現在、100m走、200m走、400m走のスタートには、スターティングブロックを使用します。スターティングブロックとは、クラウチングスタートの姿勢をとる際、足が滑らないように止めるための機器であり、前後の脚を置く位置や角度を細かく調整できます。日本では第2次世界大戦後の1945年に初めて使用されました。戦前にはスターティングブロックは存在せず(図1)、レーン横に小さなスコップがあり、競技者が足の位置に合わせて自分で穴を掘っていたそうです。

図1 スターティングブロックが存在しなかった時期のスタート風景
図1 スターティングブロックが存在しなかった時期のスタート風景
日本陸上競技連盟編集「陸上競技」第10巻第6号(1937年)から
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 1972年のミュンヘン五輪からは、このスターティングブロックに反応時間を見るシステムが組み込まれ、不正出発を判断する機器としての役割も担っています。選手の両足で蹴られた瞬間をこの機器が検出します。スイスOmega社が開発したものが、オリンピックではよく使われます。

 選手が足を置くフットプレートは、圧力センサーにつながっています(図2)。当初開発された装置では、この圧力センサーで得られる圧力が、あらかじめ設定した値以上になったら出発したと判断する方式でした。

図2 スターティングブロックの構造
図2 スターティングブロックの構造
フットプレートが圧力センサーにつながっており、フットプレートが受ける力を検知する。元図版出所:野﨑忠信、横倉三郎ら「陸上競技における不正出発発見装置の問題点」図1(作図は横倉三郎明星大学教授)、明星大学研究紀要ー情報学部ー第1号、1993年3月25日、全国陸上競技スターター研究会会報「よーいドン」第34号所収
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