注目を集めた提携発表から半年。いよいよ独BMWと米インテル、イスラエルのモービルアイによる自動運転車がお目見えする。3社は米国時間1月4日、完全自動運転の試作車の公道実験を2017年後半に始めると発表した。40台の試作車を作り、欧州と米国で走らせる予定だ。

完全自動運転車の公道試験を始めると発表した独BMW。米インテルとイスラエルのモービルアイとの提携で実現する
完全自動運転車の公道試験を始めると発表した独BMW。米インテルとイスラエルのモービルアイとの提携で実現する

 米ラスベガスで5日に始まった家電見本市「CES」に先駆けて、3社は早朝6時半という異例の時間帯に記者会見を開いた。BMWはクラウス・フレーリッヒ取締役が、インテルはブライアン・クルザニッチCEO(最高経営責任者)が、モービルアイはアムノン・シャシュア会長が登壇した。

 試作車のベースはBMWの「7シリーズ」。インテルのプロセッサーとモービルアイの画像処理技術を搭載する。

 3社は会見で、完全自動運転を実現するために開発したこれらの技術を「プラットフォーム」と位置付け、他社への販売を念頭に置いていることを強調した。「他社のクルマにも応用可能な構造で作っている」(クルザニッチCEO)。

 2016年7月に提携を発表した3社は、2021年までに、完全自動化を意味する「レベル5」(SAE=米自動車技術者協会=の基準)の導入を目指している。今回の試作車はドライバーが運転席に座る「レベル4(高度な自動化)」以下だとみられる。

 パソコンの付加価値の代名詞とも言われた「インテル入ってる」のウリ文句。それが、いよいよ実物のクルマになって登場し、クルマの“頭脳”の主導権を誰が握るかの戦いが始まった。CESに先立って開かれた自動車各社の記者会見でもAI(人工知能)関連の発表が群を抜いて多かった。BMWの公道試験開始の号砲で、他社のAIをめぐる動きもより激しさを増しそうだ。

未来のクルマの内装は「まるで部屋」

 BMWは記者会見で、完全自動運転に対応した次世代インテリアのコンセプトも世界初公開した。目玉は、センターコンソールに備わった「ホロアクティブ・タッチ」だ。

 ホログラムのように、センターディスプレーから浮かび上がるように表示される情報に対し、運転者はジェスチャーで指示を送る。BMWは7シリーズなどで既にジェスチャーによる操作を導入しており、ホロアクティブ・タッチはその応用と言える。

運転席のイメージ。ボタン類はなく、全てジェスチャーでコントロールする
運転席のイメージ。ボタン類はなく、全てジェスチャーでコントロールする
後部座席には大きなディスプレーを搭載。まるで部屋のようなデザイン
後部座席には大きなディスプレーを搭載。まるで部屋のようなデザイン

 完全自動運転が実用化すれば、運転者は乗車中の自由な時間が手に入ることになる。クルマの内部は、より利用者がくつろげる空間へと変わっていくのは必然と言える。

 BMWはCESで、「5シリーズ」をベースとしたコネクテッドカーの試作車も公開する予定だ。米アマゾン・ドット・コムの音声アシスタント商品である「アマゾン・エコー」を使って音声認識でアマゾンから商品を買えるようにする。

 クルマの内部空間やクルマと人の関係など、自動運転は安全を強化するだけでなく、多くの変化を促しそうだ。

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