慢性的な人手不足に悩むコンタクトセンターでオペレーターの支援にとどまらず、人間を介さずに商品の注文や問い合わせを完結できるAI(人工知能)の活用が広がりつつある。

 AIを活用したコンタクトセンター向けサービスを2018年12月1日に始めたNTTコミュニケーションズは自社のコンタクトセンターで利用したところ、9割超の対応をAIで完結できたという。カタログ通販大手のディノス・セシールは2019年3月、AIとの会話だけで商品の注文を完結できるシステムを導入する計画だ。

AIを活用した自動電話応対システムの概要。受け答えから後続処理までを自動化する
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AIとRPAを併用、顧客への架電も自動化

 NTTコミュニケーションズが提供を始めたのは、コンタクトセンターのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するサービス「コンタクトセンターDXソリューション」だ。音声認識AIやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などを組み合わせて、顧客とのやり取りから後続処理までを自動化する。

 通常の問い合わせはAIに任せて、オペレーターはクレーム対応など人間でないと対応が困難な業務に集中できるようになる。商品やサービスに関する問い合わせや通信販売などでの注文といった顧客からの電話対応のほか、営業のアポイントやレストランやホテルの予約確認といった顧客への架電の自動化も想定している。

 同社の対話型AIエンジン「COTOHA Virtual Assistant」や、NTTグループのRPAツール「WinActor」などを組み合わせる。顧客の要望や業務内容に応じて、他のソフトを組み合わせることも可能という。システムの構築期間は最短で2~3カ月。既存のシステムとの連携やAIのチューニングなども支援する。

 価格は個別見積もりだが、「一般的なオペレーター1人当たりにかかる費用を月数十万円と仮定して、それより2~3割低い金額で提供する」と同社の小松崇ボイス&コミュニケーションサービス部担当課長は話す。3年間で数十社への導入を目指す。既に数社から引き合いがあるという。

 「オペレーターの採用は難しく、人材の定着率も悪い。5年後や10年後を考えると対策は急務だ」と小松担当課長は新サービスの背景を説明する。同社はフリーダイヤルやナビダイヤルを有し、コンタクトセンターに関するサービスを長年手掛けている。このところ特に、人手不足に悩む顧客企業の声が目立っていたという。

 既に同社のコンタクトセンターの一部が、営業時間外の問い合わせ対応に新サービスを活用している。300ほどのFAQに関して1カ月半ほどAIを学習させた結果、9割超の対応をAIで完結できた効果が得られたという。例えば「海外から電話を掛けたい」という問い合わせには「どのプランに加入していますか」と返し、「Aプランは海外で使えますか」という問い合わせには「対応しているので電話番号の前にXXを入れてください」と返すなど、問い合わせの内容に応じて自然な流れで適切な返答をする。

 大手飲食店予約サイトと共同で、予約客の来店意思の確認に新サービスを使う実証実験も始めている。現在はSMS(ショートメッセージサービス)で予約内容を確認しているが「既読の確認や変更意思の把握が難しい」(小松課長)ため、電話による確認も検討している。