みなさまごきげんよう。
 フェルディナント・ヤマグチでございます。

 いやいやいやいや。これは驚きました。

 自宅近くの交差点で、歩道に乗り上げてしまう大きな事故でも起きたのかと思い肝を冷やしていたら……。

歩道に乗り上げて客待ちするタクシー。これは悪質過ぎる。
歩道に乗り上げて客待ちするタクシー。これは悪質過ぎる。

 角の飲食店の客がスマホのアプリで呼んだのでしょうか。よく見ると「迎車」のサインが点灯している。バスも通る交差点に駐車するのは邪魔だから……と歩道に乗り上げて客を待ったのでしょうが、いくらなんでもこれはマナーが悪すぎる。

 歩行者信号付き横断歩道のある交差点ですよ、ここは。まだ人の往来も多い時間です。いったい何を考えているのでしょう。

 黄色の車体に赤のラインだと日交?帝都?それとも国際の車両でしょうか。先週書いたuber参入問題に関して、自交総連は二種免許を持つ運転手が運行するタクシーの優位性をしきりにアピールしておられますが、当の運転手さんが(しかも業界のリーダーである大手所属の方が)この為体では……。他人にケチを付ける前に、まずはご自身の襟を正して頂きたいものです。

 後輩の松尾くんが東京・浜松町に素敵なカフェをオープンさせました。

右から2番目が松尾くん。元々は輸送車関係の仕事をしているのですが、飲食ビジネスも手掛けています。何しろ彼の事はハナタレの小学生の頃から知っていますからね。こんな立派なビジネスマンになるとは感慨無量です。
右から2番目が松尾くん。元々は輸送車関係の仕事をしているのですが、飲食ビジネスも手掛けています。何しろ彼の事はハナタレの小学生の頃から知っていますからね。こんな立派なビジネスマンになるとは感慨無量です。

 Byron Bay Coffee。ビローンじゃなくて、バイロンと読みます。

 オーストラリアの最東端に位置する小さな町で家族経営するコーヒー屋さんを、日本に持ってきたのです。オーストラリアには独自のコーヒー文化が有るのですね。

カウンターの中でカワイイ女性たちがパイを焼いたりコーヒーを入れてくれたりします。
カウンターの中でカワイイ女性たちがパイを焼いたりコーヒーを入れてくれたりします。

 ごちそうになったコーヒーとミートパイは極上の出来でした。浜松町に近い方は是非!夜はビールも飲めます。一方で朝は8時半オープン?うーん、あと1時間早くならないの?朝飯客を逃しちゃうでしょう。

 最近飛行機に乗ると、「国交省の指導により……」で始まるサムソン電子のギャラクシーノート7機内使用禁止のアナウンスが必ず流れます。使用はおろか、電源落とせだの充電するなだの、それはもう企業名製品名入りで、これでもかと言う程の念の入れようです。

 フライトの度に流れるのですから、企業イメージの低下は計り知れません。大変な逆広告効果です。サムスンは不採算部門を次々切り売りし程よい回復基調にあったのですが、これは痛い。製品自体は素晴らしいそうですが、爆発リスクが有るのでは恐ろしくてとても使えません。

機内で必ず流れる「サムソン電子製ギャラクシーノート7機内使用禁止令」。自分が悪いわけでも無いのに、持っている人はえらくバツが悪いでしょうなぁ……。
機内で必ず流れる「サムソン電子製ギャラクシーノート7機内使用禁止令」。自分が悪いわけでも無いのに、持っている人はえらくバツが悪いでしょうなぁ……。

 さてさて、それでは本編へと参りましょう。
 トヨタ・豊田章男社長スーパーインタビュー第4弾です。

「米国の自動車ビジネスは偏向しつつある」

「僕らはモノづくりに於けるコダワリというものを持っていたい」
「僕らはモノづくりに於けるコダワリというものを持っていたい」

豊田社長(以下、豊):アメリカに於ける自動車ビジネス。最近これがビジネスモデル的に少し変な方向に行っているような、偏向しているような気がしてなりません。例えば二酸化炭素の排出権を売買するとか。

 メーカーが少しでも燃費の良い、環境負荷の低いクルマを作ろうよというのなら話は分かりますが、まるで金融取引のようなビジネスモデルになりかけている。この件に関しては色々な考え方が有るし、またどちらが正しいという事でもありません。

 ですが、やっぱり僕らはモノづくりに於けるコダワリというものを持っていたい。だって僕らメーカーですよ。トヨタはあくまで自動車メーカーなんです。少なくとも日本のメーカーは、そうした感覚を持ち続けたほうが良いと思っています。

F:だからこそのプリウスPHV、という訳ですか。

:プリウスはね、4代目になって、漸く普通のクルマになったのだと思います。漸くカローラ化してきた、4代目になって。

F:プリウスのカローラ化、ですか。

:そう。新しプリウスは、「これはもうカローラだよね」という感覚を僕ら持っています。このクルマはそう思えるほどに普及してきた。ハイブリッド車というものが、最初にプリウスで世に出てきたときの事を思い出して下さい。

F:うーん、最初は新しい物好きの人のための特別なクルマでしたよね、出たばかりの頃は(笑)

:うん。始めの頃はほんとに特殊なね。「プリウスはプリウスでしょう」という扱いでした。それが時間を掛けて、だんだんだんだんカローラ的な位置づけのクルマになってきた。エミッション(排ガス)のルールであれ何であれ、やっぱり最大の対策は普及です。こういうクルマは、世の中に普及させなくては意味が無い。

 更に言うと、プリウスだけが普及しても意味が無い。エコカーというのは、1台だけが素晴らしい燃費を出してもダメなんです。燃費は良いけどノット・アフォーダブル。そんなクルマでは決して普及して行かない。

 世の中には本当にいろんなクルマが、たくさんのクルマがあります。過去に販売されてきたクルマだって街にはたくさん走っている。それらともどんどんどんどん取って変わらなきゃ意味が無い。そういうことを、各社がキチンとやって、温暖化に対して取り組むべきではないかと思います。

「ダイハツはこうしろ」ではなく「どうしたいの?」

ここで他社のインタビュアーの方も質問を始めた。そうそう、これは“囲み”の取材なのであった。章男社長を独占してはイカンのである。少し黙っていよう。

「私の考えより先に、各カンパニーがこうしたいと言ってくるのが最初じゃないですか」
「私の考えより先に、各カンパニーがこうしたいと言ってくるのが最初じゃないですか」

他社のインタビュアー(以下、他):そうすると、これからダイハツと組んで、特にASEANを中心に小型車を展開していくと、ボリュームはものすごく大きいじゃないですか。恐らく。

:はい。

:そこのインパクト。環境に対するインパクトも大きくなるような気がするんですが、そこはどのようにお考えですか。

:ウチの場合、ハイブリッドでやるとか、プラグインハイブリッドでやるとか、それからFCVでやるとか、環境車に関して様々なチョイスが有ります。そして既存のいろんなネームのクルマにもハイブリッドのユニットを、もう当たり前のようなチョイスとして入れられるようになっています。ここから先、ダイハツ100%によって、サイズの小さなクルマが、その一角に入ってくるんだろうな、という感覚はありますね。

:具体的に、もう進めてらっしゃるのですか。

:まずはダイハツですよ。「ダイハツはどうしたいの」ということが重要です。もともとダイハツからの話でしたから。

:なるほど。へえ、そうなんですね。

ここでフェル、他社の質問に口を挟む。沈黙時間約20秒。スミマセン、口から産まれたものでして。

F:「ダイハツはどうしたいの?」、なんですか?「ダイハツはこうしろ」ではなく。

:トヨタの社内には、ダイハツに対して、「こうしろ」と言っている人もいると思いますよ。社内にはいると思いますけれども、僕はダイハツがこうしていきたいというのが最初でしょうと、と思う。

F:なるほど。そういうものですか。

:そうです。トヨタはカンパニー制ですから。各カンパニーの判断が有りますから。私の考えより先に、各カンパニーがこうしたいと言ってくるのが最初じゃないですか、と思いますね。そのためのカンパニー制なんだから。地域ごとにCEOも置いているのだから。

「1000万台クラスになったら中央集権はムリ」

さあさあ、いよいよ今回の話の核心だ。
トヨタは今年の4月から製品群別に7カンパニー制度を導入している。
カンパニー制度導入の目的は以下の3点である。

(1)開発から製造まで一体となった「もっといいクルマづくり」、「人材育成」の実践
(2)意思決定の迅速化・完結化
(3)将来を見据えた中長期ビジョン・経営戦略策定機能の強化

ここでも「もっといいクルマづくり」という言葉が出てくる。
今やトヨタを語る上では、全ての基礎となるキーワードと言える。

トヨタは2011年の段階で、既に「地域主体経営」を導入している。その2年後の2013年には、「ビジネスユニット制」の導入も済ませている。「もっといいクルマづくり」と「人材育成」の推進は、既に取り組んできたテーマであるはずだ。しかし1000万台クラスの会社に成長した今、“それだけ”では足りなくなってしまったのだ。それ故のカンパニー制導入である。

今回の一番大きな体制変更のポイントはズバリ、「機能」軸から「製品」軸に移ったことにある。因みに7つのカンパニーとは、

・先進技術開発カンパニー
・Toyota Compact Car Company
・Mid-size Vehicle Company
・CV Company
・Lexus International Co.
・パワートレーンカンパニー
・コネクティッドカンパニー

である。

だいたいの車種はカンパニー名から想像が付こう。
CVは商用車のことである。それぞれのカンパニーには、それぞれにCEOが存在する。

:1,000万台のレベルの会社になったら、そんな1人のリーダーとか、中央集権の体制で、トップが「こうやりなさい」と言って会社を動かすなんて、どだい無理な話ですよ。

F:そういうものですか。

:ムリですよ。もう絶対にムリ。年間に1000万台のクルマを作るって、そんなレベルの話じゃないですよ。

F:どれくらいの数までなら行けるものですか。中央集権体制で。

:そうですね。600万台までならできると思います。

F:600万台までなら、ワンマン社長でも行ける。

:行けると思います。でも600万台を超えた段階で、僕はワンマン社長では無理だと思います。少なくとも、今のトヨタの仕事のやり方では絶対にムリ。現地現物とか、商品に近いとか、お客様に近いとかを大切にする今のウチのやり方では、もう1,000万台でワンマン社長なんて絶対にムリです。

F:なるほどなるほど。明確なお答えですね。

ワンマンのイメージが強い日産のカルロス・ゴーン氏。昨年の日産のグローバル販売台数は過去最高の542万3千台である。そろそろ600万台も視野に入ってきた。傘下に収めた三菱自動車の年間販売台数は121万台だから、それも数字に含めれば、来年は楽勝で600万台超になる。はてさて、日産はこれからどうするのか。これは見ものである。

「カンパニー制は、ソリューションではない」

:今回のカンパニー制への移行は、とんでもなくチャレンジングなことを始めたと思っています。だけどそれは、より良いクルマを、もっともっと良いクルマをつくる為の枠組みなんです。だからカンパニー制は決してゴールではなく、スタートだと思っています。カンパニー制は、ソリューションではなく、オポチュニティーだと。

F:カンパニー制は、「ソリューションではなくオポチュニティー」であると。

:そうです。ソリューションではありません。決して“解決策”ではない。あくまでも良いクルマを作るためのオポチュニティーです。

F:そのオポチュニティーは、「好機」という言葉の理解で正しいですか。

:その通りです。だから、みんなが考えなきゃいけない。僕はみんなに考えてもらいたい。

F:みんなが考える。社員のみんなが考える。

:そう。7つのカンパニーが出来たことにより、何人ものプレジデントが生まれる。それから何人ものリーダーができる。そして“リーダー”からリーダーズというのが出来てくる。それが今、トヨタが一番目指している姿ではないでしょうか。そうしたときに、きっとトヨタらしい強さが、さらに強いトヨタ“らしさ”が、また発揮できるのだと思います。

F:車種別のカンパニー制となると、カンパニー同士での食い合い、“カニバル”が生まれる恐れは有りませんか。

:“カニバル”というか……カンパニー同士で競争が起きるのは良いんじゃないですか。各カンパニーが必死になって考えて、お客様から、市場から選ばれるクルマを作れば良いんですから。

F:なるほど。社内間の健全な競争は大歓迎、ということですね。

「トヨタ内の工場同士で受注競争があってもいい」

:お客様からクルマが選ばれるだけじゃ有りませんよ。工場もカンパニーから選ばれるようになる。今までは、「はい。このクルマはこの工場」とやっていた。ウチの工場はこのクルマを作ります。当分は安泰です」という雰囲気があった。それじゃいけませんよね。絶えずみんなが社内で競争している状態にしないといけない。

F:すると、同じトヨタの工場間でも競争が有っても良いと。受注合戦が起きても良いと。

:有っても良いでしょう。いまは豊島が開発したプリウスをこの工場で作っているけれども(机に指で円を書いて)、それをこっちに移したりとかね(大きく指を動かして、他の場所に円を描きながら)。

デストロイヤー豊島氏(以下、D豊島):え!こっちに移すんですか……?

:まだだよ。まだ違うよ。

D豊島:そんな権限無いですし、私……。

:でも、いつかはそういうようになっていくと思います。トヨタは非常にコンペティティブな会社になる。社内でも。

F:スゲー!……あ……いや。スミマセン、つい。凄いです。壮大なお考えです。

:1000万台の規模になるとね、社内にもいろんな競争が無ければダメなんですよね。

F:なるほどなるほど。

1000万台クラスの会社を一人で牽引するなんて、どだいムリ。
カンパニー制の導入は、権限委譲と同時に、健全且つ熾烈な社内コンペの始まりでもあったのだ。知れば知るほど面白い。「トヨタがツマラナイ会社」なんて言ったのはどこの誰だ!

あ……私でした。どーもスミマセン(初代林家三平師匠調)。
章男社長のインタビュー。まだまだ続きます!お楽しみに!

いまの時代の“プリウス”はどっち?

こんにちは、ADフジノです

順調に回を重ねております豊田章男社長インタビューですが、実はこの取材時の本来の目的はプリウスPHVの試乗会でした。フェルさんはお忘れのようですけど・・・。

社長がインタビューで「プリウスはカローラ化してきた」という発言をされていますが、奇しくもいまの4代目プリウスを試乗したときのボクの印象もそれでした。いい意味でフツーのクルマになったと感じました。

標準の4代目プリウス。もうすっかり見慣れました
標準の4代目プリウス。もうすっかり見慣れました

では、かつてのプリウスの役割を担うのはどのモデルなのか、それが新しいプリウスPHVではないかと思います。

新型はまず先代とは異なり、ベース車とデザインの差別化を図っています。それは外装だけでなく、内装も変更箇所は多岐にわたります。PHVに乗っているという特別感がちゃんと演出されています。

こちらがプリウスPHV。16個のLEDで構成されるヘッドライトを採用。トヨタ車初のアダプティブハイビームを備える。またバックドアの骨格をカーボン製としアルミに比べ40%の軽量化を実現するなど、細部まで力が入っている
こちらがプリウスPHV。16個のLEDで構成されるヘッドライトを採用。トヨタ車初のアダプティブハイビームを備える。またバックドアの骨格をカーボン製としアルミに比べ40%の軽量化を実現するなど、細部まで力が入っている

そして、何より注目なのはEV性能の向上です。ラゲッジ下に収まるリチウムイオンバッテリーは先代の4.4kWから倍の8.8kWに、デュアルモータードライブシステムとして、従来のモーターに加え、EV走行での最大出力時にはジェネレーター(発電用)であるモーターも駆動用として作動させます。

これにより、EVとしての走行可能距離は60km以上、最高速度は135km/hに到達するといいます。ただし、バッテリーの増加によって車両重量は100kgほど重くなり、後席は独立2座の4人乗り仕様になりました。

充電性能も強化されていて、新型は100V、200Vの両方の普通&急速充電に対応。急速充電なら約80%充電が約20分で行え、また専用工事が不要な一般の住宅用の100V/6Aでも充電が可能といいます。さらに、ルーフには世界初のソーラー充電システムが搭載されます。駐車中は駆動用のバッテリーを充電、走行中もバッテリーの消費を低減する役割を果たすといいます。

ルーフのソーラーパネル。これにより充電スタンドがない駐車場でも充電が可能。災害時などの給電機能も強化されている
ルーフのソーラーパネル。これにより充電スタンドがない駐車場でも充電が可能。災害時などの給電機能も強化されている

試乗会はまだナンバーのつかないプロトタイプとのことで、サーキットで行われました。

何の気なしに走りだしたのですが、出だしは明らかにベース車よりもトルクフル。そして車重の重さはもちろん感じるのですが、それがよりしっとりとした乗り味を生んでいました。そして何より驚いたのが、80km/hあたりからアクセルを踏みこむとエンジンがかかるかと思いきや、なんとそのままEV走行を続けて、サーキットを1周できてしまったこと。もちろんその後、全開にすればエンジンはかかりますが、これは相当なEV性能だと感じた次第です。

インテリアは、テスラにも負けじと11.6インチの縦型のディスプレイを搭載。フリックやピンチアウトなどスマートフォンのような操作を可能にした
インテリアは、テスラにも負けじと11.6インチの縦型のディスプレイを搭載。フリックやピンチアウトなどスマートフォンのような操作を可能にした

残念ながら発売が延期され、今冬の発売予定で価格はまだ未発表ですが、いまの時代の“プリウス”は、こちらだと思います。お急ぎでない方はぜひPHVを。

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