KDDIは2018年6月27日、沖縄県那覇市の沖縄セルラースタジアムにて、5G(第5世代移動通信システム)を活用した自由視点映像のリアルタイム配信実証実験を記者向けに公開した。プロ野球の試合中のバッターを、5Gを通じてリアルタイムで任意の方向から視聴できる。この取り組みから、5Gを用いたサービスの可能性と現時点での限界が見えてくる。

5Gによる新しいスポーツ観戦体験

 2018年6月14日、世界各国の通信事業者や通信機器メーカー、携帯電話端末メーカーなど51社が、5Gの無線通信方式「5G NR(New Radio)」の標準仕様策定が完了したと発表した。これによって5Gは今後、商用化に向けた準備が積極的に進められることとなる。

 国内でも、5Gを活用して新しいサービスを生み出す準備が積極的に進められている。直近の動きとして挙げられるのがKDDIの取り組みだ。同社とKDDI総合研究所、沖縄セルラー電話の3社は2018年6月26日、国際電気通信基礎技術研究所と韓国サムスン電子の協力の下、5Gによる自由視点映像のリアルタイム配信の実証実験を実施している。

 これはプロ野球の公式戦の試合中に、スタジアム内に整備された5Gのネットワークを用いて、バッターボックスに立つ選手の自由視点映像をタブレットに配信。通常は1方向からしか見ることができない選手のバッティングの様子を、あらゆる角度から視聴できるようにすることで、新しいスポーツ観戦のスタイルを実現することが目的だという。

KDDIは2018年6月27日、沖縄セルラースタジアム那覇にて5Gを用いた自由視点映像のリアルタイム配信の実証実験を記者に公開。バッターボックスに立つプロ野球選手を好きな角度から視聴できる。写真は同実証実験より(筆者撮影)
KDDIは2018年6月27日、沖縄セルラースタジアム那覇にて5Gを用いた自由視点映像のリアルタイム配信の実証実験を記者に公開。バッターボックスに立つプロ野球選手を好きな角度から視聴できる。写真は同実証実験より(筆者撮影)
[画像のクリックで拡大表示]

 翌日の2018年6月27日には、実証実験の様子が記者にも公開された。実証実験の会場は沖縄県那覇市の沖縄セルラースタジアム那覇。このスタジアムでは2018年3月にも、5Gを用いた4K映像を50台に同時配信する実証実験を実施しており、今回の実証実験でもそのときと同様のネットワーク設備を使っているという。

 具体的には帯域幅700MHz、28GHz帯の電波を用い、スタジアム内の照明塔に設置した4本のアンテナから、タブレットが設置されている内野席に向かって電波を送り出す仕組みとのこと。ただし、前回の実証実験と違い、配信される映像は4KではなくフルHDである。タブレットにはサムスン電子製の5G対応タブレットが用いられており、2018年2月に韓国の平昌で開催されたオリンピック冬季競技大会でも使われていたものと同じものになるとのこと。