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肥満は乳癌患者の生存に悪影響、減量も治療の一環に【SABCS2010】

2010/12/10
八倉巻尚子=医学ライター

 体格指数(BMI)が30kg/m2を超える肥満の乳癌患者では、無病生存期間や全生存期間が標準体重や過体重の患者に比べて短いことが、多施設共同フェーズ3試験のADEBAR試験のデータを用いた解析で明らかになった。ドイツUniversitats FrauenklinikのPhilip Hepp氏らが、12月8日から12日に開催されているサンアントニオ乳癌シンポジウムで発表した。

 ADEBAR試験では、リンパ節転移のある乳癌患者1502人を対象に、EC療法+ドセタキセルとFEC療法が比較された。EC療法+ドセタキセル群では、3週おきにエピルビシン60mg/m2を第1日と第8日に、シクロホスファミド600mg/m2を4サイクル投与し、その後、ドセタキセル100mg/m2を3週おきに4サイクル投与した。FEC療法群では、4週おきにエピルビシン60mg/m2を第1日と第8日に、5-FU 500mg/m2を第1日と第8日に、さらにシクロホスファミド75 mg/m2を第1日から14日まで6サイクル投与した。

 この試験では、EC療法+ドセタキセルはFEC療法と同等の効果があり、血液毒性はFEC療法の方が強いことが報告されている。

 今回の解析では1361人を対象とした。このうち低体重(BMI<18.5kg/m2)は13人、標準体重(BMI 18.5-25kg/m2)は557人、過体重(25kg/m2<BMI<30kg/m2)は491人、肥満(BMI>30kg/m2)は300人だった。

 60カ月のフォローアップ期間で、無再発生存率が、低体重群では87.5%、標準体重群は70.4%、過体重群は70.7%、肥満群は58.6%だった。標準体重群の無再発生存期間は過体重群と有意差がなかったが、過体重群と肥満群では有意差が認められた(p=0.0075)。全生存期間も同様の傾向があり、過体重群と肥満群では有意差があった(p=0.0138)。

 FEC療法群とEC療法+ドセタキセル群の全生存期間は、標準体重群、過体重群、肥満群のいずれの群でも有意な違いはなかった。

 多変量解析では、肥満(BMI>30kg/m2)が全生存期間に影響を与える因子であることが示された(ハザード比1.671、p=0.008)。

 疫学調査では肥満女性は乳癌で死亡するリスクが高く、乳癌患者では肥満女性ほど転移リスクや死亡率が高いことが報告されている。今回の解析でも、疫学調査と同様の結果が得られ、「肥満はリンパ節転移陽性乳癌患者の生存期間に影響を与えることが示された」とし、減量も乳癌治療に加えることを検討すべきであるとした。なおドイツでは電話による減量や運動などのライフスタイル介入を加えたSUCCESS C試験が2009年から開始されている。

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