自民党新ICT政策「デジタル・ニッポン2011絆バージョン~復興、そして成長へ~」発表までの、与野党の動きや、業界・財界の動きを紹介し、与野党政策の全体像を徹底比較する。

 2011年3月11日の東日本大震災発生直後から官民総出の被災者救援、被災地復旧が始まった。国会では与野党がいったん休戦し、復旧のため第一次補正予算を仕上げた。ただ政治面でのその後がよくなかった。政府は福島第一原発事故への対応で手いっぱいとなり、しかもそれが常に後手に回り、被災地での復旧は思うように進まなかった。国民の不満は菅政権に向き、野党は政権打倒に傾注したので、半ば政治空白状態のまま、菅政権は退場した。

 この間、民間は必死になって被災地を駆け巡った。ICT業界も例外ではない。多くの企業が現地支援で人材を派遣し、壊れた情報通信システムの復旧に全力をあげ、サーバーやソフトウエアの無償貸与、物資提供(具体例は電子情報技術産業協会のポームページ参照)などで現地の自治体や企業を支援した。

 一方、5月になると復旧の次段階として復興政策が注目を集め出した。ICT業界では各団体が復興のためのICT政策を練り始め与野党への提言が相次いだ。公表されている例には、情報サービス産業協会の2011年5月9日付「東日本大震災からの復旧・復興に関連する情報関連政策要望」などがある。 筆者もこの日経ITproサイトでICTよ、今こそ国に貢献せよ!を執筆して、復興ICT政策を促した。

与野党の組織に見るスタンスの違い

 与党である民主党の復興ICT戦略が推進力を欠く理由は、自民党の組織構造と比較するとよく分かる。

 図1のように、民主党におけるICT政策の議論の場は、政策調査会の下の総務部門会議の下の情報通信WT(ワーキングチーム)である。これに対して、自民党では旧eJapan特命委員会が「IT戦略特別委員会」として、政策調査会の直下にある。

図1●両党のIT政策関連組織
図1●両党のIT政策関連組織
出所:インターフュージョンコンサルティング

 まず、民主党では階層が1つ深く、ワーキングチームである分だけ、訴求力が下がる。しかも、ICT政策が総務部門の下にあると当然総務省中心となり、経済産業省所管の産業としてのICT政策との連携が薄くなる。勢い、民主党のICT政策は総務省が所管する通信分野に偏りがちになる。これは、野党時代の民主党にはもともとICT戦略自体が存在せず、政権をとってから民主党幹部でICTに最も熱心だった原口元総務大臣の「原口ビジョン」が新IT戦略のベースとなったこととも関係しているだろう。

 これに対して自民党では、2001年施行の高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(通称、IT基本法)以来、eJapan特命委員会が政策調査会直下に置かれていた。これは総務部会や経済産業部会と横並びの関係で、独自にICT政策を検討し、総務省や経済産業省と独自のルートを持って活動していた。それが野党となってから、「IT戦略特別委員会」としてより強化された。

 つまり、民主党は総務省寄りのスタンスなのに対して、自民党はICTをトータルで見ているのである。