医師会は年輩開業医の集まりで、若い勤務医に無縁のもの─。そんなことをつい思いがちだが、ちょっと待ってほしい。実は地域の医師会には、若い医師にとって魅力的な、キャリアの支援制度やサービスが増えてきているのだ。意外と知られていない医師会の活動を紹介しよう。
「診療報酬改定の議論で、開業医の利益ばかり主張する団体」「会長選挙でやたらと盛り上がっている」「年配の医師が集まるサロン」─。医師会に対して、多くの若手医師はそんな“自分とは関係のない団体”だと考えているのではないだろうか。
だが、新聞などで頻繁に取り上げられるのは、日本医師会の動き。同じ医師会といっても、日医と地方の医師会では役割が異なる(表1)。
「多くの郡市区医師会では、各種の講演会の開催、健診・検診などの行政からの受託が主な業務です。中には、病院や看護学校を運営する医師会もあります」。こう語るのは、全国医師会事務局連絡会「しらぬい」で代表を務める、福山市医師会(広島県福山市)総務企画課長兼経理課長の土井貴博氏。土井氏が所属する福山市医師会では、ほかにも臨床検査センターを運営。民間では採算が取れない検査を引き受け、すぐに結果を知らせているという。
一方、都道府県医師会については、「県など行政との折衝のほか、郡市区医師会に等しく伝達する必要がある厚生労働省通知などの情報提供、医療事故への対応などを行っています」と土井氏は説明する。
入会の一番のメリットは医賠責
開業していれば、医師会に入るメリットは明白だ(図1)。予防接種や各種の健診・検診は医師会が窓口となって行政から受託し、会員であれば自院で実施できる。また、各保健所に入った、食中毒や感染症の発生情報などをいち早く知るには、医師会からファクスで届く速報が一番だ。
とはいえ、これらの点は、病院に勤務する医師個人にとって直接的なメリットになるとは言い難い。勤務医の入会のメリットとして土井氏ら複数の医師会関係者が挙げるのが、医事紛争への対応だ。