注目を集めていた900MHz帯の開設指針案が公表された。総務省が10月中旬に示した案よると枠は1枠であり、携帯各社による争奪戦は必至の情勢となってきた。少なくともNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの3社は開設指針案を踏まえて実際に900MHz帯争奪戦に参戦する意向を示している。

 筆者は700M/900MHz帯の議論が始まる3年以上前から、この割り当ての行方に注目してきた。割り当て方針案の策定について、事業者選定にかかわる審査基準こそ、広いコンセンサスや戦略的な判断が求められ、より幅広い議論が必要ではないかという意見も述べてきた(関連記事:混迷必至の700M/900MHz帯割り当て、将来に禍根を残さない審査基準を)。

 そんな中で、いよいよ事業者選定のベースとなる開設指針案が公開された。問題点があれば指摘し、可能な限り良い案にしていくことが、この議論を常日頃ウォッチしてきたメディアとして、また電波を利用したサービスをヘビーに享受する1ユーザーとしての役割と感じている。

 結論から言うと今回の案は、携帯各社が直面する課題やニーズに正対した、全体的には政策的な合理性がある案になっていると感じた。ただし、いくつか気になる点や、さらに整理が必要な点も残っていると感じている。

 現在こちらの案はパブリックコメントの期間中であり、意見を述べられる最後のチャンスだ。より広く読者の方に、場合によってはパブリックコメントに参加していただきたく、その出発点として今回の割り当て案の中身の読解と、筆者が気になった点などを指摘したい。

最低限満たすべき審査基準とノックアウト式の審査基準を打ち出す

 まずは今回、総務省が公開した900MHz帯の開設指針案を読み解いてみよう。開設指針案の原文は、総務省が10月21日に公開した「三・九世代移動通信システムの普及のための特定基地局の開設に関する指針案」(PDF)である。ただこちらは縦書きの上、この手の文書に慣れた人でないと全体の中身を理解するのは難しい。

 より理解しやすい資料として、同じ総務省が開催する周波数オークション懇談会の11月2日の会合で配布された「3.9世代携帯電話システムの普及のための周波数の割当てについて」(PDF)の一読をお勧めしたい。こちらは要点がまとめられており、ビジュアル的にも分かりやすい。

 まず今回の900MHz帯の割り当ての基本的な考え方として、「近年のトラフィック急増」と、「早期に3.9世代携帯電話システムの普及を図るため」とした。これは、昨年総務省で開催されたICTタスクフォースの報告書でも指摘された点であり、コンセンサスが得られているとしてよい。

 肝心の900MHz帯で定める枠は15MHz幅×2の1枠とした。つまり900MHz帯を利用できるのは1社のみである。これはサービスの高度化を目的とすることから、より広い帯域を与える必要があるという理由から。参入希望調査でも携帯各社は15MHz幅×2を求めており各社も異論は無いだろう。ユーザーにとっても、より高速なサービスを利用できる体制のほうが望ましい。

 さて肝心な審査方法だが、これまで700M/900MHz帯においては「オークションの考え方」を取り入れるとしてきたが(関連記事:またもや先送りか? なぜ進まない日本の周波数オークション)、実態は従来通りの比較審査になっている。ただこれまでよりも、審査基準を明確にした点が新しい。具体的には、申請者が最低限満たすべき基準「絶対審査基準」と、複数者による争いになった際に競う基準「競願時審査基準」の二つに明確に分けた。