第1回 ペンギンカメラの衝撃

 水面に浮かぶ黒いドーム状の物体。その向うには、氷山が見える。

 南極? と想像がつくものの、それだけでは、何がどうなっているのか疑問符だらけの映像だ。

 黒い物体がふいに消えると泡がわきたち、いつの間にか水中が映し出されている。

 画面を紡錘形の物体が横切る。それにはしっかりと頭部と呼べるものがついており、顔つきは我々が動物園・水族館、そして写真集・映像などで見慣れたものだ。

 ペンギン好きなら一目で見分けるだろう。南極大陸で子育てをするアデリーペンギンだ。

(動画提供:国立極地研究所)

 まるでこちらを誘うように力強く羽ばたき前を進む。

──さあ一緒に漁場へ行こうぜ!
 そんなふうに言っているみたい。

 とすると……さきほど見えた、ドーム状物体も……ペンギンの体の一部に見えてくる。

(動画提供:国立極地研究所)

 実は、ペンギンの背中に超小型カメラを装着し(つまりペンギンにカメラマンになってもらい)撮影したものなのだ。南極の氷の下、人間は長時間潜水できないし、潜水艇を用いても、ペンギンは素早すぎて追い切れない。ならば、いっそ、小型カメラをくっつけてしまえ、という発想でものにした貴重な映像だ。

 それにしてもなんとダイナミックにペンギンは水中を「飛ぶ」ことか。陸上の愛嬌ある姿からは想像できないほど、素早くオキアミを追う様をみて、ぼくはめまいにも似た衝撃を受けたのだった。