NTTデータ、NEC、日立製作所など大手IT企業が「アジャイル開発手法」をシステム開発に適用するための取り組みを強化中だ()。同手法は開発対象を小さな機能に分割し、設計や実装、テストを1~2週間で繰り返す。仕様変更や機能追加に対応しやすいといった利点がある。

表●アジャイル開発手法の活用に向けた大手IT企業の主な取り組み
大型プロジェクトでアジャイル開発を活用するための施策を打ち出している
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 NTTデータは5月、入社3~5年めの若手を対象にアジャイル手法の研修を開始した。2013年3月までに300人に研修を実施、今後3年間で1000人の技術者育成を目指す。研修では、主要なアジャイル手法の一つである「スクラム」の講義や実践演習を提供する。

 NECは4月、アジャイル手法を全社展開するためのタスクフォースを部門横断で立ち上げた。11年末に社内で公開した「アジャイル開発ガイド」を基に導入効果を検証し、大規模開発に適用するための枠組みを検討する。並行して13年3月までに、大規模案件にアジャイル手法を適用できる技術者30人の育成を目指す。

 日立製作所は、COBOLやJavaで開発規模が100万ステップ超、あるいは開発期間が1年超のシステムを想定し、アジャイル開発のガイドラインを策定した。要件定義段階などで従来型のウォーターフォール開発の手順を基にしつつ、アジャイル手法の実践項目を組み込んでいる。

 米国では企業向けシステムの開発にアジャイル手法を利用する例が増えている。これに対し、日本で同手法を使っているのはWebサービスやゲームなど特定分野が多く、企業向けシステム開発での利用例はまだ少ない。だが、「システムを小さく早く立ち上げ、素早く修正しながら大きくしていきたいとするニーズは、企業規模を問わず高まっている。アジャイル開発体制の整備は不可欠」と、NTTデータの戸村元久プロジェクトマネジメント・イノベーションセンタ長は話す。

 こうした機運の高まりを受け、各社はアジャイル手法の採用により、主に大手顧客を対象に「新規事業を支えるシステムを早期に立ち上げたい」といったニーズに応えていく。一方で、アジャイル手法をウォーターフォール型開発手法と併用することで、「仕様変更でプロジェクトが遅延しやすい」といった弱点をカバーする狙いでも利用を促進していく考えだ。

 NTTデータは、ウォーターフォール手法とアジャイル手法の良いところ取りをする体制を整備済み。要件定義とリリース、テストはウォーターフォール開発で、実際の開発はスクラムに基づいて進める開発ガイドを09年から社内で展開している。