大量生産型の「製造大国」から高品質型の「製造強国」へと進化するために、中国政府が2025年までの行動計画として打ち出した「中国製造2025(Made in China 2025)」。それを技術や投資などの面で支援しているのが、「Industrie 4.0(インダストリー4.0)で製造業の高度化を図るドイツだ。中国製造2025の10大重点分野の1つであるロボットの事例から、製造業の覇権をうかがう中国とドイツの協力関係に迫る。
2018年10月23日、中国の広東省にある仏山市で「中独スマート製造協力会議(仏山)」と題するカンファレンスが開催された。主催者はドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)注1)。ドイツの産業政策「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」を推進している業界団体の1つだ。カンファレンスでは、BMWやSiemens(シーメンス)など名だたるドイツ企業が相次いで中国への期待を寄せた。例えば、BMW華晨汽車(BMW Brilliance Automotive)注2)副社長のHermann Stögmeier氏は、「中国の工場で先進的なロボット活用の取り組みを始めた」と語り、中国が最先端の自動化技術をいち早く検証する場になっていることを明らかにした。
ニーズと技術をマッチング
仏山市は広東省省都の広州市に隣接し、自動車や製造装置などの機械産業が集積している。同市は、次世代の基幹産業としてロボットに照準を合わせた。その象徴が、カンファレンスの会場になった「仏山ロボットアカデミー(Robotation Academy Foshan)」だ。
仏山ロボットアカデミーは、「Hannover Messe(ハノーバーメッセ)」の運営で知られる見本市主催会社のDeutsche Messe(ドイツメッセ)が2017年に開設した。同社はドイツに同様のロボットアカデミーを有しており、仏山ロボットアカデミーはそれを模した施設だ。そのパートナーには、ドイツなど欧州から13の企業と研究機関、中国からは仏山市に本社を構える美的集団(Midea Group)をはじめとする8の企業と研究機関が名を連ねている。
仏山ロボットアカデミーのエントランスホールやショールームには、パートナー各社のロボットや模擬生産ラインがズラリと並ぶ(図1)。狙いは、中国市場の自動化ニーズとパートナー各社の技術をマッチングさせることだ。中でも美的集団は、ドイツのロボットメーカーであるKUKA(クーカ)を買収したことでドイツとの関係が深くなり、両国のつなぎ役が期待されている。