生物は本能として「自分の遺伝子を可能な限り後世に残すこと」を最優先に行動する、と言われる。人間も生物である以上、どんな人も「愛」や「恋」、「モテるモテない」に全く無関心ではいられない。それどころか「モテたい」という感情が思春期前に芽生え、小学校時代、運動会の短距離走やリレーで活躍してモテる男子に羨望を覚えた男性の方が多数派なのではないだろうか。

 ただ、みんなに羨ましがられた「小学校時代にモテた男子」が、その後の人生でもモテ続けたかと言えば話は別。むしろ「小学校時代にモテた男子ほどその後“失速”し、子供の頃は普通あるいは冴えなかった男子に逆転を許すケースの方が多い」との印象を持つ人も少なくない。「『子供にモテる顔』と『大人にモテる顔』は違う」「モテるエネルギー(フェロモンのようなもの)は有限」…など、いくつかの仮説は立つが、帯に短し襷に長し。これはもう、専門家に聞きに行くしかない。モテるモテないは、「内外面の美」と強い相関があるはず。となると、適任者は、日本を代表する“美の探求者”以外に考えられない。高須クリニック院長、高須克弥氏だ。

 日本経済に深刻な影を落とす少子化は、経済誌が今、真正面から取り上げるべきテーマの1つ。「モテるモテないのメカニズム」の解明は、そんな日本の最重要課題を解決する一助になり得るとも考える。

聞き手は鈴木信行

<b>高須克弥(たかす・かつや)</b><br /> 1973年昭和大学医学部整形外科大学院卒業。1976年愛知県名古屋市にて高須クリニック開設。テレビなどのメディアを使って美容整形を一般に認知させた立役者(写真:古立康三)
高須克弥(たかす・かつや)
1973年昭和大学医学部整形外科大学院卒業。1976年愛知県名古屋市にて高須クリニック開設。テレビなどのメディアを使って美容整形を一般に認知させた立役者(写真:古立康三)

そういうわけで先生、小学校時代にモテた男子の末路について、将来どうなるかとか、そうなる理由について、教えてもらいに来たんですけど。

「色白で太っていたけどモテました」

高須院長(以下、高須):そういえば、僕も小学校の頃はやたらと女の子にチヤホヤされた、大事にされてモテにモテた記憶しかないんですよ。

え。小学校の頃にモテる男子と言えば、短距離走やリレーで活躍する運動神経のいい子だと思うんですけど、先生もそういう子だったんですか。

高須:いや、みんな真っ黒けに日焼けしてるのに僕だけ色白で、みんな引き締まった体をしてるのに僕だけ太っていました。

失礼ながら、それではモテないのでは…。

高須:それはモテるという意味を誤解されている。「モテるかどうか」というのは、運動神経などではなくて「可愛げがあるかないか」なんです。

 僕は愛知県の幡豆郡一色町(現在の西尾市)に生まれたんですが、農業や水産業が盛んなところで、周りはみんな農家や漁師の子供で、僕だけ医者の息子だったんですね。

 それで物凄くいじめられた。学校の先生も、そういうプチブルの色白のガキは敵だと認識して全然助けてくれない。教師はみんな■■■■■だから(笑)。

先生、これ日経ビジネス(笑)

高須:ウチに帰って婆ちゃんに言うと、そんな■■■■■教師なんて我が家の敵だから負けちゃダメだ、と(笑)。

先生(笑)。

高須:だから授業中もしょっちゅう手を挙げて「先生の言ってることは間違ってます」といつもやってました。そしたら先生も一緒になっていじめてくる。そうするとね、女の子たちが守ってくれるの。登校中にいじめられると僕を囲って学校まで連れて行ってくれたり。

いじめられていたからこそ可愛げがあって、それが母性本能をくすぐったと。

高須:絶対にそうだと思います。

モテるモテないを決めるのは「可愛げの有無」

でもやっぱり、先生は例外で、小学校時代にモテる子は足が速いとか運動能力が高い“強い子”のような気がしてならないんですが。

高須:いや、やっぱり可愛げですよ。「この子は私がついていなければどうなるか分からない」「私が守ってあげなきゃ」と思ってもらうこと。“強い子”には、「私はお呼びじゃないのね」となって寄ってこないと思いますよ。どんなに顔が綺麗で運動神経が良くても、可愛げがなくて寄って行きにくい人はモテません。

 これは別に小学生男子だけでなく大人の女性でもそう。声を掛けるのも怖いくらいの美女って意外と簡単に変な人に騙されるじゃないですか(笑)。

具体名は出さなくていいですからね(笑)。

高須:可愛げがすべてです。赤ちゃんは例外なくモテるでしょ。子犬も愛されますよ。大きくなった犬はあまり愛したくない。熊だって小熊だったら愛しますよ。でかくなったらそんなもの、愛するどころじゃないですよ。

食われますからね(笑)。

高須:野村克也さんがいつも長嶋茂雄さんばかりモテやがってって言うんですが、僕はなぜそうなるかよく分かるんです。

 ノムさんは本当に優秀な監督で、細かく計算して勝ちに行くでしょ。それで勝てるチームを作り上げるんだけど、これは可愛げがあるとは言えない。ノムさんは自分は「月見草」で、長嶋さんは「ひまわり」だと言うけどただのひまわりじゃない。ひまわりの上に可愛げが載ってるひまわりですから。ノムさんがポカばかりやって「てへっ」とやるタイプだったら、話が違っていたかもしれませんが。

それでは試合で負けます(笑)。

運動神経より可愛げがあった“モテ小学生男子”

高須:ノムさんは可哀想な星の下に生まれた人なの。必ず屑みたいなチームのところに行くの。それで一生懸命選手を育てて、優勝直前にクビになるの。それで後から来た人が優勝監督になる。

 ■■■■■っていつも怒っていますもん(笑)。可哀想な上に、女性にもモテないもんだから、■■■■■ころっと…。

はいっ、分かりました! 可愛げがいかに大事かよく分かりました! とすると、小学校時代にモテていた運動神経が良い男子は、運動神経が良い云々以上に、可愛げがあった、ということになりますか。

高須:そう、可愛げがある。とんまなところがある。

まあ、そう言われてみれば、子供の頃、走るのが速かったり野球が上手だった子って結構とんまだった気もしますから、そうかもしれません。「小学校の頃、モテる=運動神経がいい」というのは世間からの“すり込み”だったんですね。

高須:すり込みと言えば、僕もこのビジネスを始めた時、申し訳ないんだけど世間に「あること」をすり込んだんですよ。

 最初は開業しても全然流行らなかったから、「POPEYE」とかKKベストセラーズの「ザ・ベスト」とか、男性誌の広告のスポンサーになって、女性に対談をしてもらったの。女の子たちには「私が好みの男性のタイプ」を話してもらうんだけど、内容はどうでも良い、その代わり、「性格がいい人もいいし、顔やスタイルがよい人も好きだし、何でもいいけど、■■■■■だけは嫌い」って書いてくれと(笑)。その決め言葉だけ入れてくれたらタイアップすると。

先生(笑)。

高須:そしたら国民の間で「■■■■■だとモテないんだ」というすり込みができて、最大で1日300人の患者が来ました。

それまでにない事業を世の中に定着させていくには、すり込みのマーケティングが重要だという話ですね(笑)。

高須:それで財を成してあまりに稼ぐものですから、国税が来て僕、捕まっちゃったんですよ。1年間の医療停止。

 でも僕は何も悪いことをしたつもりはなくて、忙しすぎてお金の管理が全然できていなくて、気がついたらああいうことになってた。僕の罪は使用者責任。「納税者としての意識が欠けている」「必ず納税申告書は間違いないか確認して自分でサインしなければならない」って言われて。

それを怠ったと。

高須:でもね、僕がサインを書いて提出していたら罪があるのは分かりますよ。そんな書類、見たことがないんだもん。サインだって僕の字じゃないし。そうしたら「人に書かせて提出させた罪がある」と言われて。

 どうしても納得いかなくて最高裁まで10年戦ったんですけど、結局、負けました。国と戦って勝てる可能性は日本ではゼロなんだって。でも、もう一回、国を相手に戦いますけどね(笑)。

戦いますね(笑)。あれは先生、結構有利なんじゃないですか。

ここで突然、「例の裁判への戦略」

高須:いやいや、今度の方が難しいみたいですよ。代議士が国会内で発言した内容については罪を問わないと憲法にあるそうなんです。

それは厳しい。

高須:でも憲法で代議士は罪に問われないとあっても、その発言を許した党首や党、国はどうなのか。それから彼は公務員でもある。だから僕は勝つ可能性があると思っています。

 彼は「『イエス○○クリニック』と言ったが、『高須』とは言っていない。誤解だ」と言っていますが、それならば国民投票でも裁判員裁判でもいいけど、「イエス○○クリニック」と言えば、ここに何が入ると思うか国民の皆さんに聞いてみたいですよ。

それは高須って入ります(笑)

高須:彼らができるとしたら、「『イエス○○クリニック』と言っても必ず『高須』が入るとは限らない」という主張をすることです。そのためには「イエス何とかクリニック」というフレーズが日本のあちこちで定着していることが必要です。

 で、調べてみると、今のところはない。これから作られたら困ると思って「イエス高須クリニック」を商標登録に出しました。それに、商標登録が認められたら、国が「『イエス○○クリニック』というのは高須しかない」と認めたのと同じだからもう逃げ場はふさいだも同然です。

なるほど。

高須:憲法で守ると書いてあるのは代議士個人。でも国や党首、党にはそれこそ「使用者責任」がある。僕が国税との裁判でやられた手口を、そのままブーメランで国にお見舞いしてやるんです。

ブーメラン(笑)。

高須:でも裁判官はわりと、特に地裁は■■■■■が多いから、どうなるか分かりませんけどね。面倒くさいからもう最初から受け付けないとかね。

先生、だからこれ日経ビジネス(笑)。

【高須先生が考える「イエス○○クリニック」裁判の戦術】

①「イエス高須クリニック」を商標登録
⇒認められれば、国が「『イエス○○クリニック』というのは高須のみ」と認めたことに
⇒「『イエス○○クリニック』と言っても『高須』とは限らない」という主張は通らない

②憲法で守られるのは代議士個人
⇒でも、国や党、党首には「使用者責任」がある
⇒自分が国税との裁判でやられたことのブーメランを食らえ!

って、こんな表など作っている場合じゃありません! 先生、モテる話(笑)。

高須:そうだったね(笑)。

ならば、先生のその後はどうなった?

ならば、もう先生が「小学校時代にモテた男子」の代表としましょう。その末路を知りたいので、その後、先生がどうなったか、教えてください。

高須:それがねえ、思春期になってからは全然モテなくなっちゃって。子供の頃モテたでしょう。それで「可愛げ」がなくなったんだと思っています。

ほう、可愛げが、ですか…。

(見ての通り、取材としては大苦戦である。だがこの「可愛げ」というキーフレーズを再び聞いた時、聞き手は「この取材、案外、筋の通ったインタビューになる」との灯を見出しつつあった。後半へ続く)

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