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 まだパソコンが「ただの箱」だった黎明(れいめい)期、多くのユーザーが最初のアプリケーションとして触れたテキストエディター。その草分けがメガソフトの「MIFES(マイフェス)」だ。1985年の登場から34年、平成を通じて生き残った強者ソフトである。

MIFES-98の画面。青い背景色が特徴
MIFES-98の画面。青い背景色が特徴
(出所:メガソフト)
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 MIFESが生まれたのは1985年。16ビット機としてシェアを伸ばしつつあったPC-9801向けに「MIFES-98(Multi File Editor Specialized for PC-9800)」を投入した。ビジネスからコンシューマーまで市場を席巻した名機「PC-9801VM」シリーズが登場した年である。

 価格は3万8000円(税抜)。当時はPCやOSの制約から難しかった高速スクロールやマルチファイルの同時編集を実現。複数のファイルを横断検索できる検索機能(grep)も充実させた。

 メガソフトMIFES製品ディレクターの谷口剛志氏は、34年にわたって受け継いできた設計思想を「使いやすさと高機能を両立させた、どのような場面でも使える万能包丁」と説明する。

 行の折り返しで自動改行して見た目の行番号を振ってくれる機能も、日本語のテキストエディターならではの機能だった。1行の文字数を決めた状態で折り返すと、何行になるのかがすぐ分かる。プログラムコードの編集では不要な機能だが、文章入力に特化した日本語ワープロとしての性格を併せ持っていた。

 MIFESは商用テキストエディターの先駆者としての地位を維持し続けるべく、当時一定のシェアがあったコンピューターに対応していった。「比較的マイナーなOSも含めて対応したのは少数派。全社のソフトがMIFES、という状況が可能になるようにした」(谷口氏)。

 PC-9801に続いて、1986年に三菱電機の16ビット機「MULTI 16 III」、1989年に米IBMのPS/55、東芝のJ3100、AX、OS/2、1991年にDOS/VとAX両対応の「MIFES Ver.5.0」を投入。PC-9801互換機のセイコーエプソン製DOSのバンドルエディターとしても提供した。

MIFES Ver.5.5の画面。在庫限りながら販売を継続している
MIFES Ver.5.5の画面。在庫限りながら販売を継続している
(出所:メガソフト)
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 1993年の「MIFES for Windows Ver.1.0」でWindowsに対応。まずは「DOS版の延長として早めに市場に投入した」(谷口氏)。

 Windows版として刷新したのは1995年の「MIFES for Windows Ver.2.0」だ。マクロ言語を「MIL/W」として刷新した。従来のMILがMIFESの機能を組み合わせるコマンド体系が基本だったが、MIL/Wではプログラム実行環境として関数を整備し直した。