医学教育の必要性
 詐欺師に騙されない検察官になるためには、科学・医療リテラシーを身につける必要があります。ところが、彼らに医学部に入って勉強し直してもらうわけにはいきません。唯一の道は、こちらから出向いて彼らを教育することです。

 「あなた方は筋弛緩剤中毒をでっち上げただけでなく、神経難病患者の人権を蹂躙し、あまつさえ突然死の恐怖の中に放置している」(関連記事)。2012年2月に始まった北陵クリニック事件の再審請求で、そう指摘する私を、仙台地検の検察官は、検察官意見書という公文書で藪医者呼ばわりしました。そこに示されていた医学に対する彼らの無知を是正することが、藪医者呼ばわりを止めさせ、ひいては再審開始への道を開く。そう考えて私は矯正医官になりました。

著者プロフィール

池田正行(高松少年鑑別所 法務技官・矯正医官)●いけだまさゆき氏。1982年東京医科歯科大学卒。国立精神・神経センター神経研究所、英グラスゴー大ウェルカム研究所、PMDA(医薬品医療機器総合機構)などを経て、13年4月より現職。

連載の紹介

池田正行の「氾濫する思考停止のワナ」
神経内科医を表看板としつつも、基礎研究、総合内科医、病理解剖医、PMDA審査員などさまざまな角度から医療に接してきた「マッシー池田」氏。そんな池田氏が、物事の見え方は見る角度で変わることを示していきます。

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