年末年始の特別企画として、日経ビジネスオンラインの人気連載陣や記者に、それぞれの専門分野について2018年を予測してもらいました。はたして2018年はどんな年になるのでしょうか?

(「2018年を読む」記事一覧はこちらから)

 皆様、明けましておめでとうございます。
 吉例でもありますので、世相を映す「いろは歌留多」を考案いたしました。

 思い返せば、歌留多の制作は今回で6回目になります。

 こういう仕事は、前例踏襲を錦の御旗に、とにかく伝統を絶やさないことだけを目指して頑張るのが日本人の心意気であると考えている次第です。

 読者の皆様には、どうかネタかぶりの苦しさをお汲み取りいただきつつ、お屠蘇気分でのご笑覧をお願いいたします。
 それではみなさんの2018年が、よい年になりますように。

【い】急がば仲間割れ
知ってますか奥さん、党改革を急ぎ過ぎた結果、仲間割れで消滅寸前になっている政党があるらしいですよ。

【ろ】ローンより証拠金
ちまちまローンを返済する人生より、いっそ証拠金を積んでFXで一発当てに行くのが男だ……と、そう考えていた時期がオレにもありました。

【は】掃き溜めにツルゲーネフ
「初恋」は、掃き溜めの中で暮らしていたからこその錯乱で、大人になった時点から振り返ってみれば、実にバカなエピソードです。とはいえ、実らなかった初恋に匹敵する切実な感情は、一生涯見つけられなかったりもするわけで、なんというのか新年早々あたしは切ないです。

【に】二度あることはサドンデス
発作とか発病とか入院みたいな分野のお話で、なんとか無事なのは二度目までです。三度目になると、かなりの高確率でサドンデスが待ってます。まあ、年寄りの噂話ですが。

【ほ】骨折り損のサービス残業
サービス残業って、みんなで足並み揃えて不幸になるという意味で、無理心中に似ている気がします。

【へ】弁慶の泣き落とし
マッチョなタレントや政治家に限ってやたらと人前で泣くわけでね。

【と】トランプの威を借る人にぶらさがり
「いくらなんでもバノンはまずい」と、下の句を付けてくれた仲間がいるのに、嬉々としてツーショットにおさまってる政治家の先生がいて、なんだか悲しかったことでした。

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【ち】知事もツボればヤバくなる
排除だの何だのと調子ぶっこいて高ぶっているうちに、いつしかドツボにハマって知事困るってな状態に陥っていたわけで、まことに政治の世界は諸行無常であります。

【り】両手にファナティック
左右を日本会議と神道政治連盟で固めている気分は、もう無敵なんでしょうね。

【ぬ】糠にクッキー
漬からないとか使えないとか言う前に、すごくマズいんじゃないかと思います。

【る】ルイルイは友を呼ばず
噂では、えらい亭主関白ぶりだったんだそうで、そりゃ奥さんだって家庭の外に救いを求めたくなるだろうし、友達だって集まらないと思うぞ。

【を】をんな心とアッキーの空
どこかでどこかでエンジェルが 覗いていたって知らん顔 あはれ今年のアッキーもいぬめり

【わ】渡る女衒は鬼ばかり
セクハラ上司に女友達を紹介するのってやっぱりセクハラなんですかね?

【か】勝って株屋の株を買う
株価が上がってる時に一番儲かってるのは、実は証券会社なのだそうですね。

【よ】弱り目にアタリメ
残業で疲れて帰宅して、やっとのことでありついた晩酌のツマミが干したスルメイカだけでしたみたいな時は、インスタグラムやフェイスブックより、やっぱりツイッターだと思います。

【た】旅の恥は書き入れ時
京都の人出とか、もう限界超えてると思うんだけど、それでもなお観光客を呼び込みたいものなんですかね。

【れ】歴史はぶり返す
カタいと思われていた定説がある日いきなりひっくり返ったり、無事に片付けたつもりでいる交渉事を先方が突然蒸し返してきたりで、なんというのか、歴史は慢性疾患の症状みたいにぶり返しつづけるもののようですね。

【そ】袖の下の力持ち
いいか息子よ、腕力とか知力とか魅力とか実行力とかじゃなくて、袖の下のチカラでハナシをまとめちゃうのが一番の力持ちなのだぞ。

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【つ】妻を憎んで使途を憎まず
高価なブランド物を憎むことも、それを買った妻の心根を憎むことも、ともに間違った態度です。一事が万事ジバンシー。憎むのなら、まずなによりも妻の散財の費消先になれなかった自分の魅力の無さを憎むべきです。人生は辛抱です。

【ね】猫に地盤看板カバン
まあ、猫の子でも犬の子でもトンビの子でも、議員の子でさえあればなんとか当選してしまうのがうちの国の選挙制度の奥ゆかしさなわけでして。

【な】長いものにはマクロン
フランスの若大将もああ見えて富裕層の突き上げにはからっきし弱いという噂を聞きました。

【ら】来年の話をすると膝が笑う
来年の話をすると鬼ですら思わずもらい泣きをしてしまうというのがわれら出版業界の現状であるわけですが、より厳しい景況感に苦しむ界隈では、来年の話をすると、恐ろしさでヒザがガクガク震えだすのだそうです。こわいですね。

【む】ムカデの靴下
数が多いばかりで価値が低いことのたとえ。具体的には都民ファーストの会を指す言葉らしい。

【う】売り言葉に戒厳令
キムさんとかやりかねないと思う。

【ゐ】一事がバンジージャンプ
ひとたび冒険主義に舵を切ったがさいご、後戻りはむずかしいということなのでしょうね。大阪都構想とか、カジノ誘致とか、万博誘致とか。

【の】能ある貴乃花は詰めがどうなんだ?
私はこの人の認知の歪みを心配しています。

【お】同じ穴の無地ネクタイ
ファッション感覚に自信の無いおっさんが、なにかと無難な無地のネクタイを選びがちなのは致し方のないところなんだけど、それはそれとして、パーティーとかでそういうおっさんが一堂に会してしまうと、なんだかお互いにきまりが悪いものですよね。

【く】腐ってもタイガーウッズ
時々すごいタマ打つよね。そういう意味でオザーさんにも期待してます。

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【や】安かろう悪かろうなら倍返し
別に安倍さんの悪口じゃないです。ホントです。

【ま】負け犬の倒木
そういえば「世界一のクリスマスツリー」ってその後どうなったんでしょうか。

【け】喧嘩両棲類
たぶん山椒魚戦争のことですね。

【ふ】夫婦喧嘩は犬も食わない
でもバイキングは食うんだよね。

【こ】拘引矢の如し
籠池夫妻の逮捕拘引劇は、そりゃあもう電光石火の早わざだったけど、いったん勾留してしまうと展開から何からが急減速するものなんだね。

【え】絵に描いた持ち株会社
投資詐欺の定番の手口です。もしかして日銀のETF買いなんかも似た話なのかもしれません。

【て】天井転嫁唯我独尊
選挙で負けた原因を鉄の天井に転嫁した党首がいましたが、非を認められないどころか、自らの全能を疑うことすらできない性格なのでしょうね。

【あ】新しい血が古市
若手を起用しました感を演出しつつも、番組内容はあくまでも保守一辺倒だったりします。

【さ】さわらぬフェミにたたりなし
めんどうくさい人たちには関わらないという、実に単純な話です。ところが、このシンプルな境地に到達するまでに、われわれは、何十年もの人生を空費せねばならぬのです。

【き】来た来た北の期待の一発
政権の支持率を下支えしていたのは、実のところ北からやってくるミサイルでした。

【ゆ】夢のリニアのリアルな悪夢
例によって談合だの受注調整だのの話が出てきてるみたいです。夢見る頃を過ぎて久しい日本経済が追いかけた夢は、結局悪夢だったのでしょうかね。

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【め】目の上のタコ部屋
ちょっと前までは就活生の誰もが憧れる優良企業だった電通が、いつの間にやら高級タコ部屋組織みたいな評価に落ち着いている姿にこの世の無常を感じる今日このごろです。

【み】身成るほど神戸をタラす異な男
神戸市をタラしこんで鎮魂でひと商売たくらんだ悪党がいたのだそうですね。

【し】シンゾウは ハイよりノーがイカンゾウ
けっかんばかりハラワタは無し。

【ゑ】円の下の力持ち
円安誘導の官製相場で高走ってるだけで、本当はチカラなんか無いんです。

【ひ】人のふり見て振り込め詐欺
JALが振り込め詐欺で3.8億円騙し取られたのだそうですが、横並びの前例踏襲で適当にやっつけている業務のどこかに、デカいANAがあったということなのでしょうね。

【も】元のタモガミ
この人は、防空識別圏の話みたいな、かつての専門分野の話をしている限りはマトモな人です。だけど、一般的な政治や外交の話をすると…誰であれ専門分野の外に出れば素人だという当たり前なことを教えてくれているという意味で貴重な人だと思います。

【せ】背に腹はセクハラです
これだから満員電車ってイヤなんだよね。

【す】捨てるゴミあれば拾う趣味あり
マニアの情熱というのは、門外漢にはおよそ計り知れないもので、一般人にとってはゴミでしかないものに執着している人たちのその情熱こそがクールジャパンをドライブさせているものの実体なので、少々キモいぐらいのことは大目に見てあげましょうね。

【ん】んんんー苦しかった
さすがに来年は無理だと思います。

(文・イラスト/小田嶋 隆)
【京】今日中に原稿頂けないと田舎に帰れません
小田嶋さん急かしてごめんなさい。2019年もどうぞよろしく

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

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 「米国第一主義」を貫くトランプ政権、BREXITに揺れる欧州、北朝鮮の度重なる挑発、中国・習近平の権力増長…。世界が、そして時代が大きなうねりの中で、変わろうとしている。

 日本を見ても、安倍政権は不安定要素を抱え、2020東京五輪まで本格カウントダウンを始めても東京の未来図は不透明なままだ。

 先が見えない時代だからこそ、未来に関する多様な”シナリオ”を知り、そして備えることが重要になる。

 日本の未来は、世界の未来はどうなるのか。あらゆるビジネスパーソンの疑問に、No.1経済誌「日経ビジネス」が丸ごと答えます。

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この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。フォローすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。