大塚久美子社長は15年に父・勝久氏との委任状争奪戦に勝利したが、その後、経営は苦戦が続く(写真=Pasya/アフロ)
大塚久美子社長は15年に父・勝久氏との委任状争奪戦に勝利したが、その後、経営は苦戦が続く(写真=Pasya/アフロ)

 経営不振が続く大塚家具がスポンサー企業探しを進めていることが、日経ビジネスの取材で明らかになった。2015年、実父で創業者の大塚勝久氏との経営権を巡る争いに勝利した久美子社長の経営が苦境に陥っている。だがスポンサー探しも、交渉は難航している模様で、先行きは予断を許さない状況だ。

 大塚家具は8月中旬にも18年1~6月期の決算発表を予定している。関係者によると、決算と同時期に、発表できるようスポンサー選びの交渉は佳境に入っている。これまでに同業のみならず、アパレル、建材、商社、投資ファンドなど数十社に及ぶスポンサー候補と交渉に臨んだが、合意には至っていない。減資した後の第三者割当増資や、久美子社長の退陣などを支援条件に挙げる企業があるもようだが、大塚家具側は、こうした条件に難色を示しているとみられる。

続く営業赤字、提携交渉のハードルに

 提携交渉のハードルとなっているのが、赤字が続く大塚家具の業績だ。17年12月期には単独の最終赤字が過去最大の72億円に膨らんだ。18年1~3月期は、最終黒字は確保したものの、営業損益は14億円の赤字だった。父・勝久氏が作った会員制を軸にしたビジネスモデルをやめて、気軽に立ち寄れる店を目指して、改革を進めてきたが、ニトリなどライバルとの競争も激しく、なかなか結果を出せていない。

 久美子社長も手をこまぬいているわけではなく、経営効率化に向けてリストラを急いでいる。創業の地の「春日部ショールーム」(埼玉県春日部市)を5月に閉店、6月には旗艦店の「有明本社ショールーム」(東京・江東)も縮小した。18年12月期は3期ぶりの黒字転換を見込んでいるが、売り上げの減少に歯止めがかかっておらず、固定費カットが追いつかなくなる懸念がある。

 業績不振で財務内容も悪化した。銀行借り入れはなく無借金を貫いているが、保有する現預金の減少が続く。16年12月末に38億円あった現金及び預金は1年後の17年12月末には18億円になった。15年12月末に109億円あったことを考えれば、大きく減少したことは明らかだ。

見えぬ経営建て直しの道筋

久美子社長は気軽に立ち寄れる店を目指して改革に取り組んでいる(写真=共同通信)
久美子社長は気軽に立ち寄れる店を目指して改革に取り組んでいる(写真=共同通信)

 大塚久美子社長は「無借金経営を続けており、金融機関との間にコミットメントライン(融資枠)契約もある」と強調している。だが、業績低迷が続く中で、金融機関の融資姿勢が厳しくなる恐れもある。スポンサー候補として交渉に臨んだ企業からは「買収しても立て直せる戦略を思いつかない」といった声も漏れる。

 娘との戦いに敗れて大塚家具を去った大塚勝久氏は、私財を投じて「匠大塚」という、家具販売の会社を独自に立ち上げている。2016年には、大塚家具も店舗を構えていた、埼玉県春日部市に巨艦店舗を開いた。匠大塚では勝久氏が従来から貫いてきた方針を引継ぎ、高額品を豊富に品ぞろえしている。ただ、非上場のため、どこまで顧客に支持されているかは、明らかではない。

 2015年の株主総会では、父と娘の間で、経営権を巡るプロキシーファイト(委任状争奪戦)を繰り広げた。そうした経緯があるため、大塚家具が匠大塚の支援を受ける可能性は低いだろう。親子の決裂から3年が過ぎたが、久美子社長はかつてない、苦しい状況にある。娘の苦境を父はどんな思いで見つめているのだろうか。

 今後はどのような展開が考えられるのだろうか。久美子社長が最も望んでいるのはおそらく、「銀行からの融資などで、しのぐこと」(交渉関係者)だとみられる。だが、仮に借り入れをしたとしても、業績が抜本的に改善しない限り、本質的な問題解決にはならないだろう。もしくは、条件に合うスポンサーが首尾よく見つかればいいが、最終的に見つからずに、融資も難しかった場合、法的整理などによる経営再建も視野に入れざるを得ないという状況に陥る可能性もある。久美子社長にとって正念場の8月となりそうだ。

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