「まるで『E3』のようだ」――。ソニーが「CES 2019」の開催前日(現地時間で2019年1月7日)に開催したプレスカンファレンス(報道機関向け発表会)に対する筆者の感想である。E3とは、毎年6月ごろに米ロサンゼルスで開催されるゲーム業界最大の展示会。ソニーはグループの米ソニー・インタラクティブエンタテインメント(Sony Interactive Entertainment:SIE)がゲーム機事業を手掛けており、SIEがE3でプレスカンファレンスを実施するのが恒例である。そこで、プレイステーション(PlayStation)プラットフォームのゲーム機の特徴を生かした新作ゲームを紹介し、その開発者がゲームのウリや開発の狙いなどを語る。

 まさに今回のCESのプレスカンファレスは、E3のようなコンテンツにスポットライトを当てた構成だった。ソニー 取締役代表執行役社長兼CEO(最高経営責任者)の吉田憲一郎氏は冒頭で、ソニーを「クリエイティブ・エンタテインメント・カンパニー」と定義。そこから、米ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(Sony Pictures Entertainment:SPE)や米ソニー・ミュージックエンタテインメント(Sony Music Entertainment:SME)の幹部が登壇し、各社が手掛ける新作、あるいは人気のコンテンツを次々と紹介した。終盤には著名なアーティストであるファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)氏が登場するなど、クリエーター側を技術や製品で支え、良好な関係を構築していることをアピールしていた。すなわち、エレクトロニクス技術が、ソニーグループでどのように活用されているのかを説明する場となっていた。

ソニーの吉田氏は、同社を「クリエイティブ・エンタテインメント・カンパニー」と定義した(撮影:日経 xTECH)
ソニーの吉田氏は、同社を「クリエイティブ・エンタテインメント・カンパニー」と定義した(撮影:日経 xTECH)
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 こうした構成は、これまでのソニーのプレスカンファレンスに比べると、大きく様変わりした。昨年(2018年)の「CES 2018」まで、主役はテレビにオーディオ機器、ゲーム機、カメラといったさまざまな電子機器の新製品で、映画や音楽といったコンテンツはむしろ脇役だった。特に2012年に平井氏がソニーのCEOに就任してからは、エレクトロニクス事業の「復活」を掲げ、CESのプレスカンファレンスで新製品を積極的にアピールしてきた。

 さらに、コンシューマー機器だけでなく、エレクトロニクス事業を支えるデバイス、例えばイメージセンサーまでも紹介するようになった。昨年のCES 2018では、ソニーが注力し始めた車載向けイメージセンサーをプレスカンファレンスでプレゼン。自動車メーカーや自動車部品メーカーも数多く出展するようになったCESだけに、車載製品をアピールするのに格好の場だと考えたのだろう。

 こうした経緯から、プレスカンファレンスでコンテンツを前面に押し出すという大きな方針転換に筆者は驚いた。そもそも、ソニーの平井氏から吉田氏にバトンが渡ってから最初のCESだけに、そのプレスカンファレンスには注目が集まっていた。蓋を開けてみると、その内容が以前から大きく変わっただけに、大きなインパクトを残したと言える。

CES 2018のプレスカンファレンスで車載イメージセンサーをアピールする平井氏(撮影:日経 xTECH)
CES 2018のプレスカンファレンスで車載イメージセンサーをアピールする平井氏(撮影:日経 xTECH)
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