図1●音声品質評価ソリューション「VoicePinger」と同製品の音声品質評価オプションおよびドイツOPTICOMの音声品質評価・解析ソフト「PEXQ」使って測定
図1●音声品質評価ソリューション「VoicePinger」と同製品の音声品質評価オプションおよびドイツOPTICOMの音声品質評価・解析ソフト「PEXQ」使って測定
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 第3回となる今回は、米Microsoftの「Skype」、NHN Japanの「LINE」、ディー・エヌ・エー(DeNA)の「comm」の各無料通話サービスにおける音声品質がどの程度なのかを筆者が所属するGLEAN Corporationの音声品質評価ソリューション「VoicePinger」と同製品の音声品質評価オプションおよびドイツOPTICOMの音声品質評価・解析ソフト「PEXQ」を使い(図1)、音声品質の指標であるR値をITU-T P.863(POLQA)により求めます。

 なお、R値の説明およびIP電話の品質評価方法の詳細については、情報通信技術委員会(TTC、The Telecommunication Technology Committee)の「TTC標準JJ-201.01 IP電話の通話品質評価法」を参照して下さい。PDFはこちらからダウンロードできます。

 また、品質測定のガイドラインである、テレコムサービス協会 VoIP推進協議会の「IP電話の通話品質測定ガイドライン 第3版」(PDF)もあわせてご覧ください。

遅延測定について

 IP電話の通話品質を左右する要因の1つとして「遅延」があります。端末内部で発生する遅延(コーデック変換やパケット化、パケット組み立てなど)と、ネットワークで発生する遅延(伝送遅延)に分類できます。

 ネットワークの遅延に関しては、Wireshark上でRTCP(RTP Control Protocol)を解析することで遅延時間を求めることが可能です。ただし、この場合は往復遅延のみの測定となります。片方向遅延を測定するにはGPSやPTP(Precision Time Protocol)を利用したうえで、RTP(Real-time Transport Protocol)の送信時刻と受信時刻の差を求める必要があります。

 端末を含めた全体の遅延を測定する場合は、入り側の端末のマイク端子から、出側の端末のスピーカー出力間の遅延を測定する必要があります。なお、VoicePingerではこの方法で遅延を測定できますが、今回は以下の理由から遅延は測定しませんでした。

  • ネットワークで発生する遅延は、測定対象アプリケーションの機能と直接の関係がない。
  • 同じ端末を使用して測定するので、端末内部で発生する遅延は基本的に同じと見なせる。
  • SkypeとLINEの音声通話はピア・ツー・ピアだが、commはサーバー経由となっており、SkypeやLINEと比較してcommの伝送時間が長くなることから、commのR値は相対的に低くなると推測できる。

 こうした理由から、今回はR値のみを測定しました。