文部科学省傘下の科学技術振興機構(JST)は2018年7月3日、2010年にスタートした次世代蓄電池の基盤研究成果の一部が、経済産業省の管轄する新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2018年6月から5年計画で始めた全固体蓄電池開発プロジェクトに引き継がれたと公表した。同日開かれた理事長記者説明会で、最近の戦略的創造研究推進事業の成果の1つとして明らかにした。

ALCA-SPRINGの総合チームリーダーを務めた首都大学東京大学院の金村聖志教授
ALCA-SPRINGの総合チームリーダーを務めた首都大学東京大学院の金村聖志教授
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 今回、移管対象になった研究は2010年(平成25年度)に2期10年の予定でスタートした「先端的低炭素化技術開発(ALCA)」の特別重点技術領域「次世代蓄電池」(ALCA-SPRING)研究開発プロジェクトの一部で、大阪府立大学の辰巳砂昌弘教授がチームリーダーを務めた「無機固体電界質を用いた全固体リチウム2次電池の創出」プロジェクトの成果などになる。NEDOが2018年6月から5年計画で始めた「先進・革新蓄電池材料評価技術開発(第2期)」のプロトタイプ技術開発に組み込まれた。

5年間で100億円を注ぎ込む電池材料開発プロジェクト

 NEDOはこの研究開発プロジェクトに5年間で100億円の開発費を投入する計画。現在のリチウムイオン電池の数倍の体積エネルギー密度を持つ硫化物系の第1世代全固体リチウムイオン電池と、さらに高いイオン伝導性を持つ硫化物系固体電界質などを適用した次世代全固体リチウムイオン電池の基本アーキテクチャー開発を目的とする。「電気自動車向け先進・革新的電池の量産技術開発の基盤を築くのが狙い」(NEDOの次世代電池・水素部)。

 一方のALCA-SPRINGは第1期の5年間で、「次々世代蓄電池の開発を目指し、電池設計から、正極・負極・電解質の材料開発、評価解析まで電池システムの開発を一気通貫で実施した」(同プロジェクトの総合チームリーダーを務めた首都大学東京大学院の金村聖志教授)。大阪府大の辰巳砂教授のチームは現行のリチウムイオン電池の液体電解質と同等のイオン伝導性を持つ硫化物系固体電解質と、そのシート化技術・シート化電極の作製プロセスなどの研究を担当した。金村教授によると、今回の研究移管により、「関連する研究者10数人がNEDOの技術開発プロジェクトに移籍した」という。