■テレビ「林先生が驚く初耳学!」(TBS系、4月22日放送)でも話題!

 貯蓄から投資への流れ、仮想通貨をめぐる騒動――。長期・短期を問わず、おカネに関する話題は事欠かない。日々、目にし、場合によっては何かしらの判断を迫られる「おカネの話」。ではあなたは、おカネについて、きちんと教わったことがあるだろうか。
 この「おカネの教育」に真正面から取り組み、親が子供に伝えるべき内容をまとめた新刊『「おカネの天才」の育て方』。本書から、「子供に教えなくていい7つのこと」を抜粋してお届けする。

 生涯を通じて大事なことだけど、他人はもとより親子でも突っ込んだ話はしにくい「おカネの話」。これに真正面から取り組み、親が子供に伝えるべき内容を実践的にまとめた『「おカネの天才」の育て方』。
 これまで「子供とおカネの話をするときの14のルール」と題し、金銭感覚を身につけるための教え、たとえば、「親がおカネで揉めると、子の『借金率』が3倍に」、「祖父母から小遣いを貰った子に親は何をすべきか」を伝えてきた。
 今回は番外編として、子供に教えなくていいことを具体的にお伝えしよう。

 子供に何でも打ち明けるのがいいと思っている人はいる。私はそうは思わない。おカネについては、子供、特に幼い子供がまだ理解できないこともあるし、率直に言って、知らなくていいことがある。教えない方が都合のいい場合もある。

 たとえば、子供に親の収入を教えれば、どうして海辺のバカンスに行けないのとか、映画館で8ドルのポップコーンを買ってもらえないのとか、しつこくつきまとわれることは間違いない。親の収入を子供が友達にばらしてしまうことも多い。

 要するに、親には時として、子供に次のように伝える権利と、おそらく義務があるということだ。

 「これはパパとママの間だけに留めておきたいの。すごく大きな秘密ってわけじゃない。ただ、もっと大きくなるまでは親が子供に伝えなくていいこともあるっていうだけよ」

 子供が知らなくていいことをいくつか、ここに挙げてみよう。

1 収入

 収入が5万ドルでも、15万ドルでも、50万ドルでも、親がいくら稼いでいるかを子供に教える必要はない。とはいっても、背景は説明してもいい。

 たとえば、アメリカの世帯所得の中間値(ちょうど真ん中)がおよそ6万5000ドルで、それに比べて自分たちがどのあたりにいるかを教えることはできる。その金額をすごく大きいと思うか、小さいと思うかは、子供の年齢や、子供がモノの値段をどのくらい知っているかによって違う。それが、おカネの使い方や貯め方を子供に話すときの出発点にもなる。

2 どちらの親がより稼いでいるか

 フルタイムの共稼ぎ夫婦の場合、どちらの親が多く稼いでいるかは子供に言わなくていい。パパとママの働きを金額で教えると、特に幼い子供は、どちらかの親の方がエラいと思ってしまう。どちらがより稼いでいるかが重要でないなら、子供に伝える必要があるだろうか?

 もちろん、ティーンエイジャーにもなれば、渉外弁護士が教師よりも稼ぎが多いことはわかる。子供がその話題を持ち出して、どうしてあなたの社会福祉士の仕事は配偶者の銀行員の仕事よりも給料が低いのかを知りたがったら、そんなときこそ、仕事のやりがいや、望んだ人生を送るためのトレードオフについて話し合ういい機会になる。

 どちらかの親が家に入り、もう一方の親が外で仕事をしている場合には、フルタイムの子育てもひとつの仕事だということや、その価値について話し合うといい。詳しい話はさておき、たいていは両親が子供の前で一致した態度を見せるのがベストだ。私たちはチームだし、力を合わせている。だからどちらがどれだけ稼いでいるかは関係ない、と言っていい。

3 退職年金口座の貯蓄額

 私が10歳のとき、隣に住んでいたスーザンが、親の退職年金口座に100万ドルの貯金があると教えてくれた。はじめはウソだと思った。100万ドルも持っている人なんて、思いつかなかったからだ。その話が本当だとしてもそうでなくても、私がそんなことを知っていていいことは何もない。

 あなたの年金、貯金、投資はあなただけのものだ。このおカネは、今手をつけるべきものじゃないということや、かなり長い期間にわたって取り崩していくものだということは、子供にはなかなか理解できない。

4 親戚の誰それがケチだとか金持ちだとかヒモみたいだとかいう話

 どんな家族にも変人がいる。実のところ、家族のゴタゴタの大半は、おカネをめぐるもめごとだ。この手の話は子供の耳に入れてはいけない。

 お人好しだけどいいかげんな弟が、あなたに借りた1000ドルを期日までに返さずに海外旅行に出かけてしまったら、ムカつくはずだ。でも、子供が周りにいるときにそれを口に出してしまえば、おじさんを嫌いになるし、借金が返ってきたあとでもずっとそれを覚えているだろう。しかも、弟がおカネを返したことを子供に言うとは思えない。

 家族や友達におカネを貸すのはよくないと教えたいなら、知り合いでない人の話をしよう(あるいは、名前を変えるだけでもいい)。

5 ベビーシッターやお手伝いさん、家庭教師にいくら払っているか

 ジェナは、子供たちの大好きな、いつも明るいベビーシッターのジェニファーが実はおカネをもらっていると知って、子供たちがものすごくショックを受けたと話していた。子供たちは、ジェニファーがママにわざわざおカネを払って、自分たちと遊んでいるのだと思っていた。

 幼い子供に、ベビーシッターもほかの仕事と同じで、オシゴトだと教えるのはかまわない(それに、私にとってはこれまで雇った中で一番大切な仕事だ)。でも、いくら払っているかは教えなくていい。教えると子供たちが、自分が上だと勘違いする。それは困る。親がいないときに子供たちの上に立つのがベビーシッターの仕事だ。その力を奪うようなことをしてはいけない。

6 プレゼントにいくら使ったか

 プレゼントのたびに値段を口にしていたら、贈り物の喜びが失われてしまう。息子でも、娘でも、ほかの誰かでも同じだ。そもそも、贈り物の価値は値段ではない。パパと作るピザや、ママとソファで作る秘密基地といった最高の贈り物は、たいていタダだ。でも、贈り物の季節にはよく子供が動転してしまうこともある。その時が、贈り物の精神やおカネについて話すいいチャンスになる。すべてを隠す必要はないし、事実を知っていた方がいいこともある。

 10歳になる友人の甥っ子は、誕生日パーティで、前の年よりプレゼントの数が少ないことに気づいて泣き出してしまった。母親は、その子が少し大きくなって、欲しいものが少し高くなったからよと説明した。だから、安いものをたくさん買うより、親戚が一緒におカネを出し合って、その子がすごく欲しがっていたiPadを買うことにしたのだと教えた。

7 学費の不安

 普通の親は、いつか大学の学費を払うと考えただけで、恐ろしくなる。9章では子供が高校生になったら大学(の学費)について話し合うべきだと書いたが、目的のある対話とただ不安を煽ることは違う。

 大学にどれほどおカネがかかるかや、学費を払えるかどうか心配で仕方がないといった、あまりにも後ろ向きな話はしない方がいい。一般論を話しているときでさえ、親の愚痴を子供は誤解するかもしれないし、学費が高すぎて親に迷惑をかけたくないと思ってしまうかもしれない。

 もちろん子供に、どこに入っても大丈夫だから任せておけと、自信もないのに空手形を切るのはよくない。それでも、学費も含めて高等教育は何より大切で、子供の未来のために貯金しておくのは親の喜びだと伝えることはできるし、そう伝えるべきだ。

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