ソフトバンクグループでポータルサイト国内大手のヤフーが2000億円規模の自社株買いを検討していることが7月9日、明らかになった。米投資会社のアルタバ(元・米ヤフー)から、発行済み株式数の約1割に相当する株を買い取るプランが濃厚だ。2月にアルタバがヤフー株を売却すると表明してからヤフー株は急落していた。自社株買いでようやく株価対策が打たれることになるだろうか。

 アルタバは、まだ米ヤフーだった1996年にソフトバンクと共同でヤフージャパンを設立、今年3月時点ではソフトバンクグループ(ヤフー株43%を保有)に次ぐ第2位株主として35.6%を保有している。だが米ヤフー自身は経営危機に陥り、中核事業を米通信大手のベライゾン・コミュニケーションズに売却し投資会社「アルタバ」に衣替えした。そして今年2月、トーマス・マキナニーCEO(最高経営責任者)が日本のヤフー株を売却する方針を表明していた。

ヤフーはソフトバンクの業績にも貢献している(写真は5月9日のソフトバンクグループの決算発表、Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
ヤフーはソフトバンクの業績にも貢献している(写真は5月9日のソフトバンクグループの決算発表、Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 このアルタバの売却方針が伝わってからヤフー株はひたすら下がり続けてきた。9日の終値は360円で、1月25日の今年の高値(549円)から3割以上下落している。足元の株価水準は約5年半ぶりの安値圏だ。35.6%もの株式が市場に放出されると予告されたのだから、需給悪化懸念が渦巻くのも無理はない。

 だが逆に株価下落は自社株買いをする方にとっては好都合とも言える。安く買えるからだ。ヤフーの時価総額は現時点で約2兆円まで下がった。10%の株式を買い取るのに必要なコストは2000億円で済む。

アルタバは6月28日に関東財務局に大量保有報告書を提出、4~6月の間に0.8%のヤフー株を市場で売って、持ち株比率は34.8%まで減ったと明らかにした。だがこれだけでは焼け石に水で、大口の売却先探しは急務だった。

やや複雑なスキーム

 今回、ヤフーはTOB(株式公開買い付け)で約1割の株式を自社株買いするとみられる。だがそのスキームはやや複雑なようだ。ヤフーがアルタバから直接自社株買いをするわけではないからだ。

 今、検討されているプランはこうだ。アルタバが持つ約1割のヤフー株をソフトバンクグループの子会社で上場を目指している「ソフトバンク」が買い取る。だがこのままだとソフトバンクグループが全体で保有するヤフー株が53%まで高まって過半数を超え、ヤフーの独立性が保ちにくくなる。そのため、ソフトバンクグループはこれまでに保有していたヤフー株の10%相当をヤフーに売却する。ヤフー側からすればアルタバから自社株買いをするのではなく、ソフトバンクグループから自社株買いする格好だ。

 こうすれば、ソフトバンクグループとしてはヤフー株の保有比率はこれまでとそう変わらない。ソフトバンクグループを経由した自社株買い、とでも言えばいいだろうか。なぜこんな複雑な手法が検討されているかは明らかではないが、グループ内での資金融通や税金対策、といった理由が考えられる。

 いずれにしても、発行済み株式の35.6%が売られる、という需給悪化懸念はこれで少し和らぐだろう。しかしまだアルタバは2割以上のヤフー株を抱えたまま。ヤフーは財務が健全とはいえ、残りも全部自社株買いしようとすると4000億円以上の資金が必要になる計算だ。まだまだヤフー株主が需給悪化懸念から解放された、というわけではない。

まずは会員登録(無料)

登録会員記事(月150本程度)が閲覧できるほか、会員限定の機能・サービスを利用できます。

こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。