前回のコラムでは、材料の頑丈さを[1]力が加わっても変形が少ないこと、[2]力を除けば変形は元に戻ることの2つで分けて見ることを紹介しました。頑丈さの理想は力が加わっても変形は「完全にゼロ」、どれほど大きな力を加えても破損しないことです。しかし、この理想を満たす材料は存在しません。従って、これら2つの見方によって材料選定を行います。

 [1]の変形のしにくさを「剛性」、[2]の大きな力にも耐えられる度合いを「強度」と呼びます。「剛性」は縦弾性係数という指標で表し、この数値が大きいほどたわみにくいことを意味します。例えば、鉄鋼の縦弾性係数は206×103N/mm2、アルミニウム合金の縦弾性係数は71×103N/mm2なので、鉄鋼はアルミ合金のおおよそ3倍です。すなわち、同じ力が加わればアルミ合金は同形状の鉄鋼の3倍のたわみが生じます。これは覚えていくと便利な数値です。

 縦弾性係数は鉄鋼やアルミ合金といった大分類で決まります。鉄鋼であれば安価な炭素鋼でも、高価な合金鋼でも剛性は変わりません。すなわち炭素鋼、例えば最も一般的な汎用材(一般構造用圧延鋼材)であるSS400で大きく変形したからといって、高価な合金鋼(例えばクロムモリブデン鋼、以下クロモリ鋼)に換えても同じ変形量となります。