2020年の第5世代移動通信システム(5G)開始に向け、国内の通信事業者各社による神経戦が本格化している。総務省は2019年3月末までに5G向けの新たな周波数帯の割り当てを決める方針だ。

 それに先駆け、総務省は2018年8~10月に「第5世代移動通信システムの利用に係る調査(以下、5G調査)」と公開ヒアリングを実施した。公表結果を見ると、周波数帯の割り当てに関する通信各社の要望や、通信会社が想定している利用プランの状況が浮かび上がる。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 5G向けの新たな周波数帯として現時点で候補に挙がっているのは3種類ある。(1)「3.7GHz帯」と呼ばれる3600M~4200MHzの600MHz幅、(2)「4.5GHz帯」と呼ばれる4400M~4900MHzの500MHz幅、(3)「28GHz帯」と呼ばれる27.5G~29.5GHzの2GHz幅――である。

 このうち(1)の3.7GHz帯と(2)の4.5GHz帯について、総務省は「周波数再編アクションプラン(平成29年11月改訂版)」などにおいてそれぞれ「最大500MHz幅を確保することを目指す」としている。また(3)の28GHz帯については、隣接する27G~27.5GHzの500MHz幅も5G向けに活用できないかと検討している。

楽天はしたたかに新規参入の優遇求める

 これらの帯域について「5G調査」では、全国サービスを展開する通信事業者としては4社が利用希望を出した。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンク、楽天モバイルネットワークである。

 このほか5G調査では、各地のケーブルテレビ会社を中心とする22社が、地域限定で5Gの周波数帯の利用を希望する旨を回答した。主に契約世帯向けに高速のネット接続回線を提供するほか、ラストワンマイルの引き込み回線を5Gに置き換える用途を想定している。

 利用希望の周波数帯についてドコモとKDDIはほぼ横並びの希望を出した。具体的には、3.7GHz帯と4.5GHz帯で各100MHz幅単位、28GHz帯で400MHz幅単位を基本とする割り当てを希望した。ソフトバンクも28GHz帯について「300MHz~400MHz幅」としているほかはほぼ同じ。

4社の5G利用に関するヒアリング結果(抜粋)
4社の5G利用に関するヒアリング結果(抜粋)
(出所:総務省)
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 一方、楽天モバイルネットワークは3.7GHz帯と4.5GHz帯は3社と同様に100MHz幅を希望したが、28GHz帯は「800MHz幅の帯域幅を希望」と表明している。これは「28GHz帯で希望通りに800MHz幅の周波数帯の割り当てを受けられれば、10Gbpsのサービスを実現できる」(同社の山田善久社長)戦略が背景にあると説明している。