連載1回目で紹介した通り、2007年度から2010年度にかけて製品開発の業務レベルが向上していることを踏まえ、もう少し具体的な数字を見ながら日本製造業の実態を見ていきたい。

製品あたりの人員数が劇的に減少

 開発力調査では前回説明したiTiD INDEXを用いた調査だけでなく、日本製造業の実態を明らかにするために、製品ごとの開発期間や人員数などについても調査している。

 図1(a)~(c)は、2007年度と2010年度に実施した全国規模の開発力調査で得られたデータを製品の開発期間別に3つのグループに分け、製品あたりの平均人員数を抽出したものである。

(1)開発期間:3年以上5年以下(自動車、建機・農機など)

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図1(a)

(2)開発期間:1年以上 3年未満(複写機、カーナビ、自動車部品など)

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図1(b)

(3)開発期間:0.5年以上1年以下(白物家電、精密機器など)

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図1(c)

 2007年度の調査結果と比較して、2010年度の製品あたりの人員数が減っていることが分かる。同時に、開発期間の長さに応じてその傾向が強くなっていることも分かる。3年から5年を要する大規模な製品における人員の減少率は30%以上で、開発期間が1年超3年未満の製品に関しても約27%減少している。さらに、開発期間そのものも調査した結果、短縮傾向であることが明らかになった。これらの結果から日本の製品開発はここ3年で一定の効率化がされたといえるだろう。

問題児が減少、金のなる木は増加

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図2

 日本製造業がここ数年で開発を効率化できていることはわかったが、製品そのものは変化したのだろうか。ここに面白いデータがある。

 まず、図2は、2007年度と2010年度で調査対象となった製品のプロダクト・ポートフォリオを表している。2007年のデータはこちらを確認いただきたい。

 プロダクト・ポートフォリオについてはご存じの方も多いと思うが、念のため簡単に触れておく。プロダクト・ポートフォリオとは、経営資源を最適に配分することを目的として、製品の市場成長率とマーケットシェアから、その製品が花形(成長率:高、シェア:高)、金のなる木(成長率:低、シェア:高)、問題児(成長率:高、シェア:低)、負け犬(成長率:低、シェア:低)のどこに位置しているかを分析する手法である。一般的には、金のなる木で得られた利益を問題児に投資し、市場シェアを拡大して花形に育てることを検討する。シェアを拡大する道が選べなければ、撤退も視野にいれることが必要だ。