大手電力と新電力との間で電源アクセスのイコールフッティング(公平性)をどう実現するか。具体的な議論がいよいよ始まった。

 電力・ガス取引監視等委員会は2月22日、「不当な内部補助を防止する手段」に関する論点を、規制料金撤廃を議論する有識者会議(電気の経過措置料金に関する専門会合)の場で提示した。

 大手電力には全面自由化後も、低圧部門ではそれまでの規制料金(経過措置料金)を維持する規制がかかっている。規制は2020年3月でいったん撤廃されるが、「電気使用者の利益保護が必要」と判断される供給区域に対しては、引き続き大臣指定の形で経過措置料金が存続する建て付けになっている。つまり、競争の進捗度合いが低いエリアは支配的事業者が電気料金を高くするおそれがあるため規制が外れない。

 監視委員会は2018年9月から経過措置料金の存続指定に関する基準を議論してきた。これまでの議論で基準は大きく3つの要件に整理された。

 1つは消費者の状況。自由化に対する消費者の関心や満足度、スイッチング率などの動向だ。2つ目は十分な競争圧力の存在。有力で独立した複数の競争者が存在するか、新規参入しやすいかなどを審査する。これら2つの要件は、これまでの議論で「大枠はほぼ固まった」(監視委員会)。

 そして第3の要件に掲げたのが持続的な競争の確保である。「料金規制は一度外れたら再度かけることはない」(監視委員会)。中長期的な競争環境の持続に必要な要件として監視委員会が挙げたのが、電源アクセスのイコールフッティングだ。

歪みをあぶり出した報告書

 新たに電力市場に参入した新電力は少なからず電源調達に苦しんできた。小売り競争の成否はいかに競争力のある電源を調達できるかにかかっている。だが、国内に建設された電源の大部分は大手電力が保有し、新電力が相対取引で調達できる電源には限りがある。大手電力が自社で使わなかった「余剰電源」を投入するスポット市場に頼らざるを得ないとすれば、新電力の不利は明白だ。

 監視委員会は大手電力と新電力の競争上の格差として大きく2つの問題を挙げている。1つは可変費が安価なベースロード電源に新電力がアクセスできないこと。もう1つは発販一貫の大手電力の発電部門が自社小売部門に不当な内部補助を行うことで、小売り競争を歪める可能性があることだ。

 前者は2020年に立ち上がるベースロード電源市場がどう機能するかにかかってくる。監視委員会は後者の抑止を料金規制解除の要件とする方針を掲げる。

 2018年8月、監視委員会は1つの報告書をとりまとめた。経済法や産業組織論など競争政策の専門家が集まって議論を進めた「競争的な電力・ガス市場研究会」の中間論点整理である(「卸供給に小売部門が関与するのはおかしい」参照)。今回の議論はこの報告書がベースになっている。

 もともとは料金規制解除の論点や理論を整理するのが目的だったとされる同研究会は、そこにとどまらず、海外市場との比較などから広く国内の電力・ガス市場の競争政策上の課題をあぶり出した。そして、「市場閉鎖(電源・顧客の囲い込み)」「内部補助による競争の歪み」「寡占的協調」の3つの懸念が存在すると断じたのだ。

 いま、その“研究成果”が具体的な政策立案で実践に移されようとしている。

 監視委員会は規制料金解除の要件として、大手電力の発電・小売部門間において不当な内部補助を防止する手立てが必要になるとの案を有識者会議に諮った。そしてその具体化に向けて、大手電力の社内取引の透明性を高める措置や、取引所取引を通じて公平性を高める措置、発電部門が利潤最大化を追求する体制の整備などを今後の論点として提示した。