みなさまごきげんよう。
フェルディナント・ヤマグチでございます。
最近インタビューづいておりまして、東京オリンピック開催に際しての「フードビジョン」について、学校法人服部学園 服部栄養専門学校理事長・校長の服部幸應先生からお話を伺ってきました。こちらはマガジンハウスの『Tarzan』で10月中にお届けする予定です。
東京オリンピックは日本の食文化を世界に向けて発信する又とないチャンスです。
しかし一方で話が「オーガニック」や「サスティナビリティ」に及ぶと、途端にお寒い現状が明らかになってくる。先進国でも最低レベルのオーガニック耕地面積等、農作物をはじめ肉も魚もオーガニック率は非常に低いのだそうです。たくさん勉強させて頂きました。
こちらは紳士服のコナカが、青山に開く新形態のお店、DIFFERENCE。失礼ながら安価な量産型スーツをロードサイド店で大量販売するイメージの有る同社ですが、実は以前からオーダースーツのお店も展開していたのだそうです。そのビジネスをイチから見直して、新たにフラッグシップとして立ち上げたのがこちらのDIFFERENCE青山店。私も早速1着オーダーして参りました。
一度採寸してしまえば、次回以降はアプリで注文できるところもナイス。スーツを作るのに、毎回そうそう時間は割けませんからね。スーツの生地は平米あたりの重量や糸の太さ、また縦横の糸の撚り方により風合いが違って来るのだそうです。いや、こちらも勉強になりました。
この記事が公開される頃には、既にレースも終わっておりましょうが、今年もアイアンマンレースにチャレンジしてきます。毎度の事なのですが、今年の練習不足はいくら何でも酷すぎる。今さらジタバタ走ったりしても手遅れなので、大人は道具で解決します。ということで困ったときのメイストーム。
キャノンデールの旧型スライスRS。確か日本では未発売のブラックインクモデルです。この組み立ての異様に難解な、複雑怪奇なバイクを3人がかりで苦心惨憺組み上げて頂きました。ありがとうございました。
さてさて、それでは本編へと参りましょう。
トヨタ・豊田章男社長スーパーインタビュー第6弾です。
トヨタの真骨頂で有るはずの、「売れる数だけつくる」生産方式。所謂トヨタ生産方式。
しかし章男社長は「出来ているはずのものが出来ていない。出来ていないことがある」と発言した。
“はず”のものが出来ていないとはどういうことか。要するに、マーケットの動きが読み切れていなかった、ということなのだろうか。トヨタは完全無欠の存在であり、世界中の製造業のお手本ではなかったのか。今回はその辺りから伺っていこう。
「褒めないけど、あとからブツブツも言わない」
豊田社長(以下、豊):マーケットというものは、僕は基本的に予測できないのだと思っています。市場を読むのはとても難しい。でも、それじゃ「予測はできません。だから諦めます」と言ってしまって良いものか。そうではないですよね。どこかで判断して、決断をしなければいけません。
僕は商品化決定会議の議長をしています。商品開発にゴーをかける最終責任者です。ですが最終決定の際、「このマーケットではこれだ!」、と確信を持ってゴーをかけることはまず有りません。それでも商品化決定会議を通すだけ通しておいて、その後で「俺はホントはあのクルマが気に入らなかったんだよな」、と言うような事だけは言わないようにしています。
ああ、もう絶対に言いません。クルマのライフは、決定化会議から後に20年以上も続くんです。だからクルマをいったん世の中に出してしまったら、最後の最後まで戦っていくんです。
F:20年も……なるほど。
豊:逆に、「あ、これは良いアイデアだな。良いクルマだな」と思っても、褒めないようにしています。褒めたらそこで止まってしまいますから。だから褒めないように、褒めないように。最後の最後まで。
F:褒めてくれないんだ、社長は(笑)
デストロイヤー豊島さん(以下、D豊島):褒めてくれないです。ぜんぜん褒めない(苦笑)
豊:「なんかイヤだな、このクルマ」という時もあるし、「ああ、これは自分の好みにピッタリのクルマだな」という時もある。でも、何れにしても、言葉に出して言ってしまったら、そこで進化は止まってしまう。だから好きも嫌いも言っちゃいけないんです。
そして、一番やってはいけないことは、いったん決定したことに対して後からブツクサ言うことです。いったんゴーと決めておいて、世の中に出したその後に、20年間もブツブツブツブツとね。会社に来てはブツブツブツブツ。
「いや、ホントはこれ、俺は最初から嫌いだったんだ」、とかね。それだけはみんな絶対にやめようやと。それが今のトヨタの開発のルールです。そうやって、本当に最後の最後まで戦っているというのが現状だと思います。
「“トヨタ流の理屈”はブレークスルーしないといけない」
他社:それだと、異論を言えなくなる環境にならないですか。「これ、黙っておこうかな……」って。
豊:異論は言える環境だと思いますよ、いくらでも。というか、商品化決定会議の雰囲気が、ちょっと変わって来たよね。
D豊島:はい。社長会議で新入りがガンガン言ってきたりしますから。
豊:そうそう。社長対新入りも有ったな(笑)。他にもいろいろあるけれども。いずれにしても、風通しは良くなっていると思います。みんな好き勝手なことを言って来ますよ。僕も好きなことを言っていますが(笑)
D豊島:そうでなきゃ、最後までケンカできませんもの(笑)
豊:そうそうそうそう(笑)。
D豊島:我々のほうが矛を収めなきゃならなくなるから。
豊:うん。でも別に収めなくたって良いんですよ。ゴーをかけてしまえばそれで自然と収まるんだから。
この辺り、なにやら章男社長とD豊島氏の世間話っぽくなってきた。
“デストロイヤー豊島”こと豊島浩二氏は、4代目プリウスの開発責任者だ。豊島氏は今回マスコミにお披露目となったプリウスPHVの開発も担当しておられる。次代のトヨタを担う勝負車であるから、章男社長との関係は特に緊密であるのだろう。
D豊島:そうやって、我々が社長も巻き込んで上も下も関係なくガンガンやり合うことは、多分お客様にとってもとても良いことなのだと思います。
豊:そう。実際にクルマを買って下さるお客さんがいる市場に出す前に、市場的なシミュレーションがどれだけ社内で出来ているか。それはとても重要です。こういうことは、ある一定の大学から来た、言わば”優秀スペック“の人間だけでやっていたって意味がない。世の中全員大卒じゃありませんから。子供もいれば大人もいる、女性も男性もいる。国内の市場を見たって、最近は外国人のことも考えなきゃいけません。多様性の世の中ですから。
F:ダイバーシティ、ですか。
豊:そう。社内の議論を、実際に“本物の世界”に出したときに、いったいどれだけ通用するのか。今はまだ多少のギャップが有ると思うんです。理屈だけでやっているとね、どうしたってそうなるんです。世の中とのギャップが生まれてしまう。
F:それはトヨタがエリート集団になり過ぎた、ということでしょうか。
豊:トヨタがエリートかどうかは知りません。ですが、“トヨタ流の理屈”というか、そういうものが罷り通っているということは有ります。だからそこは、その部分は絶対にブレークスルーしないといけない。デザイン的にもブレークスルーしていかないと。
F:なるほど。
「あのクラウンのデザイン、僕は終始無言だった」
豊:そういえば、最近のトヨタは“出し惜しみ”をしなくなりました。
F:出し惜しみ……今まではしていたんですか?(笑)
豊:出し惜しみというと言葉が悪いのだけど、「今このアイデア出してしまうと、マイナーチェンジの時に何をするの?」とかね。これは次のマイナーの時のために取っておこう、と。こういうことになるんですよ。
天下のトヨタが出し惜しみ?これまたものすごい話になってきた。
こんなこと話してしまって良いんですか。
しかし広報のみなさんは特に慌てるでもなく、横で涼しい顔をして座っている。
取材の後になって、「ちょっとフェルさんご相談が……」という忌まわしき例のアレも無い。トヨタは本当に変わって来たのだ。
豊:カローラなんかが典型的ですよね。カローラは数が多いじゃないですか。圧倒的に数が多い。例えばアメリカでカローラを最初に出して、少し遅れて次に中国でカローラを出す時、更に良くなっているんです。
F:良いことじゃないですか。どんどん良くなって行くことは。
豊:うん。クルマが良くなること自体はもちろん良いことなんだけれども、変えるタイミングの問題です。今までだったらマイナーチェンジまで待って、それでここの部分をこう変えよう、とやっていた。
そうじゃなくて、絶えず変える。こうした方が良いと分かった瞬間に、すぐさま変える。ボンとハードルを上げる。そりゃ実際にやっている方はたまらないと思いますよ。たまらないと思いますが、それでもやっぱり絶えずハードルを上げていく。そういうカルチャーが出来てきたような気はしますね。
他社:これはトヨタさんだけではないのですが、ことデザインに関して言うと、「この市場のこのぐらいのお客さんだったら、この程度のデザインでいいだろう」というような感じは……。
豊:だから、そういうのはやめてって言っているんです。そういうことはもう絶対によそうよと。今出せる最高のものを出そうと。
F:なるほど。
豊:デザインと言えば、クラウンの時。あの大きく変わった、賛否両論が渦巻いたクラウンのデザイン。あれは最初、商品化会議の時に出てきたけど、僕は終始無言だったよね。
D豊島:無言でしたね……社長は確かに。
広報室長:私もあれの写真を見たときはさすがに……
D豊島:ねぇ。言葉が出ないというか……一様に無言になりましたね。
豊:でもいま、誰か何か言いますか?クラウンのデザインに関して。
他社:いや。言いませんね。
「ワオ!と言わせてみろ」
F:見慣れちゃったというか。
豊:そう。慣れるんですよ、ああいう物は。アルファード、ヴェルファイアもそう。出た当初はいろいろ言われるけど、じきに慣れてくる。あれに慣れたら。次に行きますから。
D豊島:そうですね。どんどん行きます。
豊:あのクラウンのデザイン。どーんというのが出てくる前は、自分は最後の最後まで「ノー」だったんですよ。
F:ははぁ……。
豊:「ワオ!」と言わせてみろと。
F:お!ついに「ワオ!」が出た(笑)
豊:それで、最後の最後に、もう1チームできたんです。商品選択的な時期には、何チームあったって当たり前なんです。
D豊島:クラウンの場合は、最初に3チーム有って、それがやがて1チームになって。
豊:それが1チームになって、ずっとやって来たのですが、全然良いアイデアが出てこない。それで最後に、もう1チーム作ったんです。そうしたらここでまた競争が始まった。最終的には元のチームが勝ちましたけどね。それがあの形です。だからね。ずっと「ノー」と言い続けるのが私の仕事ですからね(笑)
D豊島:あの……プリウスも……プリウスの場合も……。
豊:プリウスも、ずっと「ノー」と言ってきましたね。これはTNGA採用の初号車で、絶対にカッコいい車両にするって言ったじゃないかと。こんなのイヤだねと。最初はもう、ずっと「ノー」でしたね。ずっとずっとね。
D豊島:本当にずっとなんです。ずっと「ノー」。
いったんバーっと書いて読み返してみると、章男社長、本当に凄いことをバンバン話して下さっている。凄い。
長く続いた豊田章男社長のスーパーインタビュー。次回でいよいよ最終回です。最後はエネルギーに関してのお話もチラッと頂きました。お楽しみに!
TNGAを採用した新型クロスオーバーSUV「C-HR」発表
こんにちは、ADフジノです
本編のインタビューで、プリウスは新プラットフォームTNGA採用の初号車で、社長のYESをもらうまでの苦労話が語られていましたが、つい先日、そのTNGAを採用した新型クロスオーバーSUV「C-HR」が発表されました。
このモデルはそもそも2014年パリモーターショーにコンセプトカーとして出展されたものです。今年のニュルブルクリンク24時間レースには、モータースポーツ活動を通じてクルマを鍛える「もっといいクルマづくり」の一環として、この先行開発車両が参戦していました。また欧州をはじめとする世界の様々な道や国内外のサーキットコースで走行テストを重ねて、走りの性能を徹底的に鍛え上げたといいます。
事前に年内には市販モデルを発売するとアナウンスされていましたが、ようやく概要が判明しました。エンジンラインナップはプリウス譲りの1.8リッターガソリン+ハイブリッドシステムを搭載したものと、1.2リッターガソリンターボの2種類で後者は4WDのみの設定。衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense P」を全車に標準装備するようです。
また先述のとおり走りには相当こだわっているようで、フロントに新開発のマクファーソンストラット、リヤにダブルウィッシュボーンのサスペンションを採用。大径スタビライザーやダンパーにはドイツSACHS製のものを標準装備するといいます。
コンパクトSUV市場はここ4~5年で約2倍へと拡大傾向にあるといいます。トヨタがこのセグメントに満を持して送り込むC-HRが“出し惜しみ”せず、同じTNGAのプリウスやプリウスPHVを大きく超えてくるものだとするならば、その走りはかなり期待できると思います。
11月上旬からWebで先行商談受付を開始し、年末には全トヨタ販売店を通じて発売予定です。小さなSUVを検討中の方、お楽しみに。
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