台湾の中央気象局は、2011年11月に海洋総合観測システムを導入した。台湾北東部の頭城から45キロメートル沖合まで敷設した海底ケーブルの先端に海底地震計や津波計などを取り付け、観測情報をケーブル内の光ファイバーを使ってリアルタイムで地上に送る。NECが構築を担当した。同様のシステムは日本に9カ所あり、同社はその全てを構築した実績を持つ。プロジェクトの主導者で、台湾における地震学の権威でもある台湾交通部中央気象局の郭鎧紋博士に話を聞いた。

(聞き手は岡部 一詩=日経コンピュータ

システム導入の経緯は。

写真●台湾交通部中央気象局 地震測報中心主任の郭鎧紋博士
写真●台湾交通部中央気象局の郭鎧紋博士
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 2004年12月26日に発生したインドネシアのスマトラ島沖地震が直接の契機だ。2005年から検討を開始した。ただし多額の費用が必要なため、構築に取り掛かるまでが難航した。

 当初は90キロメートル沖合に二つの地震計を設置する予定だったのを45キロメートル地点に一つにするなど、要件を縮小して費用を抑えた。それと並行して3年分の予算を積み立て、ようやく発注できた。

 海底ケーブルの施設工事に着手を発表したのが2011年3月19日。東日本大震災の7日後のことだ。当時台湾のマスコミは、東日本大震災を受けて我々が工事を始めたものと捉え、「迅速な対応」と驚いていた。しかし実際は、7年越しの計画をやっと実行に移せたということだ。

なぜNECに発注したのか。

 互いに防災の必要性を感じており、NECは提案段階から様々なサポートをしてくれた。ただし最終的には公開入札となる。技術評価を通過した全ての企業に受注のチャンスがあり、価格は非常に重要な要素だ。今回、その点においても期待に応えてくれた。