2025年の国際博覧会(万博)が、大阪で開催されることが決定した。
このニュースが伝えられた11月24日の午前、私は、ツイッター上に
《NHKは局をあげて万博大歓迎体制なのだな。
まあ、公共放送とてメディア企業である以上、この種の巨大イベントから直接的な収益を期待するのは当然なわけで、彼らはモロな利害関係者というのか、立ち位置的には祭りにおける露天商(←言葉の使い方に配慮しています)と同じなのだね。》(こちら)
《万博を起爆剤にとか言ってる人たちは、もしかして本気で大阪を爆破するつもりでいるわけなのか?》(こちら)
《招致の賛否を問う段階では反対派の意見も応分に紹介されていた。それが、招致が決定すると反対派の声は「なかったこと」にされる。一夜にして「もう決まったことなのだから一丸となって協力しよう」という空気ができあがる。東京五輪の時も同じだった。たぶん先の大戦でも同様の空気だったはず。》(こちら)
《NHKの番組の司会者は万博招致決定を
「うれしいニュースがはいってきました」
という第一声とともに紹介した。
「ああ、こういう伝え方になるのか」
と思った。
賛否のあった事柄でも決まってしまえば、全国民的な「うれしいニュース」になる。われわれはまるで成長していない。》(こちら)
という書き込みを連投した。
以来、私のタイムラインは、共感や反発のリアクションで騒然としている次第なのだが、今回は、万博をめぐる議論の行方について考えてみるつもりでいる。
さきほど、執筆に先立って作成したメモをあらためて読み返してみたのだが、なんというのか、論点が多すぎてうまくまとめられる感じがしない。あまりにもとっ散らかっている。
こういう場合は、切り口をひとつか二つに絞ったうえでシンプルに書き始めるのが正しい。あれもこれもと多方面のネタを拾い集めに行くと、必ずや支離滅裂な原稿ができあがってくる。このことは、私が経験から学び得た数少ない教訓のひとつだと言って良い。
が、今回はあえてとっ散らかった原稿を書くつもりでいる。
理由は、とりあえず自分のアタマの中にあるノイズを吐き出した後でないと、先に進むことができない気がしているからだ。
文章を書くことの効用のひとつは、自分が何を考えているのかを知るところにある。
特に今回のテーマのような錯綜した話題は、普通に自分のアタマの中で考えているだけでは、いつまでも行ったり来たりするばかりで焦点を結ばない。
その、自分のアタマの中に浮かんだり消えたりしている未整理な断片を、順次根気よく書き起こして行けば、自分の考えていることの全体像をある程度把握できる。このことは、逆に言えば、文章として整形して吐き出す以前のナマの思考は、実は自分にとっても意味不明であるケースが多いということでもある。
そんなわけなので、私自身は、普段から、まずなによりも自分が何を考えているのかを知りたくて文章を書き始めている。今回もそうするつもりだ。
炎上誘発気味のツイートを書き並べてから2日後、さるネットTV局のスタッフから出演依頼のメールが寄せられた。
いくつか疑問点があったので、折り返し電話をして真意を尋ねた。
確認したところでは、オファーの内容は以下のようなものだった。
- 出演日
- 生放送で討論をしてもらう
- 出演時間は45分。討論のコーナーは実質30分前後
- 討論の内容は万博の是非について
- 他の出演者はキャスター、進行役、アシスタント、万博賛成派の論客、レギュラー出演の文化人など
- スタジオ入り&打ち合わせは、番組開始前30分から
なるほど。
説明を受けて、私の方からは
- 万博反対の意見をテレビ画面を通じて表明することで、自分にメリットがあるように思えない
- 単純に賛成派と反対派に分かれて議論をすると、たぶん視聴者の目には反対派が重箱の隅をつついているように見えるはず
- 自分が反対する論拠をテレビの生放送のサイズのコメントとして適切に説明しきれる自信がない
という感じの懸念を伝えた。
現実問題として、テレビ局はどこであれ万博に対して全社的に前のめりだったりする。
とすれば、そのテレビ局があえて反対意見を表明している人間に対して発した出演オファーを、無邪気に受け止めて良いものなのかどうかは、大いに疑問だ。テレビの世界で仕事をしている芸能人や文化人の中にも万博招致の当事者(大手の芸能事務所に所属する芸人が万博誘致委員会のアンバサダーに就任している)に名を連ねている人間が少なくない。そんな状況下で、万博への賛否を問う討論にノコノコ顔出しで出演する仕事は、普通に考えてリスクが大きすぎる。ヘタをするとスケープゴートの役割を演じることになる。
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