世界最速のペースで少子高齢化が進む日本では、高度成長期に作った社会保障制度や雇用制度などのシステムが破綻寸前だ。それでも、政治家は大票田の高齢者を優遇し、改革は遅々として進まない。若者は「高齢者は恵まれすぎている」と不満を募らせ、世代間の分断が加速する危険性は増している。いわゆる「シルバー民主主義」を打破しなければ、ニッポンの未来は危うい。

 このような問題意識のもと、日経ビジネスオンラインでは「シルバー民主主義の克服」をテーマにした関連記事を連載してきた。各記事には賛否両論、たくさんのコメントが寄せられている。記事だけでなく、そちらもご覧いただきたい。

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 連載4回目は、今年4月に憲法改正私案を公表し、人生前半の社会保障の充実を訴える民進党の細野豪志氏のインタビューをお届けする。

(聞き手は坂田 亮太郎)

憲法改正私案を公表してから、どのような反応がありましたか。

<b>細野豪志(ほその・ごうし)氏</b><br />1971年8月、滋賀県生まれ。京都大学法学部卒業。三和総合研究所研究員(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て2000年に衆院議員初当選。静岡県第5区で当選6回。環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力発電所事故再発防止・収束)、総理大臣補佐官、民主党幹事長、政調会長などを歴任(写真:的野 弘路、以下同)
細野豪志(ほその・ごうし)氏
1971年8月、滋賀県生まれ。京都大学法学部卒業。三和総合研究所研究員(現三菱UFJリサーチ&コンサルティング)を経て2000年に衆院議員初当選。静岡県第5区で当選6回。環境大臣、内閣府特命担当大臣(原子力発電所事故再発防止・収束)、総理大臣補佐官、民主党幹事長、政調会長などを歴任(写真:的野 弘路、以下同)

細野:私の講演会に来てくださる方々は、民進党の支持者ということもあるんでしょうが、憲法改正についてはかなり慎重な考えの人が多いんです。ただ、例えば20分なり、30分なり私が説明をした後に、憲法をこのように改正したらどうでしょうかと伺うと、「反対」という人は基本的にいませんでした。

 憲法改正をめぐる議論はこれまで、やや保守的な、自民党的な改憲草案というものが具体的に提案されていた一方で、立憲主義的改正案というのは意外とあんまりないんですね。ですから今回、私が私案として提案をすることによって、議論が具体的に動きだすんじゃないかという期待は持っています。

民進党内では、代表代行という立場にあった細野さんが私案を公表したことに、ずいぶんと批判が集まりました。
編集部注:細野氏が4月10日に憲法改正私案を発表した直後から「党の方針と異なる」と批判が相次いだことから、細野氏は「執行部の憲法改正に関する姿勢に不満がある」として民進党代表代行を4月13日に辞任した)

細野:憲法改正について、私はずっと自分の考えを述べて参りました。(民進党の)役員会でも何度も言ってきたし、民進党内には憲法調査会という会議があるんですが、そこもできる限り出席して、自分の考え方は発言してきているんです。

 それだけではありません。国会に憲法審査会があります。ここは自由討議が認められていまして、政府に質問するだけじゃなくて、(与野党)双方がいろいろな意見を言い合う形になるので、そこでもかなり具体的な提案をしてきています。ですから、憲法改正の提案そのものにそれほど驚きはない、と思うんですね。

あとはタイミングですか。驚かれたのは。

細野:どうでしょうかね。今年(2017年)は日本国憲法が施行されてから70年ですよね。あとは(5月3日の)憲法記念日の前に、このタイミングで自分の考えを表明できたことはよかったと、思っています。

 憲法改正私案を発表することは、数年前から構想があって、去年の夏ごろからは具体的に項目の絞り込みも含めて自分の中で整理してきました。仲間と議論を始めたのは今年に入ってからなんですけどね。

この私案の実現に向けてどう行動に移していくかということに関しては、どのようにお考えになっていますか。

細野:民進党の支持者の中でも、この種の議論が活性化してくるのは非常に重要だなと思っていただける人はいると思うんですね。やっぱり「憲法改正イコール9条改正」という自民党、さらには安倍政権の考えにつなげて見てしまう人が多い。でも改正すべき項目は9条だけじゃないよという議論が、国民全体に広がってくることが、まず重要でしょうね。

中身に関して、教育の無償化を憲法の中に明記する意図は何ですか。

細野:教育の無償化は(最高法規である)憲法ではなく、法律でもできるんじゃないかという議論があります。もちろんできますし、民進党は実際に提案もしていますので、それはいいことだと思います。

 ただ、法律というのは2つ問題があります。1つは政権が代われば元に戻ってしまう可能性があること。実際、民主党政権時に始めた高校の無償化は自民党政権下で所得制限がかけられてしまいました。これは残念ながら逆行した部分です。

 もう1つは、あらゆる政策課題がある中で、時の政権は優先順位を付けざるを得ないということ。教育が大事であるということに異を唱える人はいません。ただ、今のようにシルバー民主主義の影響が強い状況では、「高齢者向けの社会保障を充実させよ」という声がどうしても大きくなる。(公共事業予算を増やすため)国土を強靱化せよという意見も根強い。そうなると、教育予算を優先的に配分するということにはなかなかなりません。

「21世紀型の教育を受ける権利」を

政権ごとに重視する政策は異なる、と。

細野:そうです。ただ、憲法改正となるとまさに国民合意ですから。教育の無償化を憲法に書き込むことができれば、国として子供の教育に責任を持つということになる。そうすればこれまでとは次元が異なり、最優先に財政的な資源を投入するということになるでしょう。これまでとは、意味合いが全然違うんですね。

 「教育や子育ては家庭の責任だ」という考えは国民の中、とりわけ国会の中には根強くあります。これは一般論としては分かるんです。ただ、私が見てきた若い世代の状況、さらには子供たちの環境というのは、そんなことを言っていたら手遅れになるぐらい深刻です。

 貧困にあえぐ子供たちが置かれた状況を考えると、民進党の中で「憲法改正は必要ない」という議論は、私にはやや不十分だと思います。

 おじいちゃん、おばあちゃんにお金があって、お父さん、お母さんが充実した教育をちゃんと与えることができる家庭の子はいいんですよ。ただ、残念ながらそういう恵まれた家庭というのは今、相当少なくなってきていて、多くの家庭はやっぱり社会の助けを必要としている。

格差の固定化は避けなければならない。

 ですから、子供の教育は社会の責任であるいうことを明確にした方がいいと思うんですよ。「21世紀型の教育を受ける権利」を憲法の条文に書いたのも、それが理由です。

 憲法26条で義務教育の無償化が定められていますが、決まるまでには大きな議論がありました。当時のGHQは「初等教育のみ無償化で良い」という考えでしたが、帝国議会が初等教育(=小学校)だけでなく中学校まで無償にしました。戦争直後の日本は貧しく、財政的にも非常に厳しかった。でも中学までの教育を無償化したからこそ、戦後の人材が出てきた。

 ただ、今の70代の人で幼稚園に行っている人って3割ぐらいしかいないんですね。昔は、お金持ちしか幼稚園に行けなかった。私の世代(40代)はほとんど幼稚園に行っているけど、それでも1割か2割は幼稚園も保育園も通っていない子供たちがいる。

それも貧困が原因ですか?

細野:それもあるし、幼児教育に対する関心の低さもあったと思います。ところが今、幼稚園にも保育園にも行かない子ってほとんどいないでしょう。

 既に無料となっている小学校や中学校に比べて、幼稚園や保育園に子供を通わせている親は若く、相対的に所得が低い。にもかかわらず、幼稚園や保育園は有料です。貧しい世帯の教育費がかかっている。だからこそ、21世紀型の教育を受ける権利を憲法に明記する必要があると考えたのです。

高校以上の無償化について、どのような考えですか。

細野:高等教育(大学や専門学校)についても相当議論しました。中等教育(高校)までの無償化は当然として、大学や専門学校は今、社会でも本当に重要ですから、無償化も考えたんです。

 ただ、うちの地元(静岡県)では自動車産業が盛んで、工業高校卒の優秀な若者ってものすごく大事にされているんですよ。そういう人たちが中堅となり、技術を継承していく。彼ら・彼女らは18歳で納税者になるから、その人たちと大学進学者との公平性をどう取るか。

 あとは、やっぱり大学のレベルも考えないといけない。子供の数が少なくなっているから、誰でも望めば大学に入れる「全入時代」となり、学費をすべて免除してしまうと大学側に甘えが出てくる。それはよくない。ですから高等教育については無償とはせず、「国はその教育環境の整備に努めなければならない」としました。憲法にこう書いておけば、これが根拠となって給付型奨学金の充実につながるからです。

細野:親の所得が低いので高等教育を受けられない子供がいる。こうした状況を何とか変えていかなければなりません。うちの事務所を手伝っている若者で、東大の数学科に進学した子がいます。実は彼の実家は、生活保護を受けている家庭だったんです。

 生活保護家庭というのは、その世帯としては子供を大学にやっちゃいけないんですよ。なぜかというと、世帯に生活保護費が出ているんだから、18歳になったら働いてくださいというルールになっている。でも高校を出て、それで働いて得られる所得と、能力のある子が大学に進学して、社会的に活躍したときに得られる所得は全然違う。納税額にしてもかなり増えることになる。

高卒者より大卒者の方が生涯賃金は多いことはデータでも示されています。つまり高等教育を受ければ1人当たりの納税額は増えるし、結婚の時期や子供の数とかも全然変わってくるはずですよね。それって、今の日本の課題である少子化対策につながります。

細野:そうなんですよ。生活保護家庭でも、世帯分離すれば子が大学に行けるんですけど、世帯分離すると親の生活保護費が減るんですね。例えば子が1年生の間だけでも生活保護家庭の中で大学に行かせれば、2年目ぐらいからアルバイトをしたり、お金を貯めたりできるようになる可能性は高い。

 その額は月に約6万円、年間で70万円なんですよ。わずかその金額、生活保護費をけちることによって、そういう子供が成長する、自立するチャンスを摘んでしまっているんじゃないかと。結局、それが貧困の連鎖につながっていることもあるので。

子供の教育は社会が責任を持つ

細野さんは教育の無償化に強い思い入れを感じるのですが、何か理由があるんですか。

細野:私は普通の中流家庭で育ったんですけど、大学の3年生のときに父親が会社を辞めまして。会社の方がだいぶ人を減らした際に、父親も思うところがあって退職しました。

 それで大学4年生のとき、大学の学費を無料にしてもらったんです。それはすごくありがたくて、ちょうど4年生の卒業の直前に阪神・淡路大震災があったんですよ。そのときにいろいろ自分で思うところがあって、2カ月間、現地にボランティアに励みました。それがきっかけで社会にも関心を持つようになったし、ひいては政治家になることにもつながったんです。

 なぜボランティアに行ったかというと、やっぱり「社会にチャンスをもらっている」という意識が強かったからです。同じように「自分はただで大学に行かせてもらえた」と多くの若者が思ってくれれば、成長したら今度は自分が社会に貢献する番だと思ってもらえるんじゃないか。教育というのはそういうものだと思うんですよね。

なるほど。恩を感じれば、社会に恩返ししたいという思いが出てくるということですか。

細野:そうだと思うんですね。先ほど話した東大の学生は、貧しい家庭の子供を対象に無料で勉強を教えています。自分と同じように貧しい環境の子供にチャンスを与えたいと思っているんですね。そのような好循環を少しでも起こすためにも、子供の教育は社会が責任を持った方がいい。それが、私の人生論です。

細野さんは議員になった頃からずっと、「人生前半の社会保障を充実しなきゃいけない」ということを一貫して訴えてきました。

細野:そうですね。ただ、始めは結構風当たりが強かった。街頭演説とかでそういう話をすると、反発はかなり厳しかったんですよ。何でかなと思って尋ねてみると、当時(2000年頃)の高齢者って昭和の一桁とか、場合によっては大正生まれの方が結構いらっしゃった。

 戦中、戦前世代ですから、その世代の人って若いときに塗炭の苦しみを経験されて、戦後も苦労して、ようやくちょっと落ち着いてきたという頃です。それが現在の70代だとちょうど私の親世代と重なり、大半は団塊の世代となる。この世代も苦労している時期はあるんですが、戦後は生活がわりと豊かになって、高度成長期も経験できた。要するに、非常に順風な人生を送っている人も多いんです。

 その世代が高齢者のマジョリティーになってきたことで、同じことを言っても受け止められ方が全然変わってきた。彼らは自分たちよりも子供の世代が貧しいことを知っているんです。ましてや孫の教育には非常に強い関心がある。だから自分たちが財を成したり、社会的地位を築いたりとなれば、それを還元しようという雰囲気が出てきたというのを、ここ数年、非常に強く感じますね。

 今の60代から70代ぐらいの皆さんは比較的豊かで、まだまだ元気です。人生100年の時代に入ってきたからこそ、その世代の皆さんにどうやって負担をしていただくか。若い世代に恩恵を及ぼすことができるように、ここ数年間が1つの大きな分かれ道だと思いますね。

冒頭、シルバー民主主義という話もありました。世代間の不公平感があったとしても、いざ選挙となると大票田である高齢者層におもねりたくなるというのが政治家の心情ではないですか。

世代ごとの人口(2015年国勢調査)と2016年参院選の投票率
世代ごとの人口(2015年国勢調査)と2016年参院選の投票率

細野:確かに数だけを見ると、今の60代から70代の人口は今の10代とか20代の倍近くいますよね。投票率も倍近くあるので、単純計算すると4倍影響力がある。その人たちから嫌われたら政治家を続けるのは結構きついだろうなと、直感的には思いますね。

 でも私は、有権者は今、政治家のうそを見抜くと思っています。「教育も充実させます」「高齢者の福祉も充実します」などと全部を言うような政治家は信用されませんよ。

年金の受給を辞退したら「死ぬ前に天皇陛下に会いたい」

財源はどうするんだ、となりますから。

細野:必ずなる。私はむしろ高齢者の皆さんにこの憲法の問題もそうなんだけど、教育とか子育てがいかに日本にとって大事なのか、そのことが社会全体の緊急課題なんだということをきちっと伝えた方がいいと思っています。

 ただ、負担の在り方みたいなものはちょっと注意が必要で、やっぱりこれまでの社会保障というのは権利とされてきたところがある。例えば若いときに年金保険料をたくさん払った人は、たくさん年金をもらえるわけですよ。これは権利だからそうなんだけど、年金というのはそういう意味では格差の是正には機能していないわけです。格差がそのまま反映される形になっている。そこの考え方を変える必要があるのではないでしょうか。

 つまり、社会保障というのは人生の保険的な機能なんだと。人生で努力して成功した人は本当におめでとうございますと。そういった方々には申し訳ないけど、やっぱりそれは保険としてはリスクが顕在化しなかったわけだから、少し我慢していただくと。一方で、頑張ったけれども厳しい老後を迎えている方については、きちっとサポートしていくという、その辺の発想の転換も必要だと思います。

子育て世代、若者への社会保障を厚くする分、高齢者の側もこれまで権利と思われてきたものを少し削る、もしくは放棄してもらう。そういう考えが必要になってくる、と。

細野:そうですね。ちょっと数字を調べてみると、65歳以上の高齢者で総資産が1億円以上の世帯がちょうど10%。4000万円以上の金融資産を持っている世帯が16%あります。これだけ裕福な高齢者がいる一方で、年金の受給を辞退している人は全国で800人ちょっとです(編集部注:日本年金機構によると厚生年金保険・国民年金の年金受給権者からの申し出によって、年金給付の支給停止件数は859件。2016年11月末現在)。

 お金を十分に持っているおじいちゃん、おばあちゃんさえも、貧乏な若者が支えている。極論を言えば、そうなります。

 私はここ数年、例えば地元のロータリークラブなど経済的に成功した方が集まるところで、「皆さん、年金を辞退してもらう可能性はありますか」と尋ねています。そもそも、年金を辞退できる制度そのものが知られていないというのはありますが、ものすごく冷ややかな雰囲気が漂うわけですよ。

「お前、なに言っているんだ?」と。

細野:そうそう。「俺はここまで頑張ってきたんだから年金をもらうのは当たり前だ」という雰囲気になるんです。ただ、講演が終わった後、懇親会とかで話をしていると、何人かが声を掛けてきて、「自分は財産が結構あるし、もう80歳だから、別に年金は要らないんだ」と打ち明けてくれる方もいます。

 実際、銀行口座に年金が振り込まれていても「1円も下ろしていない」という人は結構いて、そういう人が90代で亡くなると70代が相続する。要するに、上の世代だけでお金がグルグルと回っている。

 年金受給を辞退してくれる人がどうしたら増えるかという話をしていたら、ある年配の方は「天皇陛下に会いたい」と言うんですよ。死ぬ前に陛下に会いたいと。これは非常に興味深い指摘ではないでしょうか。文化勲章をもらうような偉い人でなくても、一般の自分でもお国に貢献したことを認めてほしいということでしょう。

 もちろん、叙勲の対象者があまりに大勢となると陛下のご負担になりますから、やり方はいろいろと考えなければならないでしょう。だけど、そういう名誉をしっかり差し上げることで年金の受給を辞退していただけるなら、社会にとってはものすごくいいことじゃないですか。

インセンティブがほしい、と。

細野:ちょうどその話をしていたら、別の高齢者が横から話に入ってきて「俺も年金を辞退するから、老人用のファストパスをくれ」とおっしゃるんです。ディズニーランドなどで並ばなくても施設に入れるファストパスがありますよね。あれをあらゆる施設で使えるようにしてほしいというのです。

 その人が言ったことは、高齢者の心理をズバリ言い当てていると思いました。老人は、金はあるけど時間がない。だから待つのが嫌なんだと。病院で待つのも嫌だ。美術館に行っても、落語に行っても、うまいレストランに行っても、必ず混むから行列ができる。老人は先が短いのだから、ある意味で人生のファストパスを与えてほしいというのです。

 だから年金の受給を辞退する見返りとして、「実利派」と「名誉派」みたいに選べるようにする。そういう意識が社会に広まることは良いことではないでしょうか。もちろん、経済的に厳しい方が、年金をもらうのが申し訳ないと感じるようではいかんのですよ。それは社会が、しっかりとサポートしないといけません。

「こども保険」より「子供国債」の方が筋はいい

子育て世代を支援するために、小泉進次郞氏ら自民党の若手議員が「こども保険」の創設を訴えています。

細野:そういう議論が出てくるのはいいと思うんです。やり方はいろいろありますよ、良い、悪いはあるんだけど。私は、筋がいいのは、どちらかというと子供国債の方じゃないかとは思っているんですけどね。

 高齢者で、自分は貯金がたくさんあるから、子供国債なら買ってもいいよという人はいるかもしれない。もしくは若い世代の保育料とか、奨学金とかなら出していいよという人はいるかもしれませんよね。でも、そのときは、利子はなくても相続税については少し優遇するとか、いろんな方法論があると思います。

前回の参院選挙から選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられましたが、若い世代の投票率はそれほど上がっていません。要因は何だと考えますか。

細野:自分たちに光が当たるという感覚がないのかもしれない。有権者が動くことで政治が動くって1つの理想の形なんだけど、やっぱり我々(議員)はプロなんだから、これを仕事としているわけだから、我々の側から問い掛けるべきじゃないかと思いますけどね。若い世代に対しても、高齢者に対しても、こういうことを今、政治がやろうとしていると、そのためにぜひ力を貸していただきたいと。それをまだまだあんまりやれていない。「投票率が低い」というのは、私は政治家の言うべきことじゃないと思いますけどね。

このままシルバー民主主義が是正されないと、若い世代の鬱憤が爆発してしまうんじゃないでしょうか。極端な話をすれば、世代間の対立が高まり「老人は早く死ね」みたいな危険な機運が醸成されてしまうのではないか、と。

細野:まあ、私はそこまでいかないと考えていますけど。この問題って、世代によってものすごくギャップがある。

 我々(40代)の世代は高齢者の負担に対して、まだ若干理解があるんですよ。なぜかというと自分の親の世代なんですね。私の親の場合、70代の後半ですけど、その世代がまさにこれからだから、自分が多少苦労しても支えていかなくちゃと理解できる。

 でも今の20代とか、30代って親も50代、60代です。だから、親世代も経済的に苦しい。自分たちはこんなに苦労しているのに、なんで高齢者を支えなきゃならないんだという理由の説明がつかないんですね。そういう世代がこれから、確実に増えてくる。

 なので議論の土台としては、世代間の社会保障の収支のバランスがどうなっているのかというのを直視した方がいいと思うんですね。所得の移転が世代間でどれくらいなされているのかを、包み隠さずきちっと表に出す。その上で、この負担をどう均等にしていきますかと議論することは必要でしょう。

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