ポリゴンミラー(上)と受光チップ(豊田中央研究所のデータ、「第61回応用物理学会春季学術講演会」講演予稿集p.25)
ポリゴンミラー(上)と受光チップ(豊田中央研究所のデータ、「第61回応用物理学会春季学術講演会」講演予稿集p.25)
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 豊田中央研究所は、近赤外線レーザーレーダーを使って、走行中の自動車に搭載して周囲の歩行者や自動車、構造物などを3次元的に認識するシステムを試作した。2014年3月17日から開催中の「第61回応用物理学会春季学術講演会」で、試作システムを使った実験結果を明らかにした(講演番号17p-E9-5)。人間に見立てた板状の目標物を80mの距離から検知できることを確認した。

 レーザーレーダーは、自動運転やACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)を実現するための中核システムとなる可能性が高い。照射したレーザー光とその反射光から、歩行者や自動車、道路、地形などをリアルタイムで3次元的に認識する。ただし、入手可能な製品は限られており、例えば各社が進めてきた自動運転の実験では米Velodyne社製のレーザーレーダーを使う例が多かった。豊田中研もVelodyne社品を使って次世代運転システムに関する研究をしたことがある。

 今回、豊田中研が実験に使ったのは、波長870nmの近赤外レーザー光を6面のポリゴンミラーで走査するシステムである。このミラーは、レーザーダイオードの光を周囲に発射するのと、対象物の反射光を受光素子(フォトダイオード)で受けるための光路制御の両方で使う。反射光は、同社が開発した専用チップで受け、2次元画像を得る。距離情報は、ジェスチャー認識などで使われているToF(time of flight)方式で取得する。専用チップには、16列×1個の受光素子を集積し、ポリゴンミラーの1面で周囲の空間の16列×202点をとらえる。すなわちポリゴンミラーを1周させた6面分(1フレーム)で96列×202点を撮像することになる。フレーム周波数は10Hzである。