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BMJ誌から
乳癌死亡率の低下はマンモスクリーニングとは無関係
スクリーニング導入時期が異なる隣国間での比較

 欧州の先進国では、マンモグラフィーによるスクリーニングの普及とは無関係に乳癌死亡率が低下してきたことが、仏International Prevention Research InstituteのPhillppe Autier氏らの研究で明らかになった。論文は、BMJ誌2011年8月6日号に掲載された。

 先進国の多くで乳癌死亡が減少している。死亡率の低下には様々な要因がかかわるため、マンモグラフィーによるスクリーニングが果たした役割を観察研究やモデルを用いた分析によって明らかにすることは難しい。そこで著者らは、スクリーニング導入時期以外の条件がほぼ同様の隣り合う2国間で、乳癌死亡率の変化を比較することにした。

 欧州で、人口構造、社会経済環境、医療サービスの質が似通った隣り合う国々の中から、1990年頃から全国的なマンモグラフィースクリーニングを開始した国と、数年遅れでスクリーニングを開始していた国を選んでペアとした。ペアになったのは、以下の3組だ:英国北アイルランドとアイルランド共和国、スウェーデンとノルウェー、オランダとベルギー北部のフランダース地方(オランダ南部と接しており、ブリュッセルなどに比べてオランダとの類似性が高かったため。ベルギーの人口の約6割がこの地方に居住している)。著者らは、これらの国(地域)の乳癌死亡率の経時的変化を調べ、乳癌死亡率が変化した時期とマンモグラフィースクリーニング導入時期の関係を後ろ向きに調べた。

 死因を登録した死亡データベースや、マンモグラフィースクリーニング受診率、癌治療の内容、乳癌死亡の危険因子(診断時の肥満や出産歴など)などを登録したデータベースから情報を抽出した。

 年齢調整した死亡率を対数変換した後に、回帰直線を求めて乳癌死亡率の変化を推定した。死亡率に統計学的に有意な変化が起きた年度の同定には、joinpoint analysisを用いた(joinpoint analysisは、死亡率や罹患率の経時的変化を分析するために開発された非直線回帰モデルを使った解析方法)。

 全国的なスクリーニングの開始時期は、以下の通り。スウェーデンが86年(カバー範囲が全国に広がったのは97年)、ノルウェーが96年(同05年)。オランダが89年(97年以降、受診率は70%以上を維持)、ベルギーは01年以降(05年の受診率は59%で、受診者の約3分の2をフランダース地方の女性が占めていた)。北アイルランドは90年代初め(受診率は95年に70~75%)、アイルランド共和国は00年(受診率は08年に76%)。

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