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BMJ誌から
2型糖尿病の厳格な血糖管理の利益はわずか、低血糖リスクに相殺される程度
ACCORDなど13件の無作為化試験を対象とした最新のメタ分析の結果

 2型糖尿病患者に対して厳格な血糖管理を行っても、全死因死亡、心血管死亡リスクの低減効果はあったとしてもわずかで、重症低血糖リスクは2倍以上になることが、フランスLyon第一大学のRemy Boussageon氏らが行った最新のメタ分析で明らかになった。論文は、BMJ誌2011年7月30日号に掲載された。

 ACCORD試験が、2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理で死亡リスクが有意に上昇することを報告して以来、厳格管理の利益とリスクに関する議論が続いている。心血管イベントに対する影響や微小血管イベントに対する影響についても、複数の臨床試験で報告されたデータは一貫した利益を示していない。

 2型糖尿病患者に対する血糖厳格管理の影響を調べた無作為化試験を対象とするメタ分析はこれまでにも何件か行われているが、それらは主に、厳格管理の大血管イベントに対する影響について分析していた。著者らは今回、最新のデータを組み入れて、患者死亡と、心血管イベント、微小血管イベント、重症低血糖イベントへの影響を評価するメタ分析を行うことにした。

 Medline、Embase、コクランレビューに1950年から2010年7月までに登録された無作為化試験の中から、18歳以上の2型糖尿病患者を登録し、「血糖厳格管理療法か標準治療」、または「厳格管理よりは強度の低い血糖管理療法か偽薬」に割り付けて、心血管イベントと微小血管合併症に対する影響を調べていた研究を選んだ。なお、厳格管理であるかどうかは、目標として設定されたHbA1cまたは治療強度に基づいて判定した。

 主要エンドポイントは全死因死亡と心血管死亡に、2次エンドポイントは、心筋梗塞、非致死的心筋梗塞、脳卒中、うっ血性心不全、網膜光凝固術施行、網膜症、微量アルブミン尿、腎不全、末梢血管イベント、四肢切断、重症低血糖などに設定し、リスク比と99%信頼区間を求めた。

 以下の13件の研究が条件を満たした:UGDP(phenoformin、tolbutamide、insulinの3件)、KumamotoVeteran Affairs Feasibility studyUKPDS(33と34の2件)、PROactive、Dargieらの2007年の研究、ACCORDADVANCEVADTHOME

 それらの試験に登録された3万4533人(60%が男性、平均年齢62歳、HbA1cの平均は7.9%、糖尿病歴の平均は7.8年)のうち、1万8315人が厳格管理群に割り付けられており、対照群は計1万6218人だった。追跡期間の平均は5.0年になった。

 厳格管理群の全死因死亡のリスク比は1.04(99%信頼区間0.91-1.19)で、研究間の不均質性は高かった(I2=42%)。質の高い(Jadadスコアが3超)研究のみを分析対象にしても、1.06(0.84-1.34)と、同様の結果になった。

 心血管死亡のリスク比は1.11(0.86-1.43)で、やはり研究間の不均質性は高かった(I2=61%)。質の高い研究のみを分析すると1.58(0.60-4.17)になったが、研究間の不均質性は高かった(I2=70%)。

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