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NEJM誌から
ロタウイルスによる死亡率の高いインドでは自然感染後の免疫誘導が起こりにくい
流行ウイルスの多様性がワクチンの有効性を低く抑えている可能性

 ロタウイルス感染による死亡率が高いインドでは、多様な遺伝子型のウイルスが流行し、自然感染後の免疫誘導が起こりにくくなっていることが、インドWellcome Trust Research LaboratoryのBeryl P. Gladstone氏らの研究で明らかになった。論文は、NEJM誌2011年7月28日号に掲載された。

 インドは、他国に比べてロタウイルスの自然感染後の再感染が多く、死亡率も高い。経口ロタウイルスワクチンが導入されたものの、その有効性は、当初の想定よりも低いことが報告されている。そこで著者らは、インドの出生コホートを対象として、ロタウイルスの自然感染後に再感染率が低下するのかどうか、また、感染した場合は重症化が予防されるのかどうかを調べることにした。

 02年3月から03年8月まで、インド南東部の都市Velloreのスラムで生まれた新生児452人を登録し、出生から3年間、週に2回自宅を訪問した。便標本を隔週で採取し、下痢症状があるときには1日おきに採取した。血清標本は6カ月ごとに採取した。

 ロタウイルスの感染は、血清転換と、便標本中のウイルス抗原をELISAとPCRのいずれかまたは両方で検出する方法で調べた。血清転換は、IgG抗体値が4倍以上、またはIgA値が3倍以上に上昇した場合を陽性とした。

 下痢の重症度の評価にはVesikariスケールを用いた。0は無症候、スコア1~10は軽症、11~15は中等症、16~20は重症に分類した。

 452人の小児を登録し、373人について3年間の追跡を完了、1万3937人・月の追跡を行うことができた。

 便標本を対象とする2回のELISAで感染陽性または1回のPCRで感染陽性、もしくは血清転換した小児を、「ロタウイルス感染あり」と判定した。373人の小児が、延べ1103回感染していた。うち初回感染は33.6%で、それ以外はすべて再感染だった。

 追跡期間中のロタウイルス感染率は1人・年当たり0.99(95%信頼区間0.94-1.05)で、ロタウイルス感染による下痢の罹患率は0.25(0.22-0.29)だった。生後1年間に限ると、感染率が1.20(1.14-1.37)、下痢の罹患率は0.49(0.42-0.58)と高かった。

 ロタウイルスの再感染率は高かった。感染が1回だけだった小児は373人中33人(8.8%)で、102人(27.3%)が2回感染、136人(36.5%)が3回感染、58人(15.5%)が4回感染、42人(11.3%)は5回以上感染していた。

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