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NEJM誌から
独のO104アウトブレイク、溶血性尿毒素症候群の9割が成人
6月18日までのデータを分析し、中間報告

 2011年5月から6月にかけてドイツで発生した腸管出血性大腸菌(志賀毒素〔ベロ毒素〕産生性大腸菌)の感染による溶血性尿毒素症候群HUS)と胃腸炎について、6月18日までに収集されたデータを分析し、疫学的、臨床的、微生物学的特徴をまとめた論文がNEJM誌電子版に2011年6月22日に掲載された。独Robert Koch研究所のChristina Frank氏らは、今回のアウトブレイクは、発症者の4分の1がHUSを呈し、HUS患者の9割が成人という非常に特異な状況を示したことを明らかにした。

 研究者たちは、ドイツ全体から寄せられた志賀毒素産生性大腸菌による胃腸炎とHUSの患者に関する報告と、ハンブルグ大学医療センター(HUMC)を受診した患者の臨床情報を分析した。

 ドイツにおける志賀毒素産生性大腸菌による胃腸炎の定義は、「検査による感染確認に加えて、下痢(24時間に3回以上)、腹部疝痛、嘔吐のいずれかの症状が見られる」であり、HUSの定義は「血小板減少症、溶血性貧血、急性腎不全が見られること」となっている。

 11年5月1日から6月18日までに、アウトブレイク症例は計3222例(うちHUSは810例=25%)に上った。死亡は39例(うちHUSは27例)だった。

 アウトブレイクは5月8日に始まって、ドイツ北部に急速に広がり、複数の都市でほぼ同時に患者数が急増した。HUS発症のピークは5月21日、下痢を訴える患者の発生のピークは5月22~23日だった。HUSの罹患率が最も高かったのはハンブルグで、人口10万人当たり10.1になった。ドイツ北部以外の地域で発生した患者の多くは、旅行でドイツ北部を訪れていた。

 HUS症例の89%が成人(18歳以上)で、全体の年齢の中央値は43歳だった。17歳以下の患者の年齢の中央値は11.5歳で、5歳未満のHUS症例は全体の1%のみだった。HUS死亡例の年齢の中央値は74歳(2歳男児の1例を除いたレンジは24~91歳)になった。HUS症例には女性が多く(68%)、HUS死亡例に占める女性の割合は77.8%だった。

 志賀毒素産生性大腸菌による胃腸炎で死亡した患者の年齢の中央値は83歳(38~89歳)で、胃腸炎を呈した患者に占める女性の割合は58.8%、胃腸炎での死亡例に占める女性の割合は58.3%だった。

 潜伏期間の中央値は8日間で、O157:H7の潜伏期間である3~4日に比べ長かった。胃腸炎の患者とHUS患者の潜伏期間には差はなかった。下痢が始まってからHUSを発症するまでの期間の中央値は5日間だった。

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