講演するGEヘルスケア・ジャパンの大塚氏
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「ツーティア型」の概念図
「ツーティア型」の概念図
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  2011年6月15日、日経ビジネスオンラインが主催したセミナー「クラウド経営サミット」が東京都内で開催された。プログラムの一つとして、GEヘルスケア・ジャパン ヘルスケアIT本部 本部長の大塚孝之氏が「医療業界におけるクラウド活用」と題して講演、医療業界においてクラウド・コンピューティングの活用が進み始めた背景などについて述べた。

 大塚氏は、医療業界におけるクラウド活用の動きには、大きく二つの視点からの背景があると指摘した。すなわち、(1)医療現場からの視点、(2)医療行政からの視点、である。

 (1)の医療現場からの視点として、大塚氏はまず、日本の疾病構造が変化していることを挙げた。がんに罹患する人の割合は年々増えている一方、がんは致命的な疾患ではなくなってきており、さらに「がんの治癒率は向上してきている」(同氏)という現状を指摘した。がんの罹患後の生存率が高まる結果として、保管しておくべき患者の画像データが急激に増えているという。しかも、X線CT装置などの画像診断装置が高性能化しており、画像1枚当たりのデータ容量が大きくなってきている。このため、病院が自らの閉じたシステムでデータを保管し続けることは、サーバーの運用コストなどの面で難しくなっており、「結果、クラウドへと追い込まれていく」(同氏)とした。

 (2)の医療行政からの視点としては、2010年2月に出された厚生労働省 医政局・保険局 局長の通知が大きく影響していると指摘した。これは、「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正で、情報システムの安全管理のガイドラインなどが遵守されることを前提条件として、民間事業者による診療記録などの外部保存が可能になった。これまでは、震災対策などの危機管理上の目的に限り、民間事業者への外部保存が認められていたが、こうした限定がなくなった。これにより、クラウド活用の動きが活発になり始めているという。

 今後、医用画像データなどの保存にクラウドを活用する場合は、長期保管用データのみを外部に保存する、いわゆる「ツーティア型」が主流になると指摘した。利用頻度が高い直近の画像データなどは、病院内ネットワークの短期ストレージに、一方で、利用頻度が少ない過去のデータなどは長期ストレージにアーカイブとして保管するという仕組みである。

 GEヘルスケア・ジャパンは2011年3月、ソフトバンクテレコムと提携し、クラウドを利用した医用画像データのホスティング・サービスを始めると発表している(関連記事)。大塚氏は同サービスについても触れ、今後、さらなるクラウド化を推進していく考えを示した。