中国の最高国家行政機関である国務院、その直属の研究機関が「中国社会科学院(Chinese Academy of Social Sciences=CASS)」です。1977年に設立された、哲学、社会科学研究の分野で中国でもっとも権威のある学術機構であり、学位を授与する機能も持ちます。傘下の研究所は39、研究センターが100以上、所属する研究者は4000人。中国の「五カ年計画」策定の基本作業もここが参加しているのです。

 本連載では、この中国政府のブレーンとして機能しているシンクタンクのトップ研究者が、いま、自らの国についてどう考えているかを、寄稿を翻訳する形で紹介していきます。原文のニュアンスをできる限り維持するため、意訳は最小限に留め、研究者や日本人には理解しにくい箇所については、適宜、本文と分けて注釈を入れる形とします。内容については、注釈の囲みをざっと見ていただくだけでも掴めるよう、配慮したいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。

(大和総研 主席研究員 小林 卓典)

国際収支発展段階説で見る中国

 第1回は、余永定・CASS学部委員の論文です。余氏は同院世界経済・政治研究所の元所長で、テーマ領域は為替金融です。なお、「学部委員」はCASSに在籍する学者についての最高名誉職で、中国科学院の院士に相当します。

 この論文の内容を一言で言えば「中国はその成長の過程で、『海外の資金を高利で借り入れて、低利の米国債などで運用している』状況が続いていて、それが限界に来ているのではないか」という現状分析と危機感です。研究者らしく、前提を積み重ねてから結論に至る構成なので、最初は読みにくく感じるかも知れませんが、この結論を頭に置いて読んでいただくと、なぜその説明が必要なのかが理解しやすくなるかと思います。

<span class="fontBold">余永定(ユー・ヨンディン)氏</span> 1948年生まれ。1969年中国科学院北京科学技術学校卒業。中国社会科学院経済学修士、オックスフォード大学経済学博士。中国社会科学院学部委員、全国人民政治協商会議委員、中国国家発展改革委員会国家計画専門家委員会委員、全国人民政治協商会議外交委員会委員、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域顧問。これまで、中国社会科学院世界経済・政治研究所所長、中国世界経済学会会長、中国人民銀行通貨政策委員会委員、国連国際金融・通貨体制改革委員会委員(スティグリッツ委員会)、国連開発政策委員会委員等を歴任。主な研究分野は、世界経済、国際金融、中国マクロ経済。孫冶方経済学賞受賞。主な著書に、『西方経済学』(1997)、『世界経済を考える』(2004)、『ある学者の思想の軌跡』(2005)、『見証失衡―双子の赤字、人民元為替相場と米ドルの落とし穴』(2010)、『最後の障壁』(2015)など。
余永定(ユー・ヨンディン)氏 1948年生まれ。1969年中国科学院北京科学技術学校卒業。中国社会科学院経済学修士、オックスフォード大学経済学博士。中国社会科学院学部委員、全国人民政治協商会議委員、中国国家発展改革委員会国家計画専門家委員会委員、全国人民政治協商会議外交委員会委員、国際通貨基金(IMF)アジア太平洋地域顧問。これまで、中国社会科学院世界経済・政治研究所所長、中国世界経済学会会長、中国人民銀行通貨政策委員会委員、国連国際金融・通貨体制改革委員会委員(スティグリッツ委員会)、国連開発政策委員会委員等を歴任。主な研究分野は、世界経済、国際金融、中国マクロ経済。孫冶方経済学賞受賞。主な著書に、『西方経済学』(1997)、『世界経済を考える』(2004)、『ある学者の思想の軌跡』(2005)、『見証失衡―双子の赤字、人民元為替相場と米ドルの落とし穴』(2010)、『最後の障壁』(2015)など。

 イギリスの経済学者ジェフリー・クローサーが1957年に提唱したモデルによれば、一国の経済成長の過程は、国際収支と対外純資産構造の変遷により、次の6段階に分けることができる。すなわち、①未成熟な債務国、②成熟した債務国、③債務返済国、④未成熟な債権国、⑤成熟した債権国、⑥債権取崩し国 である。

 それぞれの段階で、その国の経常収支、貿易収支と所得収支の3項目の赤字・黒字が異なった状態となる。対外純資産はその国の発展段階に見合って、マイナスからプラスへ、プラスからマイナスへと変化する。国際収支の変化は、その国の発展レベルとは切り離せない関係を有している。

 但し、1人当たりの国民所得が極めて低い国の場合、国内では貯蓄不足となり、貿易収支、経常収支はともに赤字となり得る。その場合、資本輸入を通じて国内の貯蓄不足を解消することができる。

 「経常収支」は、「貿易収支」「サービス収支」と「第一次所得収支=対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支」、「第二次所得収支=官民の無償資金協力、寄付、贈与の受払などの、居住者と非居住者との間の対価を伴わない資産の提供に係る収支」の合計です。「金融収支」は、直接投資、証券投資、金融派生商品、その他投資及び外貨準備の合計であり、経常収支は、金融収支に計上される取引“以外”の、居住者・非居住者間で債権・債務の移動を伴う全ての取引の収支を示すわけです。

 このクローサーモデルは、各国の経済発展の経験とおおむね合致している。

 例えば、経済発展の初期段階で、東アジアの新興国は、いずれも貿易収支と経常収支が赤字であった。第二次世界大戦後、大まかに見れば、日本も未成熟な債務国、成熟した債務国、債務返済国の段階を経てきた。そして、2005年~2010年に日本はクローサーモデルの4番目の段階、すなわち未成熟な債権国の段階に入ったと考えられる。

 そして2011年以降、日本は5番目の成熟した債権国の段階に入った。2015年まで貿易収支は赤字基調だったが、所得収支黒字が貿易収支赤字を遥かに超えていたため、経常収支は依然として黒字を保っていた。一方、米国はすでに6番目の債権取崩し国の段階にある。つまり、貿易収支と経常収支はともに赤字だが、所得収支が依然として黒字を保つ状況にある。

 クローサーモデルをもうすこし具体的に説明しましょう。

  1. 工業が未発達な段階では、工業を発展させるため貯蓄を上回る投資が行われ、投資財を海外から輸入し、資金も海外から借り入れる。当然、貿易収支は赤字で、海外への利払いのため所得収支も赤字となる(未成熟な債務国)。
  2. 工業が発展し、輸出競争力の向上とともに貿易収支が黒字化する。ただし、海外への利払いが依然として大きく、所得収支赤字が財・サービス収支黒字を上回るため、経常収支赤字が続く(成熟した債務国)。
  3. 一段と資本蓄積が進んで工業が発展すると貿易収支黒字が大きくなり、財・サービス収支黒字が所得収支赤字を上回り、経常収支が黒字化する。これによって資本輸出国に転換し対外債務の返済が可能となる(債務返済国)。
  4. 貿易収支黒字は縮小するものの、対外純資産の蓄積によって所得収支が黒字化する債権国の段階に至る(未成熟な債権国)。
  5. 工業の国際競争力が衰えて貿易収支は赤字化するが、対外純資産の蓄積により所得収支黒字は拡大し、経常収支黒字は維持され対外純資産の増加が続く(成熟した債権国)。
  6. 財・サービス収支赤字が所得収支黒字を上回り、経常収支が赤字化する。これにより対外純資産が減少に向かう(債権取崩し国)

国際収支を巡る4つの論点

 日米とは異なり、中国の国際収支構造の変遷は特殊であり、しかも、合理的ではない面があるため、本稿では、4つの論点に集約して分析を行いたい。

 第一は、ドーンブッシュの論点である。

 国際経済学者、故ルディガー・ドーンブッシュ氏は、「開発途上国(=中国)が資本輸出国であるべきではない」とし、貧困国が資源を経済成長と国民の生活水準向上のために国内に投資するのではなく、あえて米国債の購入に利用するのは合理的ではないと主張した。

 1993年時点の中国の1人当たり国民所得は410ドルであり1994年以降、経常収支は黒字を維持している。つまり、わずか410ドルの1人当たり国民所得しかなかった中国が、自国よりもはるかに豊かな国へ資本輸出していたことになる。ちなみに、1993年の米国の1人当たり国民所得は2万6442ドルであり、中国のそれの約64.5倍であった。

 第二は、ウィリアムソンの論点である。

 元ピーターソン国際経済研究所の経済学者、ジョン・ウィリアムソン氏は、資本輸入国は海外からの資本を経常収支の黒字に転換させるために利用すべきだと強調している。つまり、開発途上国にとって、流入する外国資本は、海外からの機械設備輸入、技術導入、人材誘致に利用すべきものである。さもなければ、高い金利で借りた資金を低い金利で資金の貸出者である外国にまた貸しするのと同じであり、それは資源の浪費である。

 中国は約20年にわたり、「双子の黒字(経常収支と資本収支の黒字)」という特殊な状態を維持してきた。資本収支黒字の裏側には外貨準備の増加があり、つまり米国債の保有額が増加していた。資本収支の黒字(対外負債増加)の中での米国債購入は、実質的には米国から借金して、米国債を購入したのと同じことである。

 ここで余学部委員が言う「資本収支」は、IMFの国際収支マニュアル(5版)の、「経常収支+資本収支+外貨準備増減+誤差脱漏=0」に対応するものです。

 「双子の黒字(経常収支と資本収支の黒字)」の中国は、「外貨準備増減」がマイナスになります。一見、中国が保有する外貨準備が減るように思えますがそうではありません。外貨準備の「増減」がマイナスの場合、外貨準備の「残高」は増大する、という定義になっているのです。双子の黒字によって、中国の外貨準備残高は膨らみ、それを米国債で保有(運用)してきた、と余氏は言っているわけです。

 日本の財務省は2014年1月、2008年のIMFの国際収支マニュアル(6版)に準拠する形で国際収支関連統計の見直しを行い、資本収支という言葉を止め、この中に含まれていた投資収支と外貨準備増減を統合して金融収支とし、現在は「経常収支+資本移転等収支-金融収支+誤差脱漏=0」という関係となっています。また、金融収支(外貨準備を含む)の黒字は対外純資産の増加を表すように、直感に合った定義に改められました。

 ところが、中国の国際収支統計では金融収支の符号が逆に表示されているため、現在でも、金融収支黒字は資本の流入超過(対外純資産減少)、金融収支赤字は資本の流出超過(対外純資産増加)を表わしています。

 第三は、クルーグマンの論点である。

 対外投資能力の不足のため、中国の対外資産は主に米国債である。リーマン・ショックの前から米ドルは減価し始め、ドルの実効為替レートは120台から70台まで大幅に下落した。ドルが減価すれば、保有する米国債に為替差損が発生する。となると、中国の対外資産は深刻な損失に見舞われる可能性がある。そのため、一時的にドル資産の減価の可能性が中国政府の懸念事項となった。

 米国債を引き続き保有すれば値下がりリスクがある。しかし、米国債を売却するにしても、中国は巨額の米国債を保有しているため、一気に市場で売却すれば米国債の暴落を招く恐れがある。プリンストン大学のポール・クルーグマン氏は、こうしたジレンマに陥った中国を嘲笑した。誰かに米国債を買わされたわけでもなく、中国は自ら進んで「ドルの罠」に飛び込んだのだと。現在のところ、中国の懸念は顕在化していないが、今後もずっと無事だとは誰も保証できない。

 第四は、ハウスマンの論点である。

 ハーバード大学のリカルド・ハウスマン氏は、米国は世界最大の対外債務国だが、所得収支が長年黒字である点に注目している。

 債務国であるはずの米国は、しかし、国際収支上は利息を支払うどころか、受け取っているのである。なぜこのようなことが起きているのか。

 ハウスマン氏の見解によれば、その背景には米国の「ダークマター(暗黒物質、訳者注:ブランド力など統計上対外資産に含まれない無形資産が米国の直接投資の収益力を高めているという仮説。異論もある)」の輸出があるという。

 中国の状況は、ちょうど米国と対照的であり、約20年の「双子の黒字」を通じて、2011年までに中国は米国債を中心とする約5兆ドルの対外資産と、約3兆ドルの対外負債を蓄積した。つまり、中国は2兆ドルの対外純資産を累積した。

 内外の収益率格差を3%とすれば、2011年の中国の所得収支は600億ドル近くの黒字に達してもおかしくないが、実際の所得収支は702億ドルもの赤字であった。この状況はいまだに根本的に変化していない。つまり、中国は米国のダークマターを輸入し続けているわけである。

 米国は莫大な対外債務を抱えながら、配当や金利収入など所得収支はプラス。つまり「低利で借りて高利で運用」していることになります。米国への投資がそれだけ安全かつ魅力的であり、同時に、米国の対外投資が、企業ブランドなどの、定量的に説明できない価値(=ダークマター)の効果で、高い収益を得ているということだとハウフマン氏は分析しており、それを敷衍して「一方で中国は、海外からの投資に高利を支払い、低利回りの米国債で運用しているという、まったくの逆の状況にある」と分析しています。

所得収支赤字の背景

 長期にわたり中国は資本を輸出し続けてきた。その結果、対外純資産は拡大したが、所得収支はマイナスである。これはなぜだろうか。

 対外純資産とは、対外資産から対外負債を引いたものである。中国には資産だけでなく、負債もある。主な対外資産は米国債であり、主な対外負債は対内直接投資(編注:中国への海外企業などからの投資)である。対内直接投資は外国資本が行うため、十分なメリットがあってこそ投資を引付けられる。外国資本は利益を追い求めるため、それなりのリターンが期待できなければ投資しないのである。したがって、当初は特別な優遇政策の実施が必要だった。

 また制度上の問題もある。例えば、各省政府は外国資本を誘導するために互いに競争している。つい最近まで、地方政府の外資誘致には目標値まで設定されていた。地方政府が外資誘致を行う場合、経済的コストを考慮する必要はないという誤った認識を持ち、経済性を度外視して外資さえ誘致すれば自らの業績になるとしたことから、外資誘致のコストは急上昇してしまった。

 2008年にコンファレンスボードは、中国に進出した米系企業を対象に、投資収益率に関するアンケート調査を行った。それによれば、平均収益率は33%という結果であった。それとほぼ同時に、世界銀行のエコノミストが中国に進出した2万社以上の企業(欧州企業と日本企業を含む)を対象に調査したところ、22%の平均収益率という結果であった。では、2008年に中国が保有する米国債の収益率はどれぐらいであっただろうか? 恐らく3%未満であったはずだ。

 ダークマターの輸入の他、近年、中国では資産消失という現象が生じている。数十年にわたる資本の純輸出を経て、中国は約2兆ドルの対外純資産を累積した。一方、2011年~2016年の中国の累積経常収支黒字は1兆2800億ドルであった。理論的に言えば、経常収支黒字の累積額は、対外純資産の増加に相当しなければならない。したがって、2011年~2016年の中国の対外純資産も1兆2800億ドル増えたはずだ。

 しかし、実際の統計データを見ると、この期間中、中国の対外純資産は増加するどころか、124億ドルも減少したのである。では、資産はどこに消えたのだろうか?

 対外資産に対する再評価、統計基準の見直し、誤差・脱漏などを根拠に、対外純資産の変化の理論値と公式統計との間に存在する巨大な差異を説明することは難しい。

構造調整を急ぐ中国

 リーマン・ショック後、中国は国際収支構造に対する調整を急いだ。

 第一に、国内改革とマクロ経済政策を通じて、国内貯蓄と国内投資の差額を縮小してきた。第二に、2005年~2015年の10年間に人民元の対ドルレートは35%切り上がったが、実効為替レートの増価率はさらに大きなものであった。

 第三に、中国政府は2009年から人民元の国際化と資本取引の自由化を促し始めたため、対外直接投資が急速に拡大した。第四に、「一帯一路」政策が中国の対外投資ブームを推し進めており、今後もその流れが続くと考えられる。第五に、2016年から国境を越えたホットマネーの移動規制を強化している。この政策は中国資本の海外進出に対して、短期的には悪影響を及ぼしたが、キャピタルフライトを規制することにより、中国の対外投資の持続的な成長に貢献することができる。

 第六に、現在の金融規制の強化により、国内の金融リスクは低下し、規制アービトラージが生き残る余地は圧迫されることになるだろう。それにより、ホットマネーの移動を抑制し、クロスボーダー取引の長期的安定性を保つことができる。

 これらの一連の措置により、中国の経常収支黒字の対GDP比は、2007年の約12%から現在の3%程度に低下した。同時に、中国の所得収支赤字も改善されつつあるようだ。近い将来、中国の国際収支構造はさらに望ましい姿になるだろう。

 リーマン・ショックによる信用収縮を受けて、中国政府は、海外からの高利の投資による産業育成から、国内の貯蓄などに資金源を切り替えようと図ってきました。また、米国債に限らず、海外企業やインフラなどへの投資も行うよう制度を改正し、アングラマネーの撲滅にも乗り出しています。

 中国への対外直接投資はリーマンショック後、一時落ち込みましたが、その後急速に回復し、2014年から現在までは減少傾向にあります。

 同時に中国企業は高いリターンを狙い外国企業の買収を積極化させていますが、人民元の安定化を図りたい中国政府が資本流出の抑制に乗り出し、対外直接投資を規制するなど、今後の展開が注目されています。

構造問題の打開に向けて

 これまでの中国の国際収支と対外純資産の構造の調整は道半ばであり、構造改革と政策調整の推進が喫緊の課題である。打開策として、次の7点を挙げる。

  1. 人民元為替相場制度の改革を加速させる。人民元レートは依然として柔軟性に欠けている。柔軟性の不足は、中国の国際収支構造の改善にとって大きな妨げとなる。
  2. 財産権保護制度を整備する。財産権がはっきりしており、権利と責任が明確で、厳格な保護体制を有し、スムーズに浸透させられる現代的財産権制度を整備しなければならない。
  3. 金融市場の発展を加速させ、市場メカニズムを健全に反映するように国債のイールドカーブを形成させ、金融商品の合理的な価格決定に取り組む。
  4. クロスボーダーの資本移動の管理にさらに取り組む。資本取引における人民元国際化への基本的方針を堅持すると同時に、法制度を強化し、キャピタルフライトやあらゆるマネーロンダリングを断じて取り締まる。
  5. 金融サービス業をさらに開放的なものにし、競争を導入して金融リソースの配分を改善する。
  6. 海外資産(とりわけ国有企業の海外資産)に対する監査と海外M&Aリスクのコントロールを強化する。
  7. 国際収支の各項目に対する統計作業を改善し、誤差・脱漏項目の金額をできる限り減らし、事実に合った情報をきちんと把握する。

 中国は現在、速いスピードで高齢化社会に入りつつある。「未富先老」(豊かになる前に高齢化社会を迎える)の局面に直面する中国は、国際収支と対外純資産の構造調整を加速させ、未成熟な債権国から、成熟した債権国へ成長するためのしっかりとした準備作業を速やかに行わなければならない時期が来ている。

 中国が巨額の外貨準備を保有し、多くを米国債で運用するのは、人民元の変動をコントロールしてきたことによる当然の帰結です。この論文で中国の著名な経済学者である余永定氏が指摘するように、「高金利で海外から借りた資本を低金利の米国債で運用する」体質や、統計の不備など、中国が将来的に未成熟な債権国から、成熟した債権国に移行するには、まだ数多くの政策課題が残されています。

■変更履歴
記事掲載当初、CASSについて本文中で「参加の研究所は31、研究センターが45、所属する研究者は3200人」としていましたが、正しくは「参加の研究所は39、研究センターが100以上、所属する研究者は4000人」です。また「中国の『五カ年計画』策定の基本作業もここが行っているのです」は「ここが参加しているのです。」でした。お詫びして訂正します。本文は修正済みです [2017/12/21 17:00]
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