2019年9月9日夜、日産自動車社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人氏が、自身の辞任会見を開いた。問題が指摘されていた、株価連動型報酬制度「SAR」を利用した不正な報酬の取得については、意図的な不正であることを否定。2018年に逮捕された元同社代表取締役会長のカルロス・ゴーン氏の不正とは意味が違うものの、経営者としてゴーン氏の不正を許した責任があると語った。西川氏は会見での報道陣からの質問に以下のように答えた。
SARについて、なぜ日程を不正にずらす依頼をしたのか。
西川氏:(社内には)いろいろな“手続きもの”がある。SARであったり、以前はストックオプションだったり(もその手続きもの)だ。決して肯定するわけではないが、なぜかという質問故に答えると、職位が上がって忙しくなっていくと、ルール通りに確実にやろうとすると(難しくなる)。ストックオプションでは行使できる日とできない日があり、他にも大事な条文があって、この段階ではやるべきではないということもあった。
こうした中、私は習慣として、手続きの正確性を担保する意味もあり、事務局として熟知している所に依頼したり、いつだったらできるのかと(聞いたりして)、任せていた。これが(今回のSAR不正の)端緒になったと私は見ている。
「ケリー氏に頼んでおり、知らなかった」
自分自身も不正をしていたのに、ゴーン氏の不正を追及した。その時、自分の不正も追及されるとは思わなかったのか。
西川氏:去年の段階でゴーン不正が見つかった時に、私から見ても信じられないことがたくさんあった。まずここは不正を除去すべきだと言ったと思う。
私が(SARの件)を頼んだグレッグ・ケリー以下(の人間)は、本来(のルール)とは違うことをやっていた。頼むという行為の善しあしは別として、実際に頼んでいたので、その先がどういうことになっていたかについては、私は全く分からなかった。そこで、「あるところから先は自分で分かっていないので調べてほしい」と、彼らがやっていたことに関して私が社内調査を依頼した。その結果、ルール違反が見つかった。
従って、もちろん決して褒められたものではないものの、去年の11月~12月で発覚してきた、本当の意味での「意図を持った不正」とは全く違うと私は思っている。
引責辞任ではないということか。
西川氏:去年(2018年に)発覚した大事件(ゴーン氏の不正)に関して、過去に経営に携わった人間は多からず少なからず責任があると今でも思っている。その責任を果たすという意味では、当然、そういう意味(引責辞任)はある。
それに加えて、私は(CEOという)立場上、会社の安定化が第一であるため、会社が混乱から抜け出すまで、そして、いくつかの宿題についてある程度道筋をつけるまでは、(CEOとして)果たすべき責任を果たす(べきだ)ということで今日までやってきた。従って、両方の責任という意味がある。そのため、過去から起きたことの責任はあり、当然その責任をとるという部分は(辞任に関して)あるというふうに考えている。