ユニー・ファミリーマートHD相談役、上田準二さんの「お悩み相談」。今回は、2度目の相談となる31歳男性から。年収も家柄も良く、外見にも努力を惜しまない。それでも、婚活が全くうまくいかず、心が折れた。そんな相談者に上田さんは「解脱しろ」と説く。その心は?

悩み: 「2度目の相談です。婚活がうまくいきません。年収は高めで、家柄も良く、外見にも気を使っています。様々なアドバイスに従って努力もしていますし、会社では幹部候補です。しかし、過去2回、婚約が破談になりました。もう心が折れてしまいそうです」

 「上司と同僚がアホなほど仕事は楽しくなる」の悩みをお伝えした者です。私の提案力の足りなさと私のKYな性格を冷静に自問し改善しており、職場も徐々に良くなっております。本当にありがとうございます。継続して自己改善に務めます。

 今回の悩みです。婚活がうまくいかないのです。私の収入は同年齢の一般の世間平均よりは若干高いのですが、独身として毎月通帳の額が増えても孤独感は脱却できません。そこで婚活に投資し、成果を出して親を喜ばせたいと愚考しております。しかし、本当に活発に活動しているのですがうまくいかないのです。

 婚活に活動費用も惜しみなく使っております。自分の理想像(一般的)も明確にしており、婚活を行う際は常に確認して異性と交流しております。交流した後、異性から積極的に連絡先情報をもらえるのですが、逆に私からコミュニケーションをとると次へ繋がらないのです。

 押してダメなら引いてみろ、という言葉も教訓にしております。現在私は31歳のため、周りからは焦るな、肩の力を抜け、新しいことを始めろ、結婚や恋愛が幸せの全てではない、趣味を追究しろ、人と交流するクラブ活動を行え、といろいろなアドバイスを頂き、素直に実行してきました。

 外見にも気を使い、日々筋トレをして改善するよう、努めています。会社も大企業に勤めており、私は幹部候補のため、一般的な社会的評価は悪くなく、家柄も経営者の息子(私は次男)のため、そこまで悪くないと思います。

 恋愛もジョン・グレイさんの本を暗記するほど読んだり、井上敬一さんの恋愛講座を勉強したりしております。婚活の内容も日々、振り返りのために日記を付け、何が良くなかったのか改善しようとしております。服装や家の中も清潔を心がけ、朝早く起きてトイレ掃除に励んでおります。

 ただ、私は過去2回、婚約が破断になっています。承認欲求が強い私の短所が理由になったと理解しています。2回の婚約破断の経験から、女性に対し薄情といったイメージを脱却できずにいるのが正直なところです。

 うまくいかないのです。心折れて、涙を流し、本当に苦しさも感じてしまっております。上田さん、助けてください。

(31歳 男性 会社員)

大竹剛(日経ビジネス 編集):上田さん。今回は何と、連載始まって以来、初めてとなる同じ人からの2度目の相談です。31歳、会社員の男性です。前回の悩みは、「役立たずばかりのアホな部署に所属しています。毎日、最悪の気分です」というものでした。これに対する上田さんの回答は、「上司と同僚がアホほど仕事は楽しくなる」。上田さんのアドバイスが役に立っているようで、職場は徐々に良くなっているとか。

1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)
1946年秋田県生まれ。山形大学を卒業後、70年に伊藤忠商事に入社。畜産部長や関連会社プリマハム取締役を経て、99年に食料部門長補佐兼CVS事業部長に。2000年5月にファミリーマートに移り、2002年に代表取締役社長に就任。2013年に代表取締役会長となり、ユニーグループとの経営統合を主導。2016年9月、新しく設立したユニー・ファミリーマートホールディングスの代表取締役社長に就任。2017年3月から同社取締役相談役。同年5月に取締役を退任。趣味は麻雀、料理、釣り、ゴルフ、読書など。料理の腕前はプロ顔負け。(写真:的野弘路)

上田準二(ユニー・ファミリーマートホールディングス相談役):うれしいねぇ、2度目とは。しかも、お役に立てたみたいだね。

大竹:そうなんです。今回も、よほど上田さんのアドバイスを早くほしいのか、同じ投稿を何度もしてくださいました。ありがとうございます。31歳、男性の方。上田さんに取り次ぐのが遅くなり、申し訳ありませんでした。

 さて、2度目の相談は、前回よりも難易度が高いかもしれません。仕事の悩みではなく、恋愛相談です。まあ、こちらも上田さんの得意分野でしょうけれど。一言で言えば、「婚活が上手くいかないので、どうしたらいいか」ということです。相談内容を読んで、どう思いましたか。

実は前回の相談の時も気になった「KYな性格」

上田:この方は、ご自分の性格を自覚しているよね。

大竹:と言いますと?収入も高め、収入も家柄も良いと、ご自身で言っている様子からは、少々自信家かと。

上田:そう。自分でも「KYな性格」と言っているくらいだから、一応、そういう性格を自覚しているんだよね。

 今だから言うけど、前回の相談の時も気になったんだ。上司がどうだとか、周囲がアホだとか。とにかく、他人に対する基準が極めて厳しい。自分の価値観というものをもう決めてしまっていて、それを基準に相手を見るから、すべて不満足になってしまうという部分があるのではないかと。そういう点が、ちらっと気になる。

大竹:なるほど。全てを自分基準で判断していると。

上田:前回の相談はそういう趣旨じゃなかったから、特に指摘はしなかった。だけど、今回改めて相談を受けてみると、そういうところがちょっとあるなと思うんですよ。

 婚活についても、自分が置かれている環境やステータスは申し分ないという前提で、まずお付き合いしましょうとなるんだけどさ。いざ、じゃあ親密に交際したい方と出会ったとして、その相手が自分をどう思うかという問題について、この方はあまり考えていないように思う。何でも、自分の基準で相手に話しているんだよね。

 従って、彼女からすると、この彼との会話や過ごす時間は、ものすごく窮屈に感じるんじゃないかな。何でも、自分の基準や価値観を中心に話をしてくるから、打ち解けられないと。だから、彼がもう一度お会いしましょうと彼女に言ったとしても、彼女にしてみれば「いや、もう今日で最後」となる。やっぱり、相手の立場、相手の基準や価値観を認めてあげないと、心の交流はできないよね。

 同じ価値観を持っている人なんて、そうそういないよ。だいたい神代の昔から、イザナギとイザナミの2人が天の御柱をくるっと回って、それから子供をいっぱい産んで日本ができていったという話があるでしょう。だけど、彼らの価値観が一緒だったかといったら、違うよね。

大竹:イザナギとイザナミですか・・・・・・。話が壮大すぎませんか。

上田:イザナミが亡くなった後、イザナギが会いたくなって黄泉の国へ行ったら、自分が想像していたイザナミとはかけ離れたひどい姿を見ちゃって、泡食って逃げてきたと。このエピソードから学ぶべきことは、そもそも人と付き合う、誰かを愛するということは、資質や性格、育った環境、価値観など、そういう全てが自分とは違う人を受け入れるということだよ。クローンと付き合うんじゃないんだから、全てが自分と同じなんていうことは、神代の昔からあり得ない。

 まずは、こういう原点を見つめてほしいね。

大竹:ジョン・グレイ著「ベスト・パートナーになるために」、井上敬一著「人に好かれる方法」といった本を読んでいるようですね。私は読んだことがないのですが、おそらく、こういう本にもきっと相手の立場を考えなさいといったことが書いてあると思うのですが、なぜ彼は、そういう本を読んでも、それができないのでしょう。

上田:そうした本のアドバイスも、そもそも自分の基準に合致する部分だけが頭に入り、それがまた新たな自分の基準になっちゃっているのだろうね。

大竹:誰々がこう言っていたとか。

上田:そう。もちろん、そうした本を参考にして彼女に対する接し方を考えるのも悪くはないけれど、それが自分の本心から出ているものかどうかは、一度や二度付き合えば、彼女にも分かるよね。

 だからやっぱり、まず自分の基準を一回捨てて、相手はどういう人なのかを、まず知ろうという努力が必要だ。それがないと、付き合いが深まっていかない。

生き物とは、違ったDNAを持つ相手と交わるもの

大竹:もう彼は31歳なんですよね。30年以上、生きてきているわけですが、今から相手の立場を理解するような自分に変わるためには、どういうことから始めたらいいのでしょうか。

上田:まず、人と付き合うということは、自分と違う人と付き合うということが大前提にあるということを、理解しないと。それは仕事でも、男と女の間でも同じ。いろいろな本を読んでいるようだけど、その本がまた1つの基準になってしまってはダメなんだよ。大切なのは、尺度を決めないこと。

大竹:尺度を決めない。例えば、あえて嫌いな同僚を誘って飲みに行ってみるとか、そういうことですか。

上田:それだよ。嫌いな同僚と飲みに行くなんていうのは、僕なんか楽しかったよ。

大竹:そうですか。上田さんはやはり、そういうことをやっていましたか。

上田:なんでこの人はこんなキテレツなんだろうとか、なんでこの人はこんなにパワハラを生きがいにしているんだろうとか、興味があるよね。飲みに行ったら、そういう人たちの本性が出てくるでしょう。そうすると、次に何を言うんだろうと、もう興味津々。怖いもの見たさというか。そういう人を知ると、「ああ、世の中に自分とは違う人はたくさんいるんだな」と思えてくる。

大竹:そういう方たちは上田さんご自身から誘っていたんですか。

上田:僕は、今で言ったらパワハラのようなことはなんぼでも受けたけど、それが何というか、マゾ的快感で僕は興味を持って聞くわけ。「そうですね」「いや、私はダメですから」「私には、もっとダメなところはありますか」なんて自分から聞いちゃう。そうすると、向こうはだんだんこっちの方に歩み寄ってくるわけだ。「お前もいいところあるよ」と。何も、僕のことを見てくれと言っているわけじゃないんだよね。どれだけのパワハラをするのか、違う人間だからこそ、興味がある。

大竹:男と女の関係では、どうでしょうか。男性にとっての女性は、そもそも性が違うから「違う人間だ」という前提に立ちやすいと思うんです。上田さんは、自分の価値観と違う女性とどう付き合ってきたのですか。

上田:僕の場合は、自分と価値観が合った女性なんかと今まで1人も付き合ったことはなかったね。

大竹:そうですか。

上田:うちの女房なんかも、全く、どうしてこういう発想できるんだろうと疑問に思うことばかりだよ。何でやと。だから、「お前、アホじゃないか」とつい言うよね。そうしたら、「あなたの方がおかしいんじゃないの」と言い返してくる。「俺、おかしいのかな」と不安になるよ。でも、これがまた楽しいじゃないですか。

大竹:その楽しさは何でしょう。違いを楽しむという、心の余裕があるから楽しめるのですか。

上田:そうね。だって、母親と結婚するんじゃないんだから。

 世の中には、「母親のようなタイプの女性じゃないと僕は結婚できません」なんて言うマザコンの男性がよくいるでしょう。けれど、基本的にはやっぱり、生き物というのは、違ったDNAを持つ相手と交わっていくものだよね。動物でも草花でも、自然界は基本的にみんなそうでしょう。人間だって同じなのよね。

 だから、自分の価値判断や定義に基づいて、自分はこういう女性と付き合うべきだなんて固めてはダメだよ。そういう考えでは、相手が窮屈になってしまう。

違いを受け入れることは、自分を抑えることではない

大竹:なるほど。そういう自分の価値観が前面に出てしまっているから、この31歳男性の相談者は2回も婚約が破談になったと。

上田:だから、職場でも婚活でも、そういう部分が出ちゃうんじゃないのかな。相手が男だろうが女だろうが、やっぱり違って当たり前と思って交流をしていかないと。

大竹:この方は、承認欲求が強いと自己分析していますよ。

上田:自分でいろいろな基準を決めちゃっているから、それを周囲に承認してもらわないと気がすまないんだろうね。

 ところで、大竹さんは結婚しているって言ったっけ?

大竹:はい、しています。娘が2人。

上田:いつも、奥さんと価値観は合致していますか。

大竹:していませんよね。

上田:その違いを楽しむぐらいの気持ちを持たないと、これから先の人生、いつもこういう悩みが繰り返し出てくるよ。

大竹:アドバイス、ありがとうございます。ただ、違いそのものを楽しめるタイプと、違いはとりあえず見ないようにして、気が合うところだけを見ようとするタイプがいると思うんですが。

上田:良いこと言うじゃないか。長くお付き合いするには、この2段階が大切なんだな。まずは、お互い違うんだという前提に立ち、違いを楽しむところから始める。だけど、違いばかりを追求していって長いお付き合いをできるかといったら……

大竹:疲れちゃいますよね。

上田:さすがに、ヘトヘトになるよ。だから、疲れる前に、今度は似ている部分、価値観を共有している部分を見つけていかないと。

大竹:多くの場合、逆の順序を考えるんじゃないですか。まず、価値観を共有できる相手を探して、その後、違いを楽しめる余裕が出てくると。上司を相手にした場合もそうですが、相手との違いを楽しもうとして無理をすれば、ある意味、自分を抑えて違いを受け入れるということになりそうで、精神的にも辛そうです。

上田:自分を抑える必要はないと思う。我慢できなければ、怒っていいし、喧嘩もすればいいんですよ。僕なんか、女房とまったく違った価値観を持っているから、たまにはワーっと血が上る。まあ、はたいたことはないけど、「はたくぞ、しまいには」と言ってしまったことは何度もある。

大竹:脅すぐらいまではオッケーだと。

上田:まあ、「はたくぞ」と言いつつ、「だけどあいつにはこんなにいいところがあるからな」と、自分で納得してしまう。女房も同じことを言う。「父ちゃんはいつも私を、はたくぞ、黙れと言うけど、父ちゃんにはいいところあるよね」と。違いを認めつつ、価値観で共有できる部分も見つけておけば、結局はバランスが取れる。

まずは付き合う相手の理想像を1回捨てよう

大竹:彼はこんなことも書いています。自分の理想像を固めて、この人はその理想に合っているかどうかというのを確認しながら付き合っていると。

上田:何度も言っているけど、自分で基準を固めて、それに合致する人を探すような無駄なことは、おやめになった方がいい。

大竹:無駄ですか。

上田:だいたい、完璧な結婚だとか、恋愛だとか、そういうことはまずないよ。自分の価値観と一緒の人なんていない、そういう前提で関係を作っていくしかない。自分の価値観で周囲をがんじがらめに決めてしまうようなことは、今すぐやめたほうがいい。そうすれば、公私共に、世の中はもっと広く見えるようになりますよ。

大竹:例えば、一番理想像と違う女性と1回付き合ってみるとか。

上田:そう。いろいろなタイプの女性と交流してみたらいかがですか。そうすると自分自身も変わってきますよ。ひょっとしたら自分の基準からもう全く外れた女性とめぐり会って、話してみたらもうその方に魅力を感じるかもしれないし。

 まず、理想を1回捨てましょうよ。彼が、「女性に対して薄情といったイメージを脱却できずにいる」と自分自身を分析しているのは、まあ、そういうことが原因なんでしょうね。理想を捨てれば、薄情というイメージもなくなっていきますよ。

 自分で自覚しているということは、まだ大丈夫。あなたは変われる!

大竹:婚活がうまくいかなくて、涙を流して……

上田:涙を流すのは、やっぱり自分で反省している部分もあるからでしょう。

大竹:ある意味、完璧主義者なんでしょうね。

上田:そうだね。彼は完璧主義者だ。その呪縛から脱しないといかん。今回の相談の結論は、一言で言えば「解脱」だな。

大竹:解脱?

上田:解脱しなさい。自分がいる世界から、1回離れて世の中を見て下さい。それが、いい女性とめぐり会える前提だよ。

読者の皆様から、上田さんに聞いてほしいお悩みを募集しています。仕事、家庭、恋愛、趣味など、相談の内容は問いません。ご自由にお寄せください。

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